(212)「治」 洪水を治め、世を治める

2012年09月13日 12時22分

 堯(ぎょう)・舜(しゅん)・禹(う)という中国古代の伝説上の王がいます。この堯舜の時代に大洪水(こうずい)が起き、禹の父の鯀(こん)が洪水を治めるために起用されましたが失敗してしまいました。でも父の後を継(つ)いだ禹が治水に成功、舜から国を譲(ゆず)られました。その禹が開いたのが殷(いん)の前の夏(か)王朝です。

kanji212.gif

 このように中国では洪水を防(ふせ)ぐ治水が大切でした。「治」も、その治水と関係した文字です。「治」の「台」はこれまでも紹介(しょうかい)してきたように、「厶」は農具の「鋤(すき)」、「口」は神様への祈(いの)りの言葉を入れる器「サイ」で、「台」は豊作(ほうさく)を神に祈る農耕(のうこう)の儀式(ぎしき)です。

 それに「sakuji56_2.gif(河の可を取る(サンズイ)) (さんずい)」を加え、意味を治水事業に移(うつ)して「おさめる」となりました。水を治めることが、世を治める政治(せいじ)の意味となっていったのです。

 もう一つ「台」をふくむ文字を紹介しましょう。それは「怠(たい)」です。「台」は神に祈る行為(こうい)ですが、神頼(かみだの)みばっかりではだめです。この「怠」は神頼みで「なまけている」という意味です。相手を軽くみて慢(あなど)っているのです。そういう、なまけあなどっていることを「怠慢」と言います。

 農具の「鋤」である「厶」に関係した字について、もう少し紹介しましょう。みなさんの友達や知人に「俊(しゅん)」や「駿(しゅん)」の字が名前についた人がいませんか? この「俊」「駿」にも「厶」の字形がふくまれています。

 まず「俊」「駿」に共通する「sakuji212.gif(俊のツクリ) (しゅん)」から。これは「厶」(鋤)を頭とする神様の姿(すがた)です。背(せ)の高い神様で、高く大きく、すぐれたものの意味があります。それを人のことに移して「俊」が「さとい」意味になりました。

 「駿」は足が速くてすぐれた馬のこと。「峻(しゅん)」は高い山です。建物が完成する「竣工(しゅんこう)」の「竣」にも「sakuji212.gif(俊のツクリ)」があります。

 「竣」の「立」は一定の位置に人が立つ形で、儀式を行う場所のこと。その場所の設営(せつえい)が成ることを「竣」と言い、「おわる」の意味です。後に建物の落成などの意味になりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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