本書は、難民とは誰かを、34の論点から分析したものだ。難民とは何かをとらえる前に、強制移動についての定義を明示しておく。国際強制移動研究学会(IASFM)によると、次になる。
「難民や国内避難民(紛争による避難する人々)のほかに、自然災害もしくは環境災害、科学もしくは原子力による災害、基金や開発プロジェクトなどでの移動」
この強制移動の定義から難民に対する論点のうち、気になったものをピックアップしてみる。
1)帰ることくらい良いことはない、という神話
難民に共通するのは、自分の意思に反して、「家」を離れ、どこかに落ち着く先を求めているということである。しかし、グローバル化した世界は現在、難民は帰国をもっとも望んでいると決めつけない方がいい。
2)以前は難民と移民を分離してとらえていた。しかし、自発と強制を明確に区別することが難しなってきた。したがって、今日では、難民は複雑な移住現象の一部で、政治的、民族的、経済的、環境的、そして人権上の要因が結びつき、人々の移動につながっているととらえられている。
3)「難民問題」ではなく、難民の問題を考える
難民問題を人権擁護に結びつけ、彼らが生身の人間として存在し、生活していることを忘れてはいけない。つまり、彼らはの感情、考えを無視せず、彼らが私たちと同じ能力をもった人間で、生活の向上を望む一個の人格があることを忘れてはいけない。
地球上に住む人類に共生の概念があるのであれば、難民問題は、難民の問題としてとらえる必要があるのだろう。
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「難民」とは誰か――本質的理解のための34の論点 単行本 – 2023/3/23
小泉 康一
(著)
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個人は、移住を通じて自らの望みを追求する自由をもつ。一方、人口流入に対して国家が懸念を抱くことも避けがたい。では、両者の葛藤は克服しえないものなのか? 国際的視野から難民研究を牽引してきた第一人者が、人間経験の根幹をめぐる課題として考える。
◆目次
はしがき
第1章 前提として何を押さえるべきか
論点① 難民は子どもの顔で描かれる
論点② 難民は戦士、反攻勢力にもなる
論点③ 難民の本当の数は誰にもわからない
論点④ 発表数の魔術、人数の政治的操作
論点⑤ 難民は難民キャンプにはいない
論点⑥ 帰ることくらい良いことはない、という神話
論点⑦ 拷問、ジェンダー、人身売買とのつながり
論点⑧ 「家族」という理想化された概念
論点⑨ メディア報道と政治の背景にあるイデオロギー
第2章 難民はどう定義・分類されてきたか
論点⑩ 現代は紛争の性質に変化がある
論点⑪ 逃亡の原因と結果、影響は複雑化し多様化している
論点⑫ 逃亡の根本原因から、きっかけまで
論点⑬ 避難する人と避難せず残る人、事前に予測して避難する人
論点⑭ 先進国内の庇護経費は、UNHCRへの拠出額を圧倒
論点⑮ 移民と難民、カテゴリーで分ける危うさ
論点⑯ 「迫害された難民」とは呼べない避難民の人々
論点⑰ 政策的に定められた定義がかかえる問題
論点⑱ 難民条約は不要か?
第3章 難民はいかに支援されてきたか
論点⑲ 人道主義は、現代資本主義の補完物?
論点⑳ UNHCR、栄光というよりは苦闘の歴史
論点㉑ UNHCRの構造とグローバル難民政策
論点㉒ 難民キャンプで「ただ待つ」ことは人を病気にする
論点㉓ 虚偽の申告は生きるための戦略であることも
論点㉔ 歪んだ戦略を強いられる難民もいる
論点㉕ 難民全員が弱者か? その後のケアは?
第4章 当事者視点を軸に、いかに視野を広げて考えるか
論点㉖ 難民は安全保障上の脅威なのか?
論点㉗ 移住を阻止するための開発援助の是非
論点㉘ 「難民問題」ではなく、難民の問題を考える
論点㉙ 難民キャンプは、技能オリンピックにして争いの場
論点㉚ 援助活動と研究の違いと補完性
論点㉛ 多くの難民調査に欠けているもの
論点㉜ 研究者と難民の関係はどうあるべきか
論点㉝ 国際制度における新たな分担のルールを求めて
論点㉞ 難民の問題は、他のグローバルな諸課題とつながる
参考文献
あとがき
索引
◆目次
はしがき
第1章 前提として何を押さえるべきか
論点① 難民は子どもの顔で描かれる
論点② 難民は戦士、反攻勢力にもなる
論点③ 難民の本当の数は誰にもわからない
論点④ 発表数の魔術、人数の政治的操作
論点⑤ 難民は難民キャンプにはいない
論点⑥ 帰ることくらい良いことはない、という神話
論点⑦ 拷問、ジェンダー、人身売買とのつながり
論点⑧ 「家族」という理想化された概念
論点⑨ メディア報道と政治の背景にあるイデオロギー
第2章 難民はどう定義・分類されてきたか
論点⑩ 現代は紛争の性質に変化がある
論点⑪ 逃亡の原因と結果、影響は複雑化し多様化している
論点⑫ 逃亡の根本原因から、きっかけまで
論点⑬ 避難する人と避難せず残る人、事前に予測して避難する人
論点⑭ 先進国内の庇護経費は、UNHCRへの拠出額を圧倒
論点⑮ 移民と難民、カテゴリーで分ける危うさ
論点⑯ 「迫害された難民」とは呼べない避難民の人々
論点⑰ 政策的に定められた定義がかかえる問題
論点⑱ 難民条約は不要か?
第3章 難民はいかに支援されてきたか
論点⑲ 人道主義は、現代資本主義の補完物?
論点⑳ UNHCR、栄光というよりは苦闘の歴史
論点㉑ UNHCRの構造とグローバル難民政策
論点㉒ 難民キャンプで「ただ待つ」ことは人を病気にする
論点㉓ 虚偽の申告は生きるための戦略であることも
論点㉔ 歪んだ戦略を強いられる難民もいる
論点㉕ 難民全員が弱者か? その後のケアは?
第4章 当事者視点を軸に、いかに視野を広げて考えるか
論点㉖ 難民は安全保障上の脅威なのか?
論点㉗ 移住を阻止するための開発援助の是非
論点㉘ 「難民問題」ではなく、難民の問題を考える
論点㉙ 難民キャンプは、技能オリンピックにして争いの場
論点㉚ 援助活動と研究の違いと補完性
論点㉛ 多くの難民調査に欠けているもの
論点㉜ 研究者と難民の関係はどうあるべきか
論点㉝ 国際制度における新たな分担のルールを求めて
論点㉞ 難民の問題は、他のグローバルな諸課題とつながる
参考文献
あとがき
索引
- 本の長さ264ページ
- 出版社明石書店
- 発売日2023/3/23
- 寸法19.6 x 14.2 x 2.7 cm
- ISBN-104750355402
- ISBN-13978-4750355405
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出版社より
商品の説明
著者について
◆著者紹介
小泉康一(こいずみ・こういち)
大東文化大学名誉教授。専攻、難民・強制移動研究。1973年東京外国語大学卒業、1977年同大学院修士課程修了。その後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)タイ駐在プログラム・オフィサー、英オックスフォード大学難民研究所客員研究員、スイス・ジュネーヴ大学国際関係高等研究所客員研究員、大東文化大学国際関係学部教授などを経て、同大学名誉教授。著書に『彷徨するグローバル難民政策――「人道主義」の政治と倫理』(日本評論社)、『変貌する「難民」と崩壊する国際人道制度――21世紀における難民・強制移動研究の分析枠組み』(ナカニシヤ出版)ほか。編著に『「難民」をどう捉えるか――難民・強制移動研究の理論と方法』(慶應義塾大学出版会)ほか、がある。
小泉康一(こいずみ・こういち)
大東文化大学名誉教授。専攻、難民・強制移動研究。1973年東京外国語大学卒業、1977年同大学院修士課程修了。その後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)タイ駐在プログラム・オフィサー、英オックスフォード大学難民研究所客員研究員、スイス・ジュネーヴ大学国際関係高等研究所客員研究員、大東文化大学国際関係学部教授などを経て、同大学名誉教授。著書に『彷徨するグローバル難民政策――「人道主義」の政治と倫理』(日本評論社)、『変貌する「難民」と崩壊する国際人道制度――21世紀における難民・強制移動研究の分析枠組み』(ナカニシヤ出版)ほか。編著に『「難民」をどう捉えるか――難民・強制移動研究の理論と方法』(慶應義塾大学出版会)ほか、がある。
登録情報
- 出版社 : 明石書店 (2023/3/23)
- 発売日 : 2023/3/23
- 単行本 : 264ページ
- ISBN-10 : 4750355402
- ISBN-13 : 978-4750355405
- 寸法 : 19.6 x 14.2 x 2.7 cm
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