ドングリなど凶作、高まるクマ出没のおそれ 被害も発生

中村瞬
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 群馬県内でドングリなどの堅果(けんか)類の実りを示す豊凶指数が今年は7段階の区分で下から3番目の「凶作」となり、餌を求めて人里にクマが出没する恐れが高まっている。例年は現れない場所にも出没する可能性があるとして、県が注意を呼びかけている。

 みなかみ町藤原の旅館「宝川温泉 汪泉閣」で16日、露天風呂に入るため屋外通路を歩いていた宿泊客の男性がクマに襲われ、左腕や右太ももに軽傷を負った。クマはそばに自生していたクルミが目当てだったらしい。

 9月16日には沼田市佐山町の沢へ釣りに来ていた男性が襲われて重傷。8月23日にはみなかみ町月夜野の雑木林で散歩中の男性が襲われ、重傷を負った。現場は上越新幹線上毛高原駅近くで、民家が点在する地域だった。8~9月で被害は5件で計6人が負傷した。

 県鳥獣被害対策支援センターによると、被害件数は2017~19年度が各2件で、16年度は6件、14年度は4件、12年度は7件。堅果類の豊凶指数と相関関係があり、豊作の年に比べて不作の年の方が多い傾向があるという。

 センターは9月上~中旬、利根沼田地域で堅果類の実りを調査した。ブナは大凶作、ミズキは凶作、ミズナラ、コナラ、クリは不作で、5樹種の合計では凶作となった。担当者は「気候などによるとの見方もあるが、はっきりした理由はわからない」としている。

 出没頭数自体も豊凶指数に左右される。不作だった19年度は被害は比較的少なかったものの、過去10年で最多の234頭が出没。並作だった17年度は78頭、18年度は95頭で、不作だった16年度は177頭だった。

 凶作の今年は「例年出ない場所にも出没する可能性があり、出没情報に注意してほしい」とセンターの担当者。入山時は鈴やラジオなど音が出るものを携帯し、収穫した農作物の残りや収穫予定のない果物類を処分するよう呼びかける。

 16日にけが人が出た旅館では、敷地内に捕獲用のオリを設置したり、クマが近づかないよう通路の照明を明るくしたりした。自生しているクルミの木3本は伐採予定という。社長の男性は「30年ここにいるが、敷地内でクマが出たのは初めてで驚いている。できるだけの対策をしたい」と話した。(中村瞬)

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