「ライオンの巣穴」。そう名乗る新しい武装集団が、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区で、イスラエル軍や占領地のユダヤ人入植者らへの襲撃を繰り返しています。
イスラエルの治安部隊は、彼らを標的にした「対テロ作戦」を連日にわたり展開。首相らが「必ず代償を支払わせる」と名指しで批判しています。
治安部隊との衝突によるパレスチナ人の死者数は2015年以来、最多に。何が起きているのでしょうか。
「記者か。写真を撮るのはやめてくれ」
商店街の一角を取材していると、硬い表情の男性から声をかけられた。
西岸地区第2の都市、ナブルス。辺りには魚屋や果物屋がずらりと並び、買い物客や、下校途中とみられる制服姿の子どもたちが行き交っていた。
制止されるほど、緊迫した光景には見えない。理由を尋ねると、「話すから、とにかくちょっとついてきてくれ」。近くの理容室の奥に案内された。
男性は「ここなら大丈夫だ」と一息つき、「『ライオンの巣穴』について聞きたいんだろう?」と切り出した。
満席の店内は、騒々しい。イスラエルの治安部隊の「捜索」が繰り返されているそうで、「どこから何を見られているか、分からないから」。
散髪客のおしゃべりや、せわしないハサミの音に紛れなければ、落ち着いて話すこともできないのが実感らしい。
ナブルスではこの数週間、深夜や早朝を中心に、イスラエル治安部隊による「対テロ作戦」が連日続き、死傷者が出ている。
パレスチナ保健省によると、25日には「ライオンの巣穴」の幹部と見られるメンバーを含め5人が、イスラエルの治安部隊との軍事衝突で死亡した。
イスラエル側は、この武装集団は軍や入植者への攻撃のほか、主要都市に爆弾攻撃をしかけようとしていた、と説明している。
イスラエルのラピド首相はこの日の記者会見で、「我々は(この武装集団を)どこまでも追いかける」と強調した。
「ライオンの巣穴」は、いったい何者なのか。
■狙いは「占領からの解放」 …
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