「解散風」に揺れた国会 選挙を「ゲーム」にしないために大切なこと

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長野佑介 小早川遥平
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 通常国会が21日、閉会する。終盤には岸田文雄首相が衆院解散・総選挙に含みを持たせるような発言をし、「解散の大義」に注目が集まった。結局は見送られたが、今秋にも臨時国会での解散の可能性が指摘される。どう向き合えばいいのか。

「なぜ今?」 有権者には戸惑い

 「いつが適切なのか諸般の情勢を総合して判断する」。岸田首相が会見で解散に踏み切る考えがあるかを問われ、こう答えたのは13日。難民認定の申請中でも送還できるようにする改正入管難民法は成立していたが、性的少数者に対する理解を広めるためのLGBT理解増進法、防衛費増額の財源を裏付ける財源確保法の採決を巡り、与野党の攻防が続いていた。野党は「解散の大義がない」と反発。その2日後、首相は「今国会での解散は考えていない」と見送りを表明した。

 若者の政治参加について情報発信する東京都練馬区の古野香織さん(27)は、今国会でLGBT理解増進法案の行方に注目していた。そんなさなかに吹いた「解散風」に「なぜ今なのか?」と感じた。「まだ4年の任期の半分にも満たず、全然ピンとこなかった。国会で賛成・反対双方の論点が顕在化していたので、議論を深めてほしかったのに」

 目玉政策である「異次元の少子化対策」にも関心があったが、児童手当の拡充や給付型奨学金の対象拡大などが次々に打ち出される一方、財源の具体的な議論は先送りされた。「もし選挙をするなら、少なくとも財源のめどは示し、選択肢を示してほしい」と話す。

反省から生まれたマニフェスト

 「首相の解散先送りは当然の選択。選挙に勝てるタイミングを見計らい解散権を行使すれば、政治は腐敗する一方だ」。そう語るのが元三重県知事早稲田大学マニフェスト研究所顧問の北川正恭さんだ。

 1983年から衆院議員も4期務めた。在職中に3回、解散があったが、「恥ずかしながら、選挙準備に頭がいっぱいで、大義と言われても思い出せない。大義は後で貨車に乗ってやってくる後付けというイメージだった」と振り返る。

 ただ、そうした日々のなかで「本当にこれでいいのか」と感じたことが、マニフェスト(政権公約)の発想につながったという。「国民の負担と受益を明確にし、政策論争を促すのが政治の役割。きちんと大義を考えないと、選挙が政策を選ぶ仕組みではなく、当選を果たすためのゲームに陥ってしまう。時の首相に対して大義を問い続けていく姿勢だけは失ってはいけない」(長野佑介)

そもそも解散の大義とは?

 なぜ解散に大義が問われ、誰…

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