第17回ロボ審判が名捕手の定義を変える? 経験した日本人審判の期待と懸念

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聞き手・笠井正基
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 投球がストライクかどうかを機械が自動的に判定する「自動ボールストライク判定システム」(ABS)が、2022年から大リーグ機構(MLB)傘下の3Aで導入されている。「ロボット審判」とも呼ばれ、近い将来、大リーグでの採用も視野に入る。日本でなじみの薄いシステムはどんな仕組みで、どう運用されているのか。3Aの審判員を務めている松田貴士(たかひと)さん(35)に聞いた。

 まつだ・たかひと 1988年生まれ。愛媛県出身。国内の独立リーグ(現・四国アイランドリーグプラス)で審判を経験した後、2012年に米国でのアンパイア・キャンプに参加。ルーキーリーグをへて、21年から大リーグ傘下3Aの審判員となり、昨年は約150試合を担当した。

 ――ABSはMLBの独自プログラムが各選手の身長を入力するなどして決まるストライクゾーンに対し、複数の高性能カメラがとらえた投球の軌道がストライクかどうかを判定する仕組みですね。

 「はい。弾道を測定する複数のカメラが球場のバックネット裏などに設置され、22年のトラックマンから、昨年はホークアイに変わりました。22年は一部の球場でしか採用されなかったのですが、昨年は全30球場に広がっています。週の前半の試合はABSを運用し、後半は従来通り、人間の球審が判定し、異議がある場合はABSによる判定を3回まで要求できる『チャレンジ方式』を取っていました」

 ――週の前後半で、2通りの運用方法を試みたのはなぜですか。

 「おそらくですが、大リーグでの運用に向け、選手、審判員、ファンにとって、どちらが良いのかを試していたのかと思います。ABSを運用している時は原則、投球の判定に関して、人間の審判の判断を挟みません。投球が捕手のミットに収まると、録音してあった人間の声で『ストライク』か『ボール』の判定が、間を置かずして、イヤホンから球審に伝えられます。球審はそれをコールするだけです」

 ――ABSの効果をどう感じていますか。

 「導入した一番の目的は投球…

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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2024年2月8日7時30分 投稿
    【視点】

    ミスするリスクを負った人の判定じゃなくて、ミスを排除したAI判定が広まるスポーツ界。この連載の第1回で、こう私はコメントしました。そもそも人というのは間違える生き物、間違えるからこそ人生おもしろいんじゃないかって。でもね、アメリカで審判の最

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