読者から寄せられた疑問を編集部が調査するコーナーです。今回は小学生6年生(奈良県)から寄せられた「円周率はどうやってできたの?」という質問に答えます。
小学生6年生(奈良県)の疑問
学校の算数の授業で円周率について習いました。そもそも円周率はどうやってできたのか、知りたいです。
日本数学検定協会(東京都台東区) 理事 小宮賢治さん
現在の円周率に近い値を求めたのは、古代ギリシャの数学者アルキメデスです。円周の長さは円の内側に接する正多角形の辺の和より長くなり、外側に接する正多角形の辺の和より短くなることを利用し、おおよその値を割り出しました。
円に接する正多角形を使って割り出した
円周率がどのようにしてできたのか教えてくれたのは、元中学校の校長先生で、日本数学検定協会(本部・東京)の小宮賢治さんです。
円周率は円周の長さを求めるときに使う数字です。5年生で「直径×円周率(3.14)=円周の長さ」と習います。では円周率とは何でしょう。前の式から「円周率=円周の長さ÷直径」だということがわかります。「A÷B」は「AはBの何倍か」という意味なので、円周率は円周の長さが直径の何倍になっているかを表しているのです。
これはどんな大きさの円でも変わりません。直径と円周の長さの比はいつも一定なのです。
円周率の正確な値は3.14159265……と限りなく続きます=表を見てね。無限につづく数については小学校ではあつかわないため、小学校では「円周率=3.14」として計算することがほとんどです。
古代人も使っていた
小宮さんによると、円周率が一定になることを、いつだれが見つけたのかはわかっていません。ただ、約4千年前から数百年にわたって栄えた古バビロニア(現在のイラク)の人々は円周率を使っていたといいます。「天体の位置や動きなどを調べるのに、円周率を3として計算していたようです」
最初に小数点以下2けたまで計算したのは、古代ギリシャの数学者アルキメデス(紀元前287年ごろ~紀元前212年ごろ)だといいます。
円の内側と外側に接する正多角形をかき、辺の長さの和と円周の長さをくらべました。円周の長さは内側の多角形の辺の和より長く、外側の多角形の辺の和より短いことを利用して、おおよその値を計算。より正確な値までしぼりこむためには円に近い正多角形で調べる必要があるため、正96角形を使ったそうです。
日本では江戸時代に、数学者の関孝和が正13万1072角形を使い、円周率は3.14159265359よりも少し小さいことを計算で求めました。
20世紀になりコンピューターが使われるようになると、計算の記録が一気にのびました。2021年8月時点で62兆8千億けたまで求められていて、その後も記録は新しくなっています。
くらしの中の円周率
円周率はふだんの生活ではどんなところで使われているのでしょうか。たとえば、陸上競技で使われる走路トラックで、選手のスタート位置を決めるのに使われます。
公認陸上競技場ではトラックの曲線の部分は半円になっていますが、レーンが外側に向かうにつれて半径が大きくなり、距離がのびてしまいます。そこで円周率を使ってレーンごとに半円の長さを求め、その差の分だけスタート位置をずらすことで、どのレーンを走っても距離が同じになります。
小宮さんは「公式を覚えていれば計算はできますが、公式がどのようにして作られたのか、その意味を考えながら使ってみると楽しいですよ」と話しています。
(朝日小学生新聞2023年5月23日付)
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