賞味期限のＱ＆Ａ　保存状態で安全性に差・判断は自己責任で

　食品の偽装表示が相次いで発覚している。メーカーが表示を偽るのは問題外だが、賞味期限を過ぎても、食べられるものもある。食べ物を粗末にしたら資源の浪費にもつながる。食品の期限表示の読み方を探った。

　■期限を過ぎても食べられる？　缶詰なら１０年以上もつ例も

　賞味期限切れの食品を食べるかどうかはあくまで自己責任。判断の目安となるのは、製造年月日。ただ、製造年月日の表示義務はないため、賞味期限から、食べられる期限を推定することになる。

　例えば、缶詰の賞味期限は、多くの場合、製造日から３年後に設定されている＝図（１）。だが、日本缶詰協会は「管理状態にもよるが、開封せずに高温多湿な場所を避ければ、１０年以上でも問題ない。おいしいか、おいしくないかは別ですが」。もし心配なら、缶詰にさび付きやフタの膨張がないか、指で押してもペコペコへこまないかを確認する。いずれかに該当すれば、中身が腐っている可能性があるという。

　日本即席食品工業協会によると、即席めんの賞味期限は、カップめんが製造から５カ月、袋入りが６カ月後に設定されることが多い。直射日光を避け、冷暗所に保存すれば、もう半年ほどは持つ＝図（２）。だが、具材やスープが先に傷むので、良い香りがなくなったり、変色したりしたら控えた方が良いという。

　冷蔵庫に入れたままになりがちな生卵はどうか。日本養鶏協会によれば、パック詰めで表示された賞味期限は産卵後２週間以内。だが、これは生食を前提に万一のリスクを考えた上での設定。殻を割らない限り、夏季（平均温度２８度）はさらに２日、冬季（同１０度）４３日、春・秋季（同２３度）は１１日を賞味期限に延長できるという＝図（３）。だが、「ひびが入っていたり、心配な時は加熱して」と呼びかけている。

　常温で長期保存できる食品でも直射日光は避けて、温度変化の少ない場所を選んで保管することが賢明だ。さらに、開封の前後でも表示の期限を過信せずに、心配ならメーカーに問い合わせてみるのも良い。

　■開封したら？　劣化避け早く消費

　商品に表示された賞味期限はあくまでも未開封であることが大前提。外気にさらしてしまうと、どんな食品でも品質の劣化が進む。だが、開封した場合の賞味期限の表示はない商品がほとんどだ。

　一度に使い切るのが難しい調味料は、どれくらいまで大丈夫なのか。全国マヨネーズ・ドレッシング類協会は「商品ごとに原材料が違うのですべてというわけではないが、開封後は冷蔵庫に保管し、１カ月以内に召し上がって」＝図（５）。原材料が食酢や食塩だと防腐効果があってすぐに衛生面で問題になることは少ないが、おいしさの観点から早めの消費を勧めている。

　めんつゆはどうか？　ある大手メーカーは「ストレートタイプは１週間以内、濃縮タイプなら数週間は大丈夫」。塩分が多いほど長持ちするが、口にする前に浮遊物がないか、泡立っていないかなど、よく確認し、判断すべきだという。

　カレーのルーについて、全日本カレー工業協同組合は「開封後、ラップに包んで密封状態にして冷蔵すれば３〜６カ月は持つ」。だが、最大手のハウス食品は「カレーは香りが命。１カ月以内に食べて」と勧める＝図（６）。

　一方、煮豆やつくだ煮を製造するフジッコは、ほとんどの商品に「開封後は冷蔵庫で保存し、○日以内にお召し上がりください」と消費の目安を記している。同社は「お客様からの問い合わせが増えてきたため、それに応えた」。社内で家庭を想定した検査をし０１年から順次表示していった。

　「まだ食べられるのかな」と心配になったら、メーカーに問い合わせ、食べられるかどうか、相談した方がいい。

　■冷凍食品は？　温度の変化に注意

　冷凍食品は食品衛生法などに基づき、下処理や急速冷凍などされていることが前提。日本冷凍食品協会によると、マイナス１８度以下で保存し続ければ、細菌は繁殖しなくなり、１年以上の保存ができるという。

　協会はメーカーの参考になるよう代表的な冷凍食品を試験し、賞味期限を出した。期限切れでも人体に問題はないものの、１年前後で風味や食感が変化するものが多かった。

　だが、購入後の扱いには要注意。家庭に帰る途中や冷凍庫のドアの開閉で温度変化を与え、品質に影響が出かねないからだ。そこで協会は、たとえ賞味期限の前でも購入後は２、３カ月、ドアポケットは外気に触れやすいので１、２カ月のうちに消費することを勧める＝図（４）。

　■ケーキ・おせちは？　「解凍もの」も多数

　一時期に出荷が集中する年末年始のクリスマスケーキやおせち料理。大手の小売店では既に予約の受け付けが始まっている。

　クリスマスケーキ約２５０万個を出荷する山崎製パンは１２月１日から製造を開始。スポンジケーキからクリームまですべての装飾を施して冷凍する。イブ直前に作られる５０万個を除く２００万個は作り置き、出荷時に解凍する。

　傷みやすいため、日持ちする商品につく賞味期限ではなく、安全に食べられる日を示す消費期限が設定されている＝キーワード参照。山崎製パンでは、解凍する日に２日加えた日付を消費期限としている。「冷凍したケーキもおいしく、作りたてのものと品質的に変わらない」という。

　おせち料理も同様のケースが多い。ある大手コンビニは今月から既に工場で製造を始めて箱ごと冷凍している。出荷に合わせて完全解凍し、その日に２日を加えた日付を消費期限にしている。「安全・安心は十分に気を配っており、試験でも全く問題ない」という。

　◆キーワード

　＜賞味期限と消費期限＞　食品衛生法と日本農林規格（ＪＡＳ）法で表示が義務づけられている。賞味期限はおいしく食べられる保証期限であるのに対し、傷みやすい食品は製造日を含めておおむね５日以内を消費期限として表示する。いずれもメーカーが保存試験などに基づき、独自に設定する。かつては製造年月日の表示が義務づけられていたが、９５年４月の法改正で、期限表示に切り替わった。

　□賞味期限切れ、いつまで食べられる？

　（業界団体による目安）

　（１）缶詰

　製造日

　　↓

　賞味期限…３年

　　↓

　食べられる期間…１０年

　（２）即席めん

　製造日

　　↓

　カップめんの賞味期限…５カ月

　袋入りの賞味期限…６カ月

　　↓

　食べられる期間…１年

　（３）生卵（生で食べられる期間）

　産卵

　　↓

　賞味期限…１４日

　　↓

　夏季…１６日

　春・秋季…２５日

　冬季…５７日

　□開封後、いつまで？（冷蔵庫で保存）

　（４）冷凍食品は？（マイナス１８度で）

　２〜３カ月以内

　ドアポケット　１〜２カ月以内

　（５）マヨネーズ、ドレッシング

　１カ月以内

　（６）カレーのルー

　３〜６カ月以内