◇ののちゃん ラーメンを食べていたら、隣(となり)でお兄ちゃんがコショウを乱暴(らんぼう)にふるから、くしゃみが出ちゃったよ。
◆藤原先生 あらまあ、災難(さいなん)だったわね。
◇ののちゃん 口に物が入っているときにくしゃみが出そうになると、困(こま)っちゃう。でも、何でコショウでくしゃみがでるんだろう。
◆先生 くしゃみは人間が自分の体を守る防衛(ぼうえい)の最前線(さいぜんせん)なの。体に入ると悪そうなものが鼻から吸(す)い込(こ)まれると、鼻の穴にたくさんある神経(しんけい)が素早(すばや)く反応(はんのう)してそれを外に飛ばして出そうとするの。安全(あんぜん)のために、ちょっとした刺激でもくしゃみが出るのよ。
◇ののちゃん じゃあ、コショウの場合は?
◆先生 コショウにはピリッとした刺激があるでしょう。体に有害(ゆうがい)なわけではないのだけれど、このコショウに含まれる辛みの成分が、鼻の穴の内側を刺激しやすいの。家庭用(かていよう)のコショウは粒(つぶ)を細(こま)かくしてあるので空気中に広がりやすいし、ラーメンのように湯気(ゆげ)があがる料理(りょうり)だと、よけいに飛ぶそうよ。
◇ののちゃん 食べ物にむせるとせきがでるけど、くしゃみと似(に)てる?
◆先生 くしゃみとせきは似ていて、空気をいっぱい吸い込んで一気(いっき)にはき出すしくみなの。空気の速(はや)さは時速(じそく)約300キロ。新幹線(しんかんせん)より速いくらい。ただ、せきの方が重大(じゅうだい)なとき出るようになっているそうよ。
◇ののちゃん 寒いときにもくしゃみが出るよ。
◆先生 温度(おんど)が変化(へんか)してもくしゃみが出るの。敏感(びんかん)な人は露天(ろてん)ぶろやクーラーの利(き)いた部屋でよくくしゃみするわね。過敏(かびん)な人は、テレビでスギ花粉(かふん)が飛んでいる場面を見るだけでくしゃみが出るからね。
◇ののちゃん コショウでくしゃみが出ないこつ、あるかな。
◆先生 コショウのくしゃみは、花粉や家のほこりなどアレルギーを起こすものと違(ちが)って、長く続くということはないから、あまり気にしない方がいいわよ。でも、同じコショウでも粒が大きい粗(あら)びきのコショウを使うと、空気中に飛びにくいから、くしゃみは出にくいわね。
◇ののちゃん 確かにいろんなコショウがあるね。
◆先生 正倉院(しょうそういん)の宝物(ほうもつ)の中にもあるそうよ。奈良時代(ならじだい)には薬(くすり)として日本に入ってきたと想像(そうぞう)されているの。15世紀(せいき)ごろはコショウが大変な貴重品(きちょうひん)で、命をかけて冒険(ぼうけん)しても手に入れたいというので大航海(だいこうかい)時代が始まったほどよ。でも、日本のふつうの家庭でコショウが使われるようになってからはまだ50年あまりしかたっていないそうよ。
(取材協力=エスビー食品・濱畠(はまはたけ)啓子さん、日本医科大学耳鼻咽喉(じびいんこう)科助教授・大久保公裕さん、構成=岩切勉)
(朝日新聞社発行 1月29日付be)
◇調べてみよう
(1)コショウはスパイスの王様(おうさま)といわれていて、世界の4大スパイスの一つだ。あとの三つのスパイスは何かな。
(2)コショウは、果実(かじつ)を乾燥(かんそう)させて、細かく砕(くだ)いて作る。主な産地(さんち)はどこかな。調べてみよう。