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社会人受け入れNo.1 東洋大 夜間部に通う私大生の4分の1が学ぶ

2020.01.29

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原子 禅
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東洋大学は明治20(1887)年、「哲学(教育)の普及」を目指し、哲学者・井上円了によって創立された。経済的、時間的に余裕がない人にも教育を広めるという理念のもと、6学部9学科に夜間部を設置。1学年の定員数は国内最大規模の760人だ。全私立大学の夜間部に通う学生の約25%が学んでいる。(撮影/朝日新聞出版写真部・小黒冴夏)

創立者の志を受け継ぐ

創立者の井上円了の残した言葉のひとつが「余資なく、優暇(ゆうか)なき者のために」。円了は、明治から大正にかけて、経済的、時間的に余裕がない人にも教育を広めるべく、学びの場の設立に奔走した。

「第2部・イブニングコース(夜)は、その精神を受け継ぐ制度のひとつです。授業料を低く抑え、奨学金などのサポート体制を整えています。ここでは、多くの社会人学生をはじめ、経済的事情などで昼間の大学に通うことが困難な学生たちが学んでいます」

理事でもある加藤建二入試部長はこう語る。なかでも建学の精神が顕著に表れているものに「独立自活支援推薦入試制度(以下、独立自活制度)」がある。

「この制度は、学費の半額を返済不要の奨学金として支給し、残りの学費や生活費などを大学に勤務することで賄うものです。定員は9学科それぞれ1人ずつです」

勤務時間は平日の9時から17時まで。その後、21時25分まで授業に出席する。

「入学後、最初のひと月は大変なようですが、『この制度がなければ大学で学べなかった』という覚悟があるのか、学生は勉強にも仕事にも前向きに取り組んでくれています」

加藤建二入試部長
「学びたい思いがあるならば、いろいろな選択肢があるのであきらめないでほしい」と加藤建二入試部長は話す

業務は部署により異なるが、入試課では、入試情報を受験生に提供する「学びGallery」の運営や高校での入試説明会の調整などを行う。「社会人と業務で接する機会が多いからでしょうか。学生たちはどんどん成長していきます」と加藤部長は目を細める。

卒業した1期生は6人のうち3人が首席でした。頑張る様子を間近で見てきたので、グッとくるものがありました」

「独立自活制度」を利用しつつ、海外留学する学生も多いという。

「学費を払いつつ、留学費用も賄えるような賃金体系にしていますし、留学のための休学にも対応しています。学生の『学ぶ意欲』をできる限りサポートしたいと考えています」

働き学びつつ、部活動も

第2部法学部法律学科3年の安齋悠太さん(21)は、高校時代、両親には就職を勧められていたという。 

「それは経済的な理由だったのですが、将来的に公務員になることを考えていたので、大学をあきらめたくありませんでした」

そんな折、とある雑誌で「独立自活制度」を紹介している記事を目にし、「これならば、自力で大学へ行ける」と進学を決意した。入学後、実家のある千葉県から片道2時間かけて、白山キャンパスまで通っている。授業後、すぐに帰路についても家に着くのは23時半を過ぎるが、大学では卓球部に所属し、週2回、授業後に練習を行っている。

「部員の約半分はイブニングコースの学生です。昼間の学生と区別はなく、大会も一緒に出場しています」

現在は公務員試験に向けた勉強に注力しているが、試験後は、「学生時代にしかできないことを」と、ヒッチハイクで日本を巡ってみたいと考えている。

学びGallery
「学びGallery」で業務の打ち合わせをする安齋悠太さん(写真左)と齋藤柊さん(同右)。ともに「独立自活支援推薦入試制度」で入学した

自分で道を切り開く

第2部経営学部経営学科3年の齋藤柊(しゅう)さん(25)は、中学卒業後、福祉施設で正社員の介護士として働きつつ、定時制の高校に通った。

「社会に出てから学歴の大切さを痛感しました。働きながら考えていたのは『自分の可能性の幅を広げる』こと。学費の安い大学を調べていたら、『独立自活制度』を見つけたんです」

大学3年に進級する際に1年間休学し、フィリピンの語学学校でスタッフとして働くインターンシップ留学を経験した。

「海外に出てみて改めて、日本の素晴らしさと課題の両方を知りました。そして、『自分の将来の選択肢は日本だけじゃない』とも感じました」

卒業後は企業への就職を考えているが、いつかは自分で起業したいと考えている。

大学に入学したことで、挑戦できる世界が広がった。もし経済的な理由で進学をあきらめようとしている人がいるなら、自分で調べたり、周りの人に相談してみたりすると、道が開けるかもしれません」

学びGallery
白山キャンパスにある「学びGallery」では、高校生やその保護者の大学見学への対応のほか、遠隔地に住む受験生に対応する「TOYOWebサポート」などを行う

メモ

東洋大学 1887年に創立された私立哲学館が起源。建学の精神は「諸学の基礎は哲学にあり」「独立自活」「知徳兼全」。本部所在地は東京都文京区。学部(第1部・第2部)学生数は3万826人(2019年5月1日現在)。

東洋大学

<コラム>社会人入試の入学者は学部で減少、大学院で増加、という傾向がここ数年続いている。2018年、大学院で学ぶ社会人の数は6万935人で、内訳は修士課程1万9703人、博士課程3万2595人、専門職学位課程8637人(文部科学省調べ)。「団塊の世代」など人口の多い世代が定年後に大学の門をたたくケースみられるが、資格を取得してキャリアアップして仕事の幅を広げたい、自分の知的関心領域を極めたい、といった動機で入学する人もいる。

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