大学入試改革の「本丸」

東洋大・加藤建二入試部長「入試区分ごとの評価は大学によって異なる」

2022.02.24

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中村 正史
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日本の大学入試は一般選抜(一般入試)ばかりが注目されがちですが、総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(推薦入試)が広がり、各大学では入試区分ごとに入学後のGPA(成績評価)などの調査を行い、入試改革に生かしています。入試部門に20年以上携わり、他大学の状況にも詳しい東洋大学の加藤建二・入試部長(理事)に、日本の大学入試の現状と課題を聞きました。(写真は、東洋大白山キャンパス8号館=同大提供)

加藤建二

話を聞いた人

加藤建二さん

東洋大学理事・入試部長

(かとう・けんじ)1987年、学校法人東洋大学入職。教務部、入試部、総務部などを経て、2013年から入試部長。14年から学校法人東洋大学理事。職員生活34年中22年が入試部勤務。13年から紙の大学案内を廃止、オールインターネット出願に移行し、入試情報サイト「TOYOWebStyle」を始める。

指定校推薦の増加は二つの側面

――各大学はさまざまな入試区分ごとに、入学後のGPA(成績評価)や就職先などの調査を行っています。加藤理事は入試業務に長年携わり、他大学の様子もよくご存じと思いますが、入試区分ごとの評価はどんな様子ですか。

東洋大学でも入学後の状況を精緻に追跡調査しています。さまざまなデータを多角的に検証していますが、特徴的なのは一般選抜(中でも4教科や5教科など)での入学者にGPAが高い傾向が見られることでしょうか。近年は、指定校推薦入学者の評価も高まってきています。コロナ禍でオンライン授業になった影響もあるかもしれません。指定校推薦入学者は高校時代から、コンスタントに勉強する習慣が身についている場合が多く、そうした学習姿勢がGPAに反映されている傾向があると感じています。

単純に比較はできませんが、どの入試区分のGPAが高い傾向にあるかは、それぞれの大学の個性や特徴により異なっているように感じます。中には指定校推薦や附属校推薦入学者のGPAが高く、一般選抜入学者は相対的に低めに出ている大学もあると聞きます。いずれにしても、入試区分ごとの特性を大学側がきちんと理解し、それを授業などへ還元することが重要だと思います。

――東洋大学は一般選抜(一般入試)の比率が高いです。

数年前までは一般入試での入学者は7割程度でした。その後、留学生の入学者数が増えたことなどで、現在は一般選抜の比率は60%台半ばになっています。早慶上理が約55%、MARCH(立教除く)が60%弱と考えると、かなり一般選抜の比率が高いと思います。指定校推薦で15%前後、附属校では3校で5%程度の入学者がいる状況です。

旺文社が毎年発刊している『大学の真の実力 情報公開BOOK』を見ると、一般選抜で学生を確保していない大学が非常に多いことがわかります。その分は総合型選抜や学校推薦型選抜で確保するという流れです。

例えば、指定校推薦が増えているのは、二つの側面があります。一つは先の事例のように、GPAが他の入試区分よりも高い傾向がみられるということから、指定校推薦の比率を増やす側面。もう一つは、一般選抜で入学定員を充足することが困難なことから、やや後ろ向きですが指定校推薦入学者の比率を増やして、定員の充足を目指すという側面です。

東京都内の大学に影響が大きかったのは、2016年から始まった文部科学省による入学定員厳格化です。各大学の定員管理の縛りはさらに強固になり、一般選抜では、各大学が定員枠を維持するために追加合格を重ねるようになりました。それにより、志望度の低い大学は一般選抜で合格を出しても、なかなか入学手続きに至らない状況になっています。そのため一般選抜の定員が充足できなくなり、結果として、指定校推薦の入学者を増やす手立てを前面に出すようになっているのではないでしょうか。

各大学は入試難易度がちょっと上の大学が出す繰り上げ合格の最終発表日をとても気にしています。それを睨みつつ、自大学の繰り上げ合格の調整を、ぎりぎりまで検討しているのです。

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