<連載> 尿漏れ相談室

尿漏れに重い病気が隠れているかも? 痛みや血尿があれば必ず病院へ

「おしっこ先生」が答えます(9)

2022.03.25

 急な「尿漏れ」や「頻尿」など尿トラブルで悩んでいませんか? 「おしっこ先生」こと日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院の女性泌尿器科部長・加藤久美子先生に明るくアドバイスしていただきます。今回は尿漏れに隠れているかもしれない病気や、おしっこの正しい拭き方についてうかがいました。

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尿漏れ相談室13)おしっこ先生9 尿漏れに重い病気が隠れているかも
痛みや血尿などをともなう尿漏れは良くないサイン。病院へ行きましょう

尿漏れ以外に他の症状があるかどうか

 尿漏れだけで重大な病気、というケースは比較的少ないのです。しかし特殊な尿漏れで「溢流性(いつりゅうせい)尿失禁」というものがあります。トイレに行きたいという「尿意」がないのに尿がチョロチョロと漏れてしまう……。症状だけでは他のタイプとまぎらわしいため、徐々に尿が出にくくなっていないか考えてみてください。

 背景に、本当はおしっこが出ない「排出障害」があるので、膀胱(ぼうこう)に残った尿がダムからあふれるように漏れ出てくる、という状態です。ほうっておくと腎臓が悪くなる心配があります。症例の数としては少ないのですが、男性では前立腺肥大症で時々あるタイプの尿漏れです。女性はそれほど多くはありません。

 よくある血尿については、女性に多い膀胱炎があります。主に細菌感染による急性のもので、男性に比べると尿道から膀胱内に細菌が入り込みやすいために、よく起きます。膀胱粘膜に炎症が起きるので、おしっこの出始めや出終わりの時に痛みがあります。炎症がひどくなると血液の混じったおしっこが出ることがあります。血尿があるときは男女問わず、一度、泌尿器科に行ってください。目で見てわかる、肉眼的な血尿があるときは絶対にかかってくださいね。

 検診などで、肉眼では見えないけれど、調べるとちょびっとだけ血液がまじっている「尿潜血」、これが実は大変多いのです。あまり神経質になる必要はないですが、尿潜血があって尿トラブルもあるという場合は、問題がないか泌尿器科で確認してもらえるといいかなと思います。

 尿に血液が出る場合は、時に膀胱がんや膀胱結石がひそんでいることがあります。がんや結石などがあると、膀胱を刺激して頻尿や切迫性尿失禁が生じる場合があるのです。こういうケースは症状がだんだん悪くなっていくのが特徴ですね。明らかにどんどん悪くなる場合はあやしい。単なる頻尿ではなく、痛みがある、血尿や排尿痛があるのはよろしくないのです。尿漏れに他の症状がかぶってくるのは、あやしいと思って下さい。

おしっこの「あと漏れ」を防ぐには?

 女性は膀胱炎をくり返すことが多いので、生活習慣を見直して細菌が侵入しないようにすることも大事ですね。排便後の拭き方にも「前から後ろに拭く」などのコツがあるでしょう。そういえば、排尿が終わったと思ってもおしっこがちょっと出てくる「あと(後)漏れ」、これは男女ともに悩む人が多いので、おしっこの拭き方のコツもお教えしましょう。

 あと漏れは医学的には「排尿後尿滴下(はいにょうご・にょうてきか)」と言います。尿漏れとはちょっとちがうのです。出し終わったのにちょっと出てくる。男性は尿道に尿が残る。しずくを払おうとして陰茎を振る人がいるんですが、これは効率がよくない。むしろ根元からずーっと前に絞りとる感じにすると良いです。

 女性の場合、年を取るとおしっこが膣(ちつ)のほうにたれこんでくることが起きます。「出し終わったな」と思っても、またちょろっと出てくる。お尻を浮かせて少し前かがみになるとすっきりしやすいです。

 それでもポトポトっと切れが悪い場合、トイレットペーパーを丸めて足の間にはさみます。立ち上がって足を組んでキュキュッと絞っていただき、ぬれた紙は捨てて下さい。手で紙を押さえるだけではなく、足をクロスしてきゅっと腹圧をかける。残って出てくるおしっこを吸い取ってあげる感じですね。こすらず、軽く紙を押しあてるだけです。こすると皮膚のかゆみやピリピリ感が出るので、優しく「押し拭き」をしましょう。これが大事です。

 洋式トイレでおしっこする時も、女性は足を閉じていてはだめで、ちゃんと開いてするのがいいです。閉じるとうまく尿が出ていかないし、性器が癒着症を起こすことも(小陰唇癒着症)。足をしっかり広げてしたほうが、さわやかにおしっこできますよ。

 尿漏れは「シモ」のお話なので、人にはなかなか聞きづらいでしょう。専門医として必要な情報をしっかりと伝えていきたいと思っています。「おしっこのしかた」など初歩的なことで悩んでいる人はとても多いのです。みなさんも恥ずかしがらず、専門医に相談してくださいね。(談)

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  • 加藤久美子
  • 加藤 久美子(かとう・くみこ)

    日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 女性泌尿器科部長

    1957年生まれ、82年名古屋大学医学部卒業。86年同大学大学院医学研究科修了(医学博士)。同年、同大付属病院で日本初の女性尿失禁外来の開設に参画。30余年にわたり女性泌尿器科、排尿診療に先駆けとして取り組む。2006年より現職。「女性の尿トラブル」「シニア女性の骨盤臓器脱」(NHK出版/別冊NHKきょうの健康)監修。

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