<連載> ワクチン接種Q&A

自宅療養の日数は? 119番すべき症状は? 同居家族の待機期間は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(27)オミクロン株の感染者、濃厚接触者になったら<下>

2022.07.29

 新型コロナのオミクロン株BA.5への感染で自宅療養となったとき、療養期間は何日間ほどなのでしょうか。すぐに救急車を呼んだほうがいい症状や、自覚症状がなくてもチェックしておきたい点はなんでしょう。また、濃厚接触者となった同居家族の待機期間は、ほかの家族の発症などで、どう変わるのでしょうか。

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同居家族が感染したら その1
家族が陽性者となった場合の療養期間と同居家族の待機期間、基本的な考え方(東京都の資料から抜粋、https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/coronamidika.files/kazoku3.pdf)

【質問一覧 オミクロン株BA.5の感染者、濃厚接触者になったら(下)】

  • Q.1:オミクロン株に感染するとどのような症状が出るの?
  • Q.2:オミクロン株の潜伏期間は?
  • Q.3:感染した疑いがある時はどうすればいいの?
  • Q.4:抗原検査とはどのような検査ですか?
  • Q.5:感染しても症状が出ない、無症候感染者はどれぐらいいるの?

Q.10:自宅療養する場合、どんな点に注意すればいいの?

A:ふだんは健康で、重症化リスクの低い人でも、まれに重症化することがあります。屋内を少し移動しただけで息苦しさを感じる、胸が痛い、意識がもうろうとしてきた、といった重症化の兆候がみえたら、すぐに119番に連絡し、救急車を呼んで下さい。また、新型コロナウイルスには、息苦しさといった自覚症状が無いまま、体内の酸素が足りなくなる低酸素症が進行することがあります。自宅療養する際には、自治体が貸し出しをしているパルスオキシメーターを使い、息苦しくなくても、血中の酸素飽和度をチェックするようにしましょう。

 厚労省によると、2022年7月20日現在、自宅で療養している感染者は約61万5600人います。医療崩壊が起きた第5波以来、医師が自宅療養できると判断した感染者は、できるだけ自宅で療養するという方針を政府や自治体がとっているからです。無症状や軽症で低リスクの人だけでなく、自治体によっては、高齢者や高リスクの人でも無症状や軽症なら、自宅療養という場合もあります。

 以前は、自宅療養している人の健康状態に変化がないかどうかは、保健所がフォローしていましたが、第5波以降は、保健所だけでは手が回らなくなり、感染者に自主的に健康観察をしてもらう自治体が増えています。

 自主的に健康観察する上で、注意が必要な症状には、息苦しさなど呼吸がちゃんとできているかという側面や、もうろうとしていないかといった意識障害の有無などがあります。下記の、東京都が作っているチェックリストを参考にして下さい。

自宅療養中の健康観察シート
自宅療養中の健康観察シート(東京都、https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/uchisapo_tokyo.files/checksheetpdf.pdf)

 東京都は、すぐに救急車を呼んだ方がいい症状や、まずかかりつけ医や、自宅療養中の人の相談窓口、「自宅療養サポートセンター(うちさぽ東京)」に連絡した方がいい症状などをリストアップしています。東京都以外の自治体も、自宅療養者の相談窓口を設置していますので、お住まいの自治体に確認してみて下さい。

東京都の自宅療養中の注意点1
東京都の自宅療養中の注意点2
こんな症状がでたら?(東京都がまとめた自宅療養中に注意する症状。https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/uchisapo_tokyo.files/shoujyo.pdfから)

 注意が必要なのは、肺炎などのために、体内に十分な酸素が回らなくなる低酸素症です。通常、体内の酸素濃度が下がると息苦しさを感じるのですが、新型コロナウイルス感染症では、酸素濃度が下がってもまったく自覚症状が無く、元気でぴんぴんしている人がいます。「幸福な低酸素症」と呼ばれる症状です。自覚症状が無いだけに、「パルスオキシメーター」で1日に何回か、血中酸素飽和度を測る必要があります。酸素飽和度が95%より下がっている場合は要注意です。以前は、各自治体が、自宅療養する人のうち希望者には全員にパルスオキシメーターを貸し出していましたが、返却しない人が大勢いたり、感染者が増えたりしたために、現在は、リスクの高い人だけに限定している自治体もあります。

 自治体による療養者への食事の配布も、以前のように全員に、とはいかなくなっているようです。食料調達が困難な人を除き、原則として、ネット注文や同居している家族、知人などの支援を受けて自前で調達するよう呼びかける自治体が増えています。また、感染した場合に備え、あらかじめある程度の食糧を備蓄するなどの準備をしておくよう呼びかけている自治体もあります。

 国立成育医療研究センターによると、子どもが自宅療養する場合には、機嫌がいいか、食欲があるか、顔色は悪くないか、息苦しそうだったり、胸がペコペコへこむような呼吸になったりしていないか、意識状態はおかしくないか、といった点を観察するといいそうです。機嫌がよく、食欲があり、顔色が悪くなければ、基本的に心配する必要はありません。一方、意識がはっきりしない、機嫌がずっと悪い、食欲が低下している、水分がとれない、嘔吐を繰り返すといった状態の場合には、保健所やかかりつけ医に早めに相談して下さい。けいれんを起こした場合には、救急車を呼ぶなどして、すぐに病院を受診して下さい。

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Q.11: 自宅療養は、何日間すればいいの?

A: 症状のある人は、症状が出始めた日を0日として、そこから10日間経ち、かつ、解熱剤をのまなくても発熱がない状態が72時間以上続いていて、咳などの呼吸器の症状が改善していれば、その次の日に療養生活が解除されます。無症状の人は、検査のために検体を採取した日を0日として、そこから7日間経てば、その次の日に療養生活が解除されます。

 有症状で、10日経った時点で、以前に比べれば改善しているものの咳や倦怠感などがまだ残っている人も、他の人に感染させる可能性は無いため、療養生活は解除されます。ただ、心配な人は、医療機関に相談して下さい。また、症状の改善が10日間以上、長引いた人は、症状が改善して72時間経った時点で、療養が解除されます。

 また、診断された時点では無症状で、療養期間中に症状が出始めた人は、症状が出始めた日を0日目として、そこから10日間、療養が必要になります。解熱剤などなしに、発熱のない状態が72時間以上続いていることも、療養解除の条件となります。

 陽性と診断された人むけの情報をまとめた東京都南多摩保健所のサイト(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/minamitama/gyoumu/covid19/yoseshindan.html)に、有症状、無症状の場合の、自宅療養解除の日を目安を知る表が紹介されています。

療養解除の目安
療養解除の目安(東京都南多摩保健所サイトの資料から抜粋)
自宅療養解除の目安
自宅療養解除の目安表(東京都南多摩保健所のサイトから)

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Q.12:自宅療養している人と同居している人はどんな点に注意すればいいの?

A: 家庭内で感染を広げないためには、換気をこまめにする、感染者の世話をする人をなるべく限定する、感染者も同居人もマスクをする、よく手を洗う、可能なら別々の部屋を使う、といった対策を行うのが好ましいです。ただ、実際には、同居している人への感染を防ぐのはかなり困難です。同居している人は、自分の健康状態の観察をしっかり行って下さい。また、家庭内に感染を持ち込まないようにすることが一番、大切です。

 自宅療養をする感染者や、同居人への注意点をまとめたパンフレットを東京都が作っています(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/zitakuryouyouhandbook.files/zitakuryouyouhandbook0128.pdf)。全家庭ですべてを実施できるとは限りませんが、参考にして下さい。

新型コロナウイルス感染症自宅療養者向けハンドブック
東京都が作成した自宅療養者向けハンドブック

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Q.13:感染の可能性がある「濃厚接触者」はどんな人?

A:感染者と近距離で、ある程度の時間、一緒に過ごした人は、感染している可能性が高い濃厚接触者になります。感染者と本人がどのような種類のマスクをどのように装着していたか、大声でしゃべったり歌ったりしていたか、といった状況によって、感染の可能性は変わってきます。同じ家に同居している人は全員、濃厚接触者になります。職場などの場合は、感染者との距離や、一緒に過ごした状況によって、濃厚接触者になるかどうかは変わってきます。

 感染の可能性は、感染者の距離が短く、感染者と一緒にいる時間が長いほど、高まります。厚労省によれば、一般的には、手を伸ばしたら届く1メートル以内の近距離で、15分以上の時間、一緒にいた場合には、濃厚接触者とみなされます。ただし、感染者も一緒にいた人もマスクをしていて、会話が無ければ、感染の可能性は低くなります。また、絶えず空気が動いている屋外か、空気が滞留している屋内かによっても、同じ距離で同じ時間一緒にいた場合でも、感染の可能性は変わってきます。

濃厚接触者かどうかのチェックリスト(東京都)
濃厚接触者かどうかのチェックリスト(東京都、https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/coronamidika.files/checklist3.pdf)

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Q.14:濃厚接触者になったら、どうすればいいの?

A:まずは、発熱していないか、のどの痛みや息苦しさが無いか、といった自分の健康状態をしっかりチェックし、必要に応じて、医療機関に相談して下さい。また、感染している可能性があることを前提に、他の人に感染させないために、他の人との接触を控え、出勤しないといった自主待機が求められています。自主待機の期間は、潜伏期間が従来のウイルス株よりも短いオミクロン株が主流になってきた状況を踏まえ、2022年7月22日より、従来の7日間から5日間に短縮されました。抗原定性検査で自主隔離の2日目と3日目に陰性が確認された場合には、3日目から自主隔離を解除することができます。また、医療従事者や介護従事者らは、感染者と接触した1日目から、検査で陰性が確認できれば、勤務に戻ることが可能です。

 オミクロン株BA.5系統の流行により、かつてないほど新規感染者数が増えている第7波では、医療従事者や、介護施設や福祉施設、公共交通機関といった社会の機能を支えるエッセンシャルワーカーの中で濃厚接触者になる人が増え、医療や福祉、公共交通、郵便、といった社会生活の基盤となるような機能に、支障が生じる可能性が高まっています。同時に、オミクロン株は、従来の変異株よりも潜伏期間が短いことなどもわかっています。

 こういった状況を考慮し、政府は2022年7月から、濃厚接触者に求めていた自主待機の期間を7日間から、5日間に短縮しました。濃厚接触した感染者の発症日、あるいは、感染者の発症後に、家庭内で感染予防対策を講じた日のうち、遅い方を0日目とし、そこから5日間経てば、自主隔離は解除されます。あるいは、自主待機の2日目と3日目に連続して、抗原定性検査キットによる検査で、陰性が確認されれば、3日目から自主待機を解除することができます。医療従事者らは必要な場合は、濃厚接触者になった翌日からも勤務前に毎日、検査して陰性なら勤務できます。

オミクロン株に感染した医療従事者の職場復帰
オミクロン株陽性者の濃厚接触者が5日間をまだずに職場復帰する場合の検査(東京都、https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/coronamidika.files/kensa3.pdf)

 自主隔離期間中に症状が出て、感染が確認された場合は、感染者としての隔離が必要になります。症状が出てきて、心配な場合は、地元の保健所などに相談したり、医療機関を受診したり、ネットを介して相談にのってもらえるオンライン診療が可能な医療機関を受診したり、自宅を訪問して診察してもらえる訪問診療を実施している医療機関に訪問診療を依頼するなどして下さい。

同居家族が感染したら その3
濃厚接触者として自主隔離(自宅待機)中に感染が確認されたり、家族内で感染者がでたりした場合の療養期間や待機期間(東京都の資料から抜粋)

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 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

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