新型コロナウイルスの新規感染者数が4月上旬以降、じわじわと増え続け、いつの間にか第9波が到来しました。猛暑による熱中症の発生とも重なり、救急搬送が逼迫(ひっぱく)している地域も増えています。新型コロナウイルスの感染の状況や秋以降のワクチン接種についてまとめました。
【質問一覧 新型コロナ第9波】
- Q.1:新型コロナウイルスの感染は増えているの?
- Q.2:今後さらに増えるの?
- Q.3:重症化する人も増えているの?
- Q.4:救急搬送が逼迫しているの?
- Q.5:流行しているのはどんな種類のウイルス?
- Q.6:どのような点に注意すればいいの?
- Q.7:ワクチン接種はどうなるの?
Q.1:新型コロナウイルスの感染は増えているの?
A:4月上旬から緩やかに増え続けています。新型コロナウイルスの感染法上の分類が変わり、新規感染者数の把握方法が変わってからも、11週連続で新規感染者数が増加中です。
新型コロナウイルスは5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられ、新規感染者数の全数把握が無くなり、全国約5千カ所の指定された「定点医療機関」から週1回、感染者数などの報告を受ける「定点把握」に変わりました。厚生労働省の8月4日の発表によると、第30週(7月24~30日)の定点当たりの新規感染者数は全国平均15.91で、前週の1.14倍でした。定点把握が始まった第19週(5月8~14日)の2.63から、連続11週、増えています。42都道府県で前週より増えました。
年代別では、第30週は10歳未満が定点当たり3.0ともっとも多く、次いで多いのが10代の2.65でした。細かな年代別の数が公表されるようになったのは第26週(6月26日~7月2日)以降ですが、26~29週までは10代がもっとも多く、次いで10歳未満が多かったのが、第30週は逆転し、10歳未満の方が多くなりました。子どもだけでなく、重症化リスクの高い高齢者も増加傾向にあります。
Q.2: 今後さらに増えるの?
A: 8月4日に開催された厚労省の専門家会議、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの評価によると、過去の流行状況を踏まえると、夏には新規感染者数が増える可能性があるため、今後も感染者が増える可能性があるとのことです。
新型コロナウイルスの感染が国内で始まった2020年以降、同年夏の第2派、2021年夏の第5波、2022年の第7波と、毎年、夏には流行が拡大しています。
夏に感染が拡大する原因を特定するのは難しいですが、暑いためにエアコンをつけており、窓を開けて換気するのが難しいことや、夏休みの旅行や帰省などで、ふだんは接しない、さまざまな人と密に接触する機会が増えることなどが原因ではないかと考えられています。
Q.3:重症化する人も増えているの?
A:感染者数が増えるに伴い、入院が必要になるほど重症化する人の数も増えています。医療機関から厚労省への週ごとの報告では、第30週の新規入院患者は全国で1万1146人で、前週の1.19倍でした。第26週の5494人から4週間で倍以上に増えました。一定の割合で重症化する人はいます。新規感染者数増加により重症化する人も増えているのか、ウイルスの変異によって重症化しやすくなったかどうかは、今後の分析が必要だとされています。ただし、国立感染症研究所によると、国内と同じ亜系統が流行した海外の国では、重症度が上がったという兆候はみられないそうです。
8月4日の厚労省の専門家会議では、入院患者は増加しているものの、医療提供体制は逼迫していないという評価でした。
Q.4:救急搬送が逼迫しているの?
A:新型コロナウイルス感染症だけでなく、猛暑のために熱中症も増えており、救急搬送先がなかなか見つからない件数が増えています。
総務省消防庁が全国52の消防本部を対象に調査している、救急隊が4カ所以上の医療機関に連絡しないと受け入れ先が見つからなかったり、受け入れ先が見つかるまでに30分以上の時間がかかったりした、「救急搬送困難」な件数は、7月31日~8月6日の週は4412件でした。そのうち、発熱していたり、呼吸困難があったりして、新型コロナウイルス感染症が疑われたのは1390件でした。救急搬送困難件数は、新型コロナウイルスが流行する前の同時期と比較して、270%以上の増加です。
新型コロナウイルスの新規感染者数の増加傾向と同じように、5月以降、救急搬送が困難な件数も増えています。救急搬送が困難な状況になると、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など、どれだけ早く治療を始められるのかによって、命が救えるか、まひなどの後遺症がどれだけ残るか、といった治療の効果が左右される病気の予後が悪くなる恐れがあります。
Q.5:流行しているのはどんな種類のウイルス?
A:オミクロン株の亜系統、XBBの仲間です。感染研の推定によると、8月7~13日の週には、XBB.1.9系統が37%、XBB.1.16系統が36%、XBB.2.3系統が15%、XBB.1.5系統が8%を占めるとみられます。
2022年秋までは1種類の変異株が圧倒的多数を占めるような流行の仕方でしたが、その後は、複数の種類の亜系統が同時に流行するようになってきました。今年春からは、XBB系統が主流になっています。
多くの変異株や亜系統は、元のウイルスの遺伝子の一部が変異して発生しています。一方、亜系統の名前に「X」がつくのは、2種類のウイルスの遺伝子が入れ替わったハイブリッドの「組み換え体」です。遺伝子の一部の変異はウイルスが増殖する際にランダムに起きますが、組み換え体は、同時に2種類のウイルスに感染したヒトの体内で生じると考えられています。XBBはオミクロン株のBJ.1系統と、BM.1.1.1系統の組み換え体です。
元のXBBに変異が生じた亜系統、そのさらに亜系統が次々と誕生しています。国内でXBB系統が主流になり始めた今春は、XBB.1.5系統が多く検出されていましたが、その後、XBB.1.9系統やXBB.1.16系統に置き換わってきています。XBB.1.9系統のうちXBB.1.9.2にさらに変異が起きたものは、国際的なウイルスの命名法によって、EG系統と呼ばれます。東京都健康安全研究センターによると、7月24~30日の週に都内で分析したウイルスのうちもっとも多かったのが、EG.5.1系統でした。
感染研によると、EG系統も含めたXBB.1.9系統は、他の亜系統よりも感染が広がりやすいとみられています。重症化しやすさなどについてはまだわかっていませんが、流行している海外の国では、重症化率が上がる傾向はみられていません。
感染研によると、XBB.1.16系統も、他の亜系統よりも感染が広がりやすい傾向があり、また、ワクチンなどによる免疫を逃避する傾向もみられます。ただし、海外の状況から、重症化率の上昇などは報告されていません。
Q.6:どのような点に注意すればいいの?
A:換気や手洗いといった基本的な感染対策はこれまでと変わりません。また、厚労省は、夏休みやお盆の帰省などで、高齢者や基礎疾患があるなどして感染した場合に重症化リスクの高い人に会う時や、高齢者施設や病院を受診する際には、万が一、自分が感染していても他の人にうつさないようマスクをするなどの心配りをするよう呼びかけています。同じように、通勤ラッシュ時など混雑した乗り物の中でもマスク着用を呼びかけています。
Q.7:ワクチン接種はどうなるの?
A:9月20日から、現在、流行しているオミクロン株の亜系統、XBB.1系統に対応したワクチンの接種が始まる予定です。対象は、生後6カ月以上の、すでに初回の接種を終えている人全員です。2023年度内はワクチン接種は無料です。米ファイザー社と米モデルナ社が現在、申請中のXBB.1系統対応ワクチンが厚労省の専門部会で承認されれば、それが使われます。両社のワクチンは、対象となる年齢と接種の種類が少しずつ異なります。
重症化リスクの高い65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人、医療従事者らに対しては5月以降、オミクロン株BA.5など2種類の亜系統に対応したワクチンによる追加接種が行われています。これは9月19日で終了します。
生後6カ月~4歳の乳幼児全員、あるいは5歳以上で初回の接種が終わっていない人に対しては、従来型のワクチンによる初回接種が行われてきました。8月2日、生後6カ月以上に対して、ファイザー社のBA.5などに対応したワクチンを初回接種として打つことが承認されました。このため、生後6カ月以上の初回接種には、今後、こちらのワクチンが使われるようになっていく見通しです。
XBB.1対応のワクチンのうちファイザー社製ワクチンは生後6カ月以上を対象に、初回接種にも追加接種にも使うとして申請中です。モデルナ社製ワクチンは、6歳以上を対象に、追加接種で使うとして申請中です。
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新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学医療ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。
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