健康寿命が伸びるひとつの要因として、良い腸内環境がしばしばあげられます。腸活とは、そうした腸内環境を目指すためにする活動です。
この記事では、腸活に関する基本的な情報として、メリットや一般的な方法をご紹介しています。
<目次>
1.腸活とは
腸活とは、腸内環境をより良い状態にするために、食事に気をつけたり必要な運動をしたりする活動です。良い腸内環境とは、腸内にいる細菌の量のバランスが保たれている状態であり、具体的には善玉菌30〜40%・悪玉菌10%・日和見菌50〜60%が理想とされています。この状態を目指すために行うのが腸活です。
善玉菌 :腸内の有害物質を増やす悪玉菌の増殖を防ぐ菌。主なものにビフィズス菌や乳酸菌
悪玉菌 :腸内の有害物質を増やす菌。主なものにウェルシュ菌やブドウ球菌
日和見菌:腸内に善玉菌が多い場合は無害だが、悪玉菌が多い場合は悪玉菌と同じように有害物質を生み出すようになる菌
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なお、私たちの腸のなかには、約40~100兆個以上の腸内細菌がいるといわれており、腸内細菌は菌種ごとに腸の壁にびっしりと並んでいます。この状態を腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)といいますが、その様子が花畑に見えることから腸内フローラとよく呼ばれています。
最近では、分析技術の進化にともない、病気の人の腸内環境は、健康な人に比べ細菌の種類が少ないことなどもわかってきました。このため、より多くの種類の細菌が腸内にいるかどうか、つまり腸内環境の「多様性」を保っているかどうかが注目されるようになってきており、このために行う活動を腸活とすることもあります。
健康は、人生の長い期間、幸せに過ごすための重要な要素です。その意味で、腸活は単に健康のためだけではなく、より良い人生を過ごすのにも役立つ活動ともいえるでしょう。
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2.腸活のメリット(期待される効果)
腸活をすることで、具体的に次のようなメリットがあります。
1. 免疫力がアップする
2. 質の良い睡眠が取れるようになる
3. 老化予防が期待できる
4. 肥満を予防できる
以下で詳しくご紹介します。
(1)免疫力がアップする
腸内環境のバランスが良い状態の場合、腸の免疫細胞が正常に働きます。それによって、食事や呼吸のときに外からやってきた細菌やウイルスによる病気のリスクが、腸内細菌のバランスが乱れているときと比べて低くなります。
(2)質の良い睡眠が取れるようになる
睡眠の質の向上につながるのも腸活のメリットです。眠気を催すメラトニンというホルモンは、トリプトファンと呼ばれる物質によって生み出されますが、トリプトファンは体内に取り込んだタンパク質を腸内細菌が分解・合成することで作り出されます。腸内環境が整うと、そのトリプトファン生成の効率がよくなるため、より良い睡眠が取りやすくなるのです。
睡眠の質は、免疫力の向上や肥満防止に寄与します。また、体の疲労回復の度合いが高まるので、疲れにくい体づくりにもつながります。
(3)老化予防が期待できる
老化は経年による影響だけではなく、細胞や組織の炎症によっても起こるとされています。腸内環境を整えると免疫細胞がよい状態に保たれ、その炎症をおさえられるため、老化予防につながる可能性があります。
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(4)肥満を予防できる
腸内環境のバランスを整えると、酢酸や酪酸などの総称である短鎖脂肪酸がきちんと作られるようになります。短鎖脂肪酸は、エネルギー代謝をコントロールする役割があり、肥満予防にも効果があるとされています。
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3.腸活の方法5選
では、具体的に何をすれば腸内細菌のバランスを整えることができるのでしょうか。一般的に効果的とされているのは、次の方法です。
(1)食事
発酵食品などの善玉菌を含む食品(プロバイオティクス)を積極的にとって善玉菌の量を増やしたり、すでに腸内にいる善玉菌のエサとなる食品(プレバイオティクス)をとったりする方法です。
それぞれ、次のような食品があります。
善玉菌を含む主な食品 | 善玉菌のエサとなる主な食品 |
ヨーグルト 納豆 チーズ 乳酸菌飲料 キムチ 味噌 |
海藻類 キノコ類 イモ類 ゴボウ |
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食事による腸活は、普段から自炊をしている人が向いています。
ただ、無理にすべてを善玉菌を増やす食品に変えるのは意外と大変で、かえって続かなくなるので、毎日の食事のなかに1品でも入れるのがおすすめです。管理栄養士が開発したさまざまな腸活レシピが紹介されているので、そちらを参考にするのもよいでしょう。
【腸活レシピ集】
・マヨネーズのかわりにヨーグルト!? 大腸活ポテサラ
・腸も喜ぶ!すりおろしれんこんハンバーグ わさびヨーグルトがけ
・これを食べれば免疫力もアップ! “大腸活 × 温活”ホットサラダ
・ミキサーでまぜるだけ!善玉菌のエサになる簡単ディップ
・たった5秒で完成?!善玉菌を増やすお手軽メニュー
(2)運動
便を出す力のもととなる腸腰筋を運動によって鍛えるのも、腸の健康につながります。例えば、次のような方法があります。
①ウォーキング
1日9000歩以上(時間にして90分程度)のウォーキングは、便を出す力を効果的に鍛えられる運動です。階段の上り下りなどを加えると、さらに効果がアップします。1回で9000歩以上歩く必要はなく、体力的にきつい人は、例えば朝と夕方に分けるなど工夫すると良いでしょう。
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②エクササイズ
90分以上のウォーキング時間をなかなか確保できない人や、ひざに痛みがある人は、自宅でできるエクササイズにチャレンジしてみてください。
椅子に座ったまま、片方ずつ足を上げたり足踏みをしたりなどの運動を、10回1セットを定期的に行うだけでも腸腰筋の良い刺激を与えられます。椅子に座った状態で、おなかをひねったり伸ばしたりするのも効果的です。
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(3)マッサージ
腸に直接刺激を与える方法です。おなか周りを両手でもむことで、腸の動きが活発化します。
マッサージをするときは、指ではなく手のひらを使い、お腹をやさしく、時計回りに押していくのがポイントです。適切な力加減で正しい順番で行わないと、かえって逆効果になるので注意が必要です。痛みが出たり、気分が悪くなったりしたらすぐにやめて様子を見るようにし、症状が改善されない場合は医師に相談するようにしてください。
また、妊娠中や出産して間もない人、腹部や生殖器に炎症がある人、重度のヘルニアや重度の腰痛がある人には、やめたほうが良いでしょう。
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(4)ストレスケア
腸の活動は自律神経がコントロールしているため、自律神経のバランスの乱れにつながるストレスをためないようにするのも腸活のひとつです。ストレスを感じる場面を回避するのが一番ですが、難しい場合は、それ以外のときになるべくリラックスできる時間を増やしたり、発散したりできるようなこと(趣味や運動など)を始めてみてはいかがでしょうか。
(5)生活習慣の改善
腸内環境の乱れにつながるようなことをしない方法もあります。例えば食事を1回しかとらない日がある、睡眠時間が極端に短いときがある、など不規則な生活は腸内細菌のバランスを崩す原因となるので避けましょう。
また、過度な飲酒も、悪玉菌が増えるとされているため注意が必要です。喫煙も、腸の働きを弱めるため、できれば控えることをおすすめします。
4.腸活の効果を確かめるには?
腸活の効果を確かめるには、どんな便が出ているのかを見てみると良いでしょう。
・あまり臭わない
・黄色から黄褐色である
・硬さが練り歯磨き程度
・いきまずスッキリ出る
このような特徴をもつ便は、腸内環境が整っているとされています。
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また、腸内フローラの状態を検査できる市販のキットを使ったり、病院で検査を受けたりするのもひとつです。
ただし、これらは、あくまで現在の状態についての客観的な情報が得られるだけに過ぎません。結果がよかった場合はどうすればその状態をキープできるか、結果が芳しくなかった場合はどうすれば改善できるのか、場合によっては医師に相談しながら考えていく必要があります。
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5.腸活Q&A
最後に、腸活によくある質問とその回答をご紹介します。
(1)Q:腸活は何から始める?
腸活は、腸が本来の機能を発揮できるように、腸内細菌(善玉菌・悪玉菌・日和見菌)の勢力バランスを整えることです。まずは腸内環境に大きな影響を及ぼす食事の見直しから始めると良いでしょう。ほかに腸の周りの筋肉を鍛える運動をしたり、腸を直接動かすようにマッサージをしたりする方法もあります。
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(2)Q:腸活の良いことは?
腸活をすると、免疫力や睡眠の質の向上、老化防止、肥満予防の効果が期待できます。
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(3)Q:なぜ腸活が必要?
腸内環境が乱れていると腸の活動が弱まり、便秘などになりやすくなります。また、最近の研究では、腸の好不調は、脳や心の病にも影響があるという結果も出ています。体だけでなく、心の長期的な健康においても、腸内環境を整える腸活は欠かせない取り組みです。
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(4)Q:腸内環境は何日で変わる?
腸内環境を整えるのに有効な方法を継続して行えば、2週間程度で腸内細菌のバランスが大きく変わるといわれています。
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6.腸活は継続がポイント
腸内環境は、ただ1回の食事や運動で変わるものではありません。
しかし正しい方法を継続して行えば、理想の腸内環境に近づくことはさまざまな研究から明らかにされています。
最初からいろいろなことを一気にやろうとせず、まずは食事からなど無理なく始められそうな方法から取り組み、それが習慣化したら新しい方法にも追加でチャレンジしてみる、というやり方も良いでしょう。
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