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再生可能エネルギーとは? メリット・デメリットや種類、課題を紹介

再生可能エネルギーとは? メリット・デメリットや種類、課題を紹介
再生可能エネルギーのメリット・デメリットと種類(デザイン:増渕舞)
千葉みらい電力代表社員/森田一成

地球温暖化・気候変動への危機感の高まりとともに、世界的に再生可能エネルギーがあらためて注目されるようになってきました。この記事では、再生可能エネルギーをいま一度基礎から捉え直し、日本における再生可能エネルギーの現状と普及・拡大に向けた課題を見ていきます。

森田一成さん
森田一成(もりた・かずなり)
千葉みらい電力合同会社 代表社員。特定非営利活動法人自然エネルギー千葉の会 代表理事。フリーエディター、フリーライター。再生可能エネルギーのポテンシャルに着目し、市民の目線から再エネの普及を目指して活動中。有志の市民が出資して運営する「市民太陽光発電所」を3基手がけている。

1.再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギー(再エネ)とは、太陽光、水力、風力、地熱、バイオマスなどの、枯渇せずに繰り返して永続的に利用できるエネルギーのことです。英語の「renewable energy」を直訳すると「更新性エネルギー」となるため、この言葉のほうがよりイメージしやすくなるでしょう。

対義語は「枯渇性エネルギー」で、枯渇性資源(石油、石炭、天然ガス、ウランなど)に頼る火力発電、原子力発電がそれにあたります。

(1)なぜ再生可能エネルギーが重要なのか

なぜ再生可能エネルギーが重要なのでしょうか。

①温室効果ガスを排出しない

近年、再生可能エネルギーがあらためて注目されている最大の理由は、発電時に温室効果ガスをほとんど排出せず、地球温暖化対策になるからです。これが再生可能エネルギーの重要性の第一に挙げられるものです。

2021年公表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書では、2011~2020年の世界平均気温が産業革命以前と比べて約1.09度上昇していることなどが明らかとなりました(参照:WG1 第1作業部会(自然科学的根拠)│全国地球温暖化防止活動推進センター)。

SDGs(持続可能な開発目標)の目標13では「気候変動に具体的な対策を」とうたわれ、気候変動をもたらす地球温暖化に対する危機感が共有されています。また目標7では「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」が掲げられ、エネルギーの民主的利用と再生可能エネルギー普及が目標となっています。

SDGs目標7、13アイコン

②エネルギー源が枯渇しない

メリットの二つ目はエネルギー源が枯渇しないという点です。たとえば、火力発電の燃料である石油、石炭、天然ガスは、採掘し続けるといつかは枯渇してしまいます。それに対し、再生可能エネルギーは枯渇する心配がなく、半永久的に利用し続けることが可能です。

③エネルギー自給率を向上させる

三つ目のメリットは、エネルギー調達地域と消費地域が近いことです。再生可能エネルギーは純粋な国産エネルギーで、エネルギー自給率の向上につながります。

この事実は、とくにエネルギー自給率の低い日本にとって重要な意味を持ちます。資源エネルギー庁によると、2019年時点のデータ(日本は12.1%)の比較でOECD(経済協力開発機構)36カ国中35位と、極めて低い数字です(参照:日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」│資源エネルギー庁)。日本は海外にエネルギー源を依存している状態で、安定的にエネルギー源を確保できていないわけです。

今次のロシアによるウクライナ軍事侵攻によって原油価格・天然ガス価格が高騰したように、地政学リスクがエネルギー問題を直撃することは日本の構造的な脆弱(ぜいじゃく)性といえるものでした。再生可能エネルギーの普及・拡大はエネルギー自給率の向上に寄与し、この問題の解決に結びつくのです。

(2)デメリット

一方、再生可能エネルギーには弱点もあります。

①発電量が変動する

再生可能エネルギーのうち、太陽光、風力は季節や天候によって発電量が大きく変動します。これが第一のデメリットです。

電気はためておくことができないので、需要と供給のバランスが崩れると、大規模な停電が発生するおそれがあります。それを防ぐために、現在火力発電や揚水発電によってバックアップがなされています。

②発電コストが高い

デメリットの二つ目は、発電コストが高いことです。再生可能エネルギーの発電コストは徐々に低減化していますが、他の電源と比べてもまだまだ高いと言わざるをえません。

単位面積あたりでどれくらい発電できるかを表す指標に「エネルギー密度」があります。種類によって変わりますが、一般的に再生可能エネルギーはこのエネルギー密度が低いために広大な土地を必要とし、初期投資が高額になる傾向にあります。

2.種類別・再生可能エネルギーの特徴

再生可能エネルギーには、太陽光発電や風力発電、水力発電など、さまざまな種類があります。以下でそれぞれの特徴やメリット・デメリットについて説明します。

(1)太陽光発電

太陽光発電とは、太陽の光エネルギーを太陽電池で直接電気に変換する発電方法のことです。太陽光発電の特徴(メリット・デメリット)は以下のとおりです。

太陽光発電のメリット 太陽光発電のデメリット
・構造がシンプルでメンテナンスも容易
・屋根、壁などの未利用スペースに設置することも可能
・災害時、非常用電源として使うことができる
・気候条件により発電出力が左右される

2020年度の日本の太陽光発電導入量は6476万kW。2010年代に導入量はどんどん上がり、1990年代と比べてシステム価格も低下しています。

太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移
出典:令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)p.95|資源エネルギー庁

(2)風力発電

風力発電とは、風の力を利用して風車を回し、回転運動を発電機で電気に変換する発電方法のことです。風力発電の特徴(メリット・デメリット)は以下のとおりです。

風力発電のメリット 風力発電のデメリット
・大規模発電ができれば経済性に優れている
・陸上だけでなく、洋上に設置することも可能
・夜間も発電できる
・季節や気候に左右されやすい
・風車が回転するときに騒音が発生

風力発電の導入量は2020年末時点で2554基で、出力は約444万kWです。日本は平地が少ないなどの事情があり、その導入量は世界第21位ですが、推移のグラフをみると風力発電も徐々に広がっていることがわかります。

日本における風力発電導入の推移
出典:令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)p.98|資源エネルギー庁

(3)水力発電

水力発電とは、水の位置エネルギーを利用して水車を回し、回転運動を発電機で電気に変換する発電方法です。水力発電の特徴(メリット・デメリット)は以下のとおりです。

水力発電のメリット 水力発電のデメリット
・一定量の電力を安定的に供給できる
・一度発電所を設置すれば、長期の発電が可能
・エネルギー変換効率が高い
・歴史が長く成熟した技術
・環境への影響の理解や水利権の調整など地域の合意が必要
・日本では大規模開発の余地は残されていない

水力発電所数は2021年時点で2028カ所(建設中の水力発電所は92カ所)で、その開発済み出力と工事中の出力合計値は2852万kW(今後の開発が有望な未開発電力は1916万kW)です。開発地点の小規模化・奥地化が進み、他の電源と比べると発電原価が割高になったため、開発を進めにくい状況となっています。今後は農業用水などを利用した小規模の水力発電の開発が期待されています。 

日本の水力発電設備容量及び発電電力量の推移
出典:令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)p.100|資源エネルギー庁

(4)バイオマス発電

バイオマス発電とは、動植物などから生まれた生物資源を燃料とし、燃焼してタービンを回し、回転運動を発電機で電気に変換する発電方法のことです。バイオマス発電の特徴(メリット・デメリット)は以下のとおりです。

バイオマス発電のメリット バイオマス発電のデメリット
・未活用の廃棄物を燃料とすれば、循環型社会の構築に役立つ
・農山漁村の活性化につながる
・小規模分散型の設備になりがちで効率は落ちる
・海外からの大規模な燃料輸入には疑問が投げかけられている

2020年度の固定価格買い取り制度(FIT制度)におけるバイオマス発電導入設備容量は407万kW。バイオマスエネルギーの新規導入量・RPS制度(詳細は後述)からの移行導入量は増加傾向にあります。2012年からのFIT制度によって導入が進み、2015年度から2000kW未満の小規模な木質バイオマス発電の買い取り区分がつくられ、設備容量が増加傾向にあります。

固定価格買い取り制度によるバイオマス発電導入設備容量の推移
出典:令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)p.99|資源エネルギー庁

(5)地熱発電

地熱発電とは、地中深くから取り出した蒸気で直接タービンを回し、回転運動を発電機で電気に変換する発電方法(フラッシュ方式)のことです。その特徴(メリット・デメリット)は以下のとおりです。

地熱発電のメリット 地熱発電のデメリット
・火山国の日本ではポテンシャルが大きい
・電力の安定供給が可能
・高温蒸気・熱水を再利用することも可能
・温泉事業者との合意形成が必要

日本における地熱発電の資源量は2347万kWで、世界第3位です。長期的・安定的に発電ができる電源として注目されていますが、温泉業者など地域住民との合意形成に時間を要するといった課題もあります。

主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量
出典:令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)p.100|資源エネルギー庁

(6)太陽熱利用

太陽熱利用とは、太陽の熱エネルギーを太陽集熱器に集め、温水や温風を作り、給湯・暖房などに活用することです。その特徴(メリット・デメリット)は以下のとおりです。

太陽熱利用のメリット 太陽熱利用のデメリット
・構造がシンプルでメンテナンスも容易
・太陽光発電と比較するとエネルギー効率が高い
・季節や天候に左右される
・住宅用では太陽光発電に取って代わられている

太陽熱利用機器の代表例は太陽熱温水器で、1980年代前半に普及のピークを迎えましたが、1990年代以降、その設置台数は減少傾向にあります。その要因としては、石油価格が低価格で安定したことや、太陽光発電の台頭が挙げられます。なお、海外では、太陽光を集めてその熱で水をわかし、その蒸気でタービンを回して発電する「太陽熱発電」も広がっています。

太陽熱温水器(ソーラーシステムを含む)の新規設置台数
出典:令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)p.97|資源エネルギー庁

3.日本における再生可能エネルギー普及の主な取り組み例

つづいて、日本での再生可能エネルギー普及の取り組み例として、二つのビッグプロジェクトと日本政府の施策をご紹介します。

(1)秋田県由利本荘市沖の洋上風力発電

洋上風力発電(海上に設置した風車で発電する方法)の国内最大級のプロジェクトが、秋田県由利本荘(ゆりほんじょう)市沖で始まります。事業者名は「秋田由利本荘オフショアウィンド」で、三菱商事洋上風力、三菱商事、ウェンティ・ジャパン、シーテックの4社で構成されています。

国内初の一般海域での着床式洋上風力発電で、発電設備出力は81.9万kW。アメリカの大手電気事業者GE(ゼネラル・エレクトリック)の大型風車が65基も並ぶ計画です。

このプロジェクトにおいては、地元の産業・雇用を創出するため地元企業・地元港湾・地元金融機関を最大限に活用することが目指されています。2030年12月に運転開始の予定です。

(2)匝瑳メガソーラーシェアリング

匝瑳メガソーラーシェアリング
匝瑳メガソーラーシェアリング(市民エネルギーちば株式会社提供)

「ソーラーシェアリング」とは、農地に支柱を立て、上部空間に太陽光パネルを設置することで農業と発電事業を同時におこなう取り組みのことです。その最大級のものが千葉県匝瑳(そうさ)市にあります。

事業の母体となっているのは、市民エネルギーちば株式会社。もともと耕作放棄地だった広大な土地を、ソーラーシェアリングによって農地として再生させることに成功しました。

設備容量はDC1.2MW。2017年3月に系統連系(発電開始)し、開所式には小泉純一郎氏、細川護熙氏、菅直人氏の3人の元首相が列席しました。

市民エネルギーちばは、ソーラーシェアリングの設置とともに、新たにつくった地元の農業生産法人に売電収益の一部を耕作委託料として支払うことで営農を支援しています。また、地域の「豊和村つくり協議会」に「村つくり基金」を拠出することで、地域の発展にも寄与しています。

4.日本における再生可能エネルギーの利用を促進する制度

日本における再生可能エネルギーの歴史を振り返ると、オイルショック直後の1974年に策定された「サンシャイン計画」までさかのぼりますが、近年の急拡大を決定づけたのは2012年から開始された「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」です。

この制度はFIT制度と呼ばれています。FITとは「フィード・イン・タリフ(feed in tariff)」の略で、直訳すると「料金に入れ込む」というような意味になります。

FIT制度とは、発電事業者が再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格・一定期間買い取ることを国が約束する制度です。一例として事業用太陽光発電(10kW以上)を取り上げると、その買い取り期間は20年、買い取り価格は2012年度で40円(税抜き)というものでした。

このことにより、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、さらに再エネ事業への投資が進むことになります。

なお、FIT制度導入以前には、電気事業者による再エネを含む新エネルギーの利用を義務付けるRPS制度がありました。発電事業者に対する再生可能エネルギー買い取りを義務付けるFIT制度と違い、RPS制度は発電事業者に再生エネルギーによる発電を義務付ける制度です。RPS制度は、再エネ導入目標量が控えめに設定されたこと、市場機能に委ねられた制度であったことなどが起因して再エネ普及の大きな推進力にはなりませんでした。

5.日本における再生可能エネルギーの現状からわかる課題

2012年のFIT制度の施行以降、日本における再生可能エネルギーは急速に拡大してきました。資源エネルギー庁の「エネルギー需給実績」によると、2021年度の日本の総発電量のうち再生可能エネルギーは20.3%(太陽光8.3%、水力7.5%、バイオマス3.2%、風力0.9%、地熱0.3%)を占めています(参照:令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(速報)│資源エネルギー庁)。

しかし、諸外国と比較すると日本の取り組みはまだまだと言わざるをえません。諸外国の総発電量に占める再生可能エネルギーの比率はドイツが35.3%、スペインが38.2%、イギリスが33.5%、中国が25.5%などとなっています(参照:日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」│資源エネルギー庁)。

では、再生可能エネルギーのより一層の普及・拡大のために克服すべき課題とは、何でしょうか。

(1)コストのさらなる低減

再生可能エネルギーのより一層の普及・拡大のためには、コストのさらなる低減が必要でしょう。

ここで、初期投資、ランニングコストとともに重要になるのが、バランシングコストです。バランシングコストとは、電気の計画値と実績値を一致させるためのコストをいいます。電気はためることができないので、つねに供給と需要を一致させなければいけませんが、太陽光や風力などの変動電源ではこの一致が非常に困難です。

FIT制度においては、インバランス特例で再生可能エネルギー事業者にはバランシングコストが免除されていましたが、FIT制度からFIP制度への移行にともない、再生可能エネルギー事業者にもバランシングコストが求められることになります。

FIP制度とは「フィード・イン・プレミアム(feed in premium)」の略です。FIPにおいては、FITのように電気を固定価格で買い取るのではなく、電気を市場の需要に合わせた価格で買い取りつつプレミアム(補助額)を交付します。FIPは再生可能エネルギーの普及と電力市場統合の促進を目的とした制度です。

(2)適地の確保と地元の合意

再生可能エネルギー事業が大きなプロジェクトになればなるほど環境への負荷が予想され、地域住民との合意形成も課題となります。一部メガソーラーが地元から反対されたり、地熱発電プロジェクトが温泉事業者から反対されたりするなど、再生可能エネルギーのための適地確保には地元の合意が必須となってきます。

6.再生可能エネルギー普及のために私たちにできること

前章で見てきた再生可能エネルギーの現状と課題を受けて、最後に、再生可能エネルギー普及・拡大のために個人・企業(需要家)それぞれにできることをご紹介します。

(1)個人の場合

個人の立場から取り組めることとしては、徹底した省エネルギーの推進があります。いろいろな取り組みがありますが、とくにおすすめなのが電化製品の省エネ型機器への買い替えです。

たとえば冷蔵庫は、10年前の製品と比べると約40~47%の省エネになります。また、照明器具を白熱灯からLEDランプに切り替えると、約86%の省エネになります(参照:機器の買換で省エネ節約│資源エネルギー庁)。

戸建て住宅に住んでいて経済的に余裕のある人は、「省エネリフォーム」をおこなうという方法もあります。それによって、家庭のエネルギー消費の大きな部分を占める、冷暖房に関わるエネルギー支出を抑えることができます。

(2)企業(需要家)の場合

企業においても、まずは省エネルギーの推進が挙げられます。そのうえで、自社が消費する電気を再生可能エネルギー由来に切り替えることを検討してみてください。

再生可能エネルギー導入方法にはいくつかの方法があります。取り組みやすさの順番で挙げていきましょう。

・各電力会社が用意する再生可能エネルギーメニューを購入する
・企業自らが環境価値(非化石証書、グリーン電力証書、J‐クレジット)を購入する
・PPA(電力販売契約)によって直接再生可能エネルギー電源を調達する

こうした取り組みは、CDPやSBT、RE100などの国際イニシアチブへの加盟を可能とし、企業価値の向上にもつながります。

7.再生可能エネルギー普及という成功に近道はない

2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギーを主力電源化することが宣言され、総発電量の36~38%、状況に応じてそれ以上を目指すことがうたわれています(参照:第6次エネルギー基本計画の概要 p.12│資源エネルギー庁)。

その基準となる年が2030年度。あと8年弱に迫っています。

すべてのものごとに言えることですが、成功に近道はありません。再生可能エネルギー普及のためには、個人も企業も、一つひとつ地道な努力を続ける以外にないのです。

(2022.3.14更新)2(6)の内容を修正しました。

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