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プロボノとは? メリットやボランティアとの違い、探し方などを解説

プロボノとは? メリットやボランティアとの違い、探し方などを解説
プロボノとは?(デザイン:増渕舞)
サービスグラント広報・事務局/柴岡久美子

「プロボノ」は、社会課題解決の推進力となる活動でありながら、企業のサステイナビリティー経営や人生100年時代におけるライフキャリア形成の視点などからも注目が高まっているキーワードです。この記事では、プロボノコーディネートを実践する著者が、プロボノについてご紹介します。

著者_柴岡久美子さん
柴岡久美子(しばおか・くみこ)
プロボノ参加を経て、2018年から認定NPO法人サービスグラント事務局・広報担当。日本におけるプロボノコーディネートの草分け的団体にて、新規プログラム構築・運営や行政・企業・大学などとの協働を通じた個人のライフキャリア支援、地域づくり系プロジェクトなどでコーディネーターを務める。「マンガでわかる ちょこっと社会貢献~自分を活かせるプロボノ、始めてみませんか?~」(小学館)の制作にも参加。

1.プロボノとは

プロボノ(pro bono)とは、職業上のスキルや経験を生かして取り組む社会貢献活動のことで、ラテン語の「Pro bono publico(公共善のために)」が語源と言われています。よく間違われますが、プロフェッショナルのプロ、ではありません。

米国法曹協会(ABA)が奉仕活動を推奨したことから、長く弁護士など法律に携わる人々を中心におこなわれていましたが、2000年代に入り、職種を限らず、ビジネスに関わるさまざまな経験・スキルを生かした活動として、欧米をはじめ世界各地でプロボノの価値が広く知られるようになりました。

(1)ボランティアとプロボノの違い

一般的には、自発的な(無償での)社会貢献活動のことをまとめて「ボランティア」と言います。つまり、プロボノもボランティアの一種です。

その活動がプロボノかどうか、を判断するのは「職業上のスキルや経験を生かして社会課題に対して取り組んでいるか」という視点になります。弁護士がその知識で生活困窮者を無償で支援するのと同じように、仕事で事業戦略を立てている人が、非営利組織の活動拡大のための支援をすれば、プロボノです。

必ずしも専門性の高さを要するものではありませんが、プロボノが社会課題の解決につながる活動であるということは重要なポイントです。

(2)パラレルキャリアとプロボノの関係

日本では、2018年の働き方改革以降特に、キャリアの視野を広げる手段として副業や兼業といった選択肢をとる人が増加しました。また、世界的に不確実性の時代と言われ、「人生100年時代」「ライフシフト」といった言葉を当たり前のように目にするようになりました。

そうした背景があるなか、キャリアを描いていく際の選択肢の一つとして「パラレルキャリア」があります。「パラレルキャリア」とは複数のキャリア(職業上の経験)を同時並行に進めることです。思い切って転職をするのではなく、いくつか同時並行で進めながらボリューム調整をしていくというのは理想的ですが、本業以外の仕事を新たに始めるのはたやすいことではありません。一方、「プロボノ」は、活動方法や関わり方の選択肢が広がってきており、期間を決めてトライアル的におこなうことも可能です。そういった視点でも、「プロボノ」は、パラレルキャリアの選択肢の一つとなっています。

2.プロボノのメリット

プロボノは世界各国に活動が広がっており、2023年現在、Global Pro Bono Network(プロボノによる市民参加の推進に取り組む団体の国際的なネットワーク) には34カ国の推進団体が参加しています。その団体の多くが行政機関や企業などと連携してNPO支援に取り組んでいます。プロボノは、そこに関わる幅広い主体にメリットがある活動だからこそ、全世界に広がっていると言えます。

広くさまざまな経験やスキルを活用するプロボノでは、個人ではなく組織を支援することが多くなっています。ここから先はわかりやすいように、支援をする側の個人を「プロボノワーカー」、支援を受けるさまざまな形の非営利組織を「NPO」と表現し、従業員(個人)を送り出す側の「企業」とともに、それぞれのメリットを解説します。

(1)参加者としてのメリット

プロボノは社会貢献でありながら、支援をするプロボノワーカー自身も得るものが多い活動です。

プロボノならではのメリットとしてまず挙げられるのは、社会課題の現場を実体験として理解できることです。多様なNPOの思いや活動運営の工夫を知ることは、社会課題の構造を知ることにつながります。

また、プロボノ活動は、キャリアの棚卸しの機会ともなります。サービスグラントでは、これまで1200件以上のプロボノプロジェクトがおこなわれていますが、その参加者からは、日ごろと異なるフィールドに出向き、多様な背景を持つ人々と協働することで、「自身の思わぬ得意・不得意に気づいた」「当たり前と思っていたことが評価されて驚いた」という声を聞きます。「自分のスキルが社外・社会で通用するか、腕試しの機会になった」「視野が広がった」というコメントも多く寄せられています。

(2)企業としてのメリット

経団連が2022年12月に改訂した、「企業行動憲章 実行の手引き(第9版)」では、従業員の社会参加の重要性が色濃く強調されています(参考:企業行動憲章 実行の手引き 第9版 p.124~137|日本経済団体連合会)。複雑化する社会課題に対して、セクターを超えた協働が求められるなか、企業としてプロボノに取り組むことは、課題解決の大きな推進力となるうえ、企業価値の向上にも寄与します。

プロボノは、社会課題に実際に触れ、その本質を知るとともに、課題解決のための具体的な成果を出すことに挑む活動です。企業でのノウハウを活用したプロボノ支援により、これまでに数値化できていなかった社会課題の現状を浮き彫りにした事例があります。また、NPOの持つ膨大な記録をひもとき、ナレッジとして広く横展開できるものとして資料化することで団体の活動推進に役立て、社会的なインパクトを出すことに貢献したケースも見られます。

こういった、NPOとの協働プロジェクトへの参加を通じて社員が得るものは多く、プロボノでの経験が新規事業提案や組織の改善提案につながったという声もあります(サービスグラントが実施した社会課題解決型越境学習プログラム「プロボノリーグ」の参加者アンケートより)。最近ではプロボノを「越境学習」の機会としてとらえ、社員の研修として取り入れる企業も増えています。

(3)NPOとしてのメリット

NPOの運営において、専門的な技術や知見は不足しがちです。常勤の有給職員が0人や数人程度の組織も少なくありません。NPO法人の6割以上は組織運営において「人材の確保や教育」を課題に挙げています。

NPOが抱える課題
出典:令和2年度 特定非営利活動法人に関する実態調査 報告書 p.50|内閣府

例えば、現場の対応や組織運営、寄付や助成金管理など、一人ひとりがさまざまな役割を担いながら、オンライン化の急速な変化にも対応し、新しい知識をアップデートし続けるのは難しいことです。一時的な関わりであっても、プロボノのような支援を得られることは、NPOの活動基盤強化に重要な助けとなります。

また、組織にとって第三者にあたるプロボノワーカーは、運営の改善につながる気づきを与えてくれる存在でもあります。業務の効率化や、課題の整理の仕方、情報の伝え方などに関するプロボノワーカーの提案が思わぬ解決の糸口につながった事例も多くあります。

3.プロボノ活動の注意点

プロボノは社会貢献活動ですから、一概にデメリットと言えるような点はありません。ここでは、不安に思われがちなことや、注意点についてご紹介をしておきます。

(1)参加者(個人)としての注意点

プロボノ参加に必要なのは、社会人として、業務やクライアントとのコミュニケーションなどのなかで自然と身に付けられる「ポータブルスキル(特定の業種に限らず活用できるスキル)」です。

そして、最も活用すべき能力は“聞く力”です。丁寧に話を聞き、NPOで働く人々が現場で感じている課題や、組織としての実情を理解しなければ、適切なプロボノ活動をおこなうことはできません。NPOの人々の思いに耳を傾けることができなければ、一方的な提案をおこなってしまう可能性もあります。そのため、人の話に耳を傾け、相手のペースに合わせるのがおっくうな人にプロボノは向かないかもしれません。

また、筆者が関わる団体では、現状に即して目的・期間・ゴールを設定する「プロジェクト型」を推奨しています。例えば、NPOがパンフレットを改善したいがどうすればよいかわからないという課題に対する支援を求めている場合、「新パンフレットの構成決定のため、既存のステークホルダーへのヒアリングによる課題抽出とターゲット層へのオンラインアンケートを実施し、結果の分析をおこなったうえ、構成を提案する」などと、取り組む範囲を詳細に決定します。このようにあらかじめ目的や期間を決めることで、支援範囲が広がりすぎてしまったり、芋づる式にやることが膨らんでいってモチベーションが下がったりする状態を防ぎます。

もちろん、プロボノでは、打ち合わせのスケジュールがなかなか合わなかったり、予定外の確認が発生したりと、予定通りにいかない場面も想定されます。本業や生活に支障が出ないようにするには、「週5時間、土日の活動を目安に、約3カ月間で実施します」などと稼働可能な時間帯や作業範囲をあらかじめ伝え、合意のうえスタートすることが重要です。

(2)企業側としての注意点

会社としてプロボノ活動をおこなう場合は、事前に支援先となるNPOと、プロボノワーカーとなる社員を含めた取り決めを作成し、合意することが重要です。取り決めがあると、互いのスタンスを明確にしてスムーズな協働をおこなうことができます。コーディネートのノウハウを持っている中間支援機関の協力を得れば、より安心して活動できるようになります。

また、ボランティアに関する制度を社内に設けることで、社員の個人的な活動を応援するとともに、活動を把握したり、活動を評価したりするような企業も増えているようです。

(3)NPOとしての注意点

プロボノでは、NPOの日々の活動を担うというより、組織運営の課題を解決するための業務をおこなう場合が多くあります。よりよい協働のためには、NPO側がプロボノワーカーの経験に頼りすぎず、一緒に考えていく必要があります。

ただ、普段は異なる業務をしている者同士、イメージしているものが全く違っていることに気づけなかったということも起こりがちです。本業のあるプロボノワーカーとNPOが打ち合わせをするとなると、平日夜や土日を使って時間をあわせる形になりますが、特に初期は、忙しくとも丁寧にコミュニケーションすることで、後の進行がスムーズになり、トラブル予防にもつながります。

4.プロボノの事例

プロボノプロジェクトの具体的な様子は、下記でも紹介するコーディネート団体のウェブサイトや説明会でも見ることができます。

(1)活動事例

サービスグラントを通じておこなわれているプロジェクト型のプロボノの流れを簡単にご紹介します。

1. 面談・キックオフ
2. 調査・現場見学
3. 中間提案
4. ヒアリング分析・制作
5. 最終成果提案・調整・納品

一人でおこなうプロボノの場合には、「ツールの使い方を教えてほしい」「経費精算のフォーマットを作成してほしい」「企画のアドバイスをしてほしい」「チラシを作成してほしい」などの依頼があります。

チームで取り組む場合は、数カ月から半年程度の期間をかけ、業務改善の提案、マーケティング調査、ファンドレイジング、ウェブサイトの作成などより複雑な課題に取り組みます。

(2)プロボノを送り出す企業の取り組み事例

現在では、数多くの企業が自社ならではのプロボノプログラムを実施しています。

NECは2010年度から、国内企業としては初めて、本格的なプロボノプロジェクトに着手しました(参考:NECプロボノイニシアティブ|NEC)。

また、パナソニックグループも2011年からプロボノを開始しており、10周年の際にプロボノ参加従業員におこなったアンケートでは、社会課題への感度が高まり、多様性への理解やキャリア形成など本業への副次的効果が生み出されることが確認されています(参考:Panasonic NPO/NGOサポート プロボノプログラム デジタルブック『プロボノのススメ』|Panasonic)。

ほかにも、住友商事は社会貢献活動「100SEED(ワンハンドレッドシード)」の一環として、教育課題に取り組むNPOの運営基盤強化を支援する「教育支援プロボノ」をおこなっています(参考:教育課題に取り組むNPOをサポートする ー「教育支援プロボノ」|住友商事)。

5.プロボノの探し方

プロボノの募集のなかには、「プロボノ」という表現が使われていないものや、有償でも同様なスタンスで関われる場合もあるかと思います。以下に、プロボノの探し方の一部をご紹介します。

(1)コーディネート団体に登録する

サービスグラント」は、日本におけるプロボノの草分けとして、国内最多のプロボノコーディネート実績があります。業種・職種・年代も多様な登録者で構成するチームでおこなうプロジェクト型支援を特徴としています。「二枚目の名刺」や「NPOコミュニケーション支援機構(a-con)」も、それぞれ特色のある形で、多数のコーディネート実績を持っています。

また、経営支援をおこなう「ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京」、国内外のNPO/NGOに“留職”する「クロスフィールズ」もコーディネート団体の例として挙げられます。公認会計士のプラットフォーム「Accountability for Change」、弁護士による「BLPネットワーク」といった、専門性の高いプロボノのネットワークもあります。

(2)マッチングサイトで探す

個人でいつでもエントリーすることができるマッチングサイトも多数あります。

■社会参加プラットフォーム「GRANT
はじめてでもスタートを切りやすいよう、コミュニケーションのテンプレートを用意し、コーディネーターのサポートを得ることもできます。

ふるさと兼業
兼業やパラレルキャリアとして、国内のさまざまな地域のプロジェクトが掲載されています。

activo
国内最大級のボランティア情報サイトです。インターンやアルバイトなどの求人も掲載されています。

(3)所属企業や公的機関が募集するプロボノを探す

企業のなかには、社内にプロボノを推進する制度を設けているところもあります。自社のプロボノに参加すれば、ボランティア休暇を使えたり、就業時間内でのプロボノ活動を一部許可されたりする場合もあります。

また、都道府県や区市単位で、行政機関がプロボノなどの社会参加活動を推進している場合もあります。

・横浜市「ハマボノ
・大阪府「大阪ええまちプロジェクト
・東京都「東京ホームタウンプロジェクト

そのほか、オンラインを活用して地方の活動を応援する「ふるさとプロボノ」というプログラムもあります(参照:ふるさとプロボノ)。

(4)近くの団体やボランティアセンターで探す

気になるNPOがある場合は、直接ホームページなどで情報を探してみてください。プロボノの募集が出ていない場合、まずはボランティアとして活動に参加してみるところから始めることをおすすめします。

また、地域には、思っているよりも多数の活動が芽吹いています。近くの地域のボランティアセンターを訪問すれば、多数のボランティア情報に触れることができます。

(5)※HPから応募するときのポイント

オンラインでのやりとりは、互いに顔の見えない状態となり不安がつきものです。要望や質問などが一方的にならないよう、自身の思いを伝えることから始めると、コミュニケーションがスムーズになります。

また、「百聞は一見にしかず」です。直接活動の現場に足を運んで活動に参加したり、オンラインであっても一度顔を見て話す機会を設けたりすることをおすすめします。

6.プロボノに参加する際は「半歩前のめり」の姿勢で

急に知らなかった世界に飛びこむことに勇気が出なかったり、自分のようなものでもプロボノはできるのか、と不安を感じたりする人もいるでしょう。一方で、NPO側としても、外部の人に組織の課題を伝えることに不安な気持ちを持っていることもあります。

プロボノワーカーとして参加する人は、ソーシャルの現場で学びなおす気持ちで、受け身ではなく「半歩前のめり」の姿勢で取り組んでみてください。まずは小さなことからで構いません。人生を豊かにする一歩を始めてみましょう。

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