■【インタビュー・前編】
土佐兄弟は、兄・卓也さんと、7歳年下の弟・有輝さんによるお笑いコンビ。高校生活の一場面を再現した「高校生あるある動画」が TikTokやYouTubeで人気を集めています。新しく、大学選びに悩む高校生に向けたYouTubeチャンネル「大学ドコイク」を始めました。2人の高校時代や大学受験の思い出を、平岡妙子編集長が聞きました。
――「土佐兄弟の大学ドコイク」はすごく面白いですね。最近の大学は、学部も研究内容も親の世代とはずいぶん変わっているんですね。
卓也さん(以下、卓也):先生も個性的な方がいらっしゃって、びっくりしますね。実際に大学に行かないとわからないような情報を発信していけたら、と思っています。
――2人の人気が爆発するきっかけになった「高校生あるある動画」を投稿し始めたきっかけは何だったのですか。
有輝さん(以下、有輝):もともとTikTokや YouTubeにいろいろな動画をあげていて、その中の一つが「高校生あるある動画」でした。他の動画と比べても反響がよかったので、だったら高校生ネタだけにフォーカスしてやってみようか、と。初めは仕事の合間に楽屋などで撮影していました。
――高校生活のよくある日常を取り上げていて爆笑しました。視聴者の共感は、TikTokの総再生回数が12億回以上という数字にも表れています。2人の高校生活は楽しかったんだろうなと思いますが、どんな生徒だったのですか。
卓也:あの動画は、全部有輝の思い出を再現したものです。年齢や地域を問わず、多くの方が共感してくれたということは、いつの時代のどこの高校にも、ああいう生徒がいたってことでしょうね。
ぼくも有輝が演じる高校生を見ると、「いたな~、こういうやつ」って思いますし、うちの親も喜んでいます。うちの息子はこんなに楽しい高校生活を送っていたのか、って(笑)。
弟は大学附属校でのんびり 兄は受験と真っ向勝負
――実際に、有輝さんの高校生活はあの動画のような感じだったのですか。
有輝:ほぼ、あのままです。大学の附属高校なので受験もなく、のびのび過ごしていました。
卓也:有輝は高校も推薦入学なので、受験を一回も経験していないんですよ。彼は高校入学と同時にエスカレーターに乗って、のんびりしていたら、そのまま大学の階についたんです。
有輝:試験監督がいて「はい、始め!」っていう受験は、一度もしたことないですね。ぼくが大学に行ったのは、芸人を続けることを親に許してもらうためで、大学で勉強したいことも、特にありませんでした。だから2年で中退しちゃったんだと思います。
――有輝さんは大学生のときから、お笑いの仕事を始めていたんですよね。
卓也:有輝を芸人に誘ったときに、親から言われたんです。「誘うのはいいけど、大学だけは絶対卒業させて」って。親の世代は、大学を出れば安泰だ、という考えですからね。「任せてよ!」って答えましたけど、結局約束は守れなかった(笑)。
有輝:大学2年のある日、テーブルの上に退学届が置いてあって、母親が「もう大学はやめていいから。退学届出しておいで」って。それでそのまま大学に出しに行って、終わりです。母親も、やりたいことがあるなら、そちらをやったほうがいいって思ったみたいですね。ぼくとしても、大学をやめてから、芸人としての覚悟が決まった気がします。
――お母様はもともと学校の先生なんですよね。きっと、その決断をするまでには、かなり考えたのではないでしょうか。
有輝:かもしれないですね。
卓也:ぼくには「やる気なさそうだし、学費の無駄だ」って言っていました(笑)。
センター利用の後期募集で滑り込み合格 受験は下調べが大事
――卓也さんは中学受験をして私立の進学校に通っていたということなので、本当に対照的ですね。大学選びは、どんな感じでしたか。
卓也:ぼくは学校の先生になりたかったんですよ。当時好きな科目だった日本史の先生になろうと、文学部史学科をいくつか受験したのですが、全部不合格で。それから慌てて後期日程でセンター利用で出願できる大学を探し、獨協大学の経済学部を受けて、合格しました。センター試験の英国社の点数がトータル85%くらい取れていたのが、幸いしたと思います。進学したら、いい大学ですごく楽しかったですね。ちゃんと教員免許も取りました。
――センター試験はかなりの高得点を取ったのですね。
卓也:そうなんですけど、センター利用入試のことをよく知らなかったんですよ。事前にもっと調べていれば、前期で違う大学にも合格をもらえたかもしれない、とも思いました。同じ大学でも、前期試験のほうが募集人数も多くて、入りやすいじゃないですか?
それに後から知ったのですが、別に史学科を出なくても日本史の教員免許は取れるんですよね。最終的に大学に合格できたからよかったけれど、下調べ不足、準備不足ではありました。
有輝:ぼくはそういうお兄ちゃんの姿を横で見ていて、大学受験は絶対にしたくないって思っていました(笑)。正月から勉強するなんて、ぼくには絶対無理。その結果、あれだけ受験で大変な思いをした人と、今こうして同じ仕事をしているのだから、ぼくはこれで大正解です(笑)。
卓也:こっちは受験と真っ向勝負したんだから、それはそれでいいんだよ(笑)。
――入試制度はますます複雑になっていますから、早い段階からの下調べや準備が重要ですね。
卓也:先生でも予備校のチューターでも親御さんでもいいので、誰か一人は受験のシステムに詳しい人を味方につけたほうがいいですね。ぼくのときも優秀な同級生は進路指導の先生に相談して、きちんと戦略を立てていたようです。高校生は目の前の勉強だけで手いっぱいでしょうから、ぜひ周りの人の力も上手に借りてほしいと思います。
【後編】親の口出しは愛情?干渉? 土佐兄弟が考える「大学選び」に続く
土佐兄弟/兄の卓也と弟の有輝によるお笑いコンビ。2014年、活動開始。SNSで公開した「高校生あるある動画」が話題を呼び、バラエティー番組にも多数出演。23年5月現在、YouTubeの「土佐兄弟の青春チャンネル」は登録者数42.8万人、有輝のTikTokはフォロワー130万人。23年には新たなYouTubeチャンネル「土佐兄弟の大学ドコイク」に出演し、大学選びに役立つさまざまな情報を発信中。
(構成=木下昌子)
(写真=篠塚ようこ)
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