30年冬季五輪断念 「落選」避けるも険しい道 札幌招致、国内外に禍根【表層深層】

 暗礁に乗り上げていた2030年札幌五輪招致は、札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)が11日の共同記者会見で先送りを表明し、大きな区切りを迎えた。当初は最有力候補だったが、東京五輪の汚職・談合事件で強まった逆風をしのぎきれず、開催地の絞り込みが迫って断念に追い込まれた。「落選」を避け、札幌市のメンツを保つ形に収めたが、国内外に禍根も残した招致レースの先行きは険しい。

記者会見する札幌市の秋元克広市長(左)とJOCの山下泰裕会長。2030年冬季五輪・パラリンピックの招致断念を表明した=11日午後、東京都新宿区
記者会見する札幌市の秋元克広市長(左)とJOCの山下泰裕会長。2030年冬季五輪・パラリンピックの招致断念を表明した=11日午後、東京都新宿区
札幌市役所に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市役所に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市中心部の大通公園に設置されている五輪マークのモニュメント=11日午前
札幌市中心部の大通公園に設置されている五輪マークのモニュメント=11日午前
札幌市内に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市内に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市内に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市内に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌の街に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌の街に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市中心部の大通公園に設置されている五輪マークのモニュメント=11日午前
札幌市中心部の大通公園に設置されている五輪マークのモニュメント=11日午前
2030年以降の冬季五輪招致に関心を示す候補地
2030年以降の冬季五輪招致に関心を示す候補地
記者会見する札幌市の秋元克広市長(左)とJOCの山下泰裕会長。2030年冬季五輪・パラリンピックの招致断念を表明した=11日午後、東京都新宿区
札幌市役所に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市中心部の大通公園に設置されている五輪マークのモニュメント=11日午前
札幌市内に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市内に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌の街に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=11日午前
札幌市中心部の大通公園に設置されている五輪マークのモニュメント=11日午前
2030年以降の冬季五輪招致に関心を示す候補地

 ▽提案の「演出」
 会談後に行われた会見の冒頭。JOCの山下泰裕会長は「私から、34年大会以降への変更を提案した」と述べ、札幌市ではなく、JOCから持ちかけたことを強調した。市が判断主体となることを避ける「演出」だった。
 招致活動は行き詰まっていた。昨年夏に東京大会を巡る事件が表面化し、もともと支持率低迷が課題だった札幌招致の機運は一気にしぼんだ。積極的なPR活動をやめ、再発防止策の検討を重ねたが、好転しなかった。
 関係者によれば、今年2月上旬、日本側の招致関係者が極秘で国際オリンピック委員会(IOC)本部のあるスイス・ローザンヌに飛んだ。バッハ会長と面会し、30年の開催が困難と伝えた。
 ▽戦意喪失
 ただ、表だって方針変更を打ち出せない事情があった。4月に3選を果たした秋元克広市長は、招致実現を公約に掲げて市議会や経済界の後押しを得ており、自ら撤退を切り出せる立場にない。候補都市の減少を嫌うIOCとしても、運営能力を高く評価してきた札幌市の招致断念は大きな痛手で「やめるとは絶対に言うな」と申し入れた。
 こうして「戦意喪失だが、上げた拳を下ろせない」(政府関係者)状況に陥った。手をこまねく間に海外の他都市が続々と名乗りを上げた。
 一つの期限が、12日にインド・ムンバイで始まるIOCの理事会と総会。30年大会の開催地選定に関しても方向性が示される見通しで、年内には候補地が絞り込まれるとみられる。札幌市は「落選は避けたい」(市幹部)と、この会合の前に先送りの表明を強く希望した。ただ、自発的な発表はできない。
 残された道は限られていた。秋元氏と非公式の協議を重ねた山下氏が、周辺に漏らした。「もう、俺が言うしかないな」。10月2日、両者が話し合い「JOCの提案により撤退する」とのシナリオが固まった。
 ▽IOC不信感
 JOCはいったん「白紙」とすることや、招致活動の「検証」に乗り出す案も持ち合わせていたが、こうした表現に札幌市側は難色を示したという。記者会見で山下氏から出てきたのは「新たな全体計画を検討していただきたい」という言葉にとどまった。招致関係者は「さまざまな面で、JOCが押し切られたということ」と解説する。
 JOC幹部は「そういう形にしてあげた」と不満げにつぶやく。落としどころを巡ってせめぎ合ったJOCと札幌市にはしこりが残り、招致成功の可能性が低い34年大会や、選考プロセスすら見通せない38年大会に向け、足並みがそろっているとは言いがたい。
 札幌市に期待し、開催地の選定時期を遅らせるなど配慮してきたIOCの不信感も増幅した。招致関係者は「バッハ会長はもう日本を相手にしていない。彼が会長をしている間は無理だろう」と語る。ダメージの残る撤退劇に、JOC幹部は「いいことなしだ」とため息をついた。

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