家屋倒壊で圧死者多数 厳寒避難所 関連死も危惧 能登地震【表層深層】

 能登半島地震の死者数は、1995年の阪神大震災以降、建物倒壊や津波などによる「直接死」では3番目に多い災害になった。木造家屋に被害が出やすい地震波が観測されており、家屋倒壊が主な原因とみられる。救助活動が難航する中、人的被害はさらに増える恐れがある。厳寒期の避難所では今後、「災害関連死」が出る可能性もあり、関係者は危惧している。

石川県輪島市の建物が倒壊した現場を捜索する消防隊員=3日午後2時49分
石川県輪島市の建物が倒壊した現場を捜索する消防隊員=3日午後2時49分
阪神大震災以降の主な地震による直接死の数
阪神大震災以降の主な地震による直接死の数
寒冷期災害の課題
寒冷期災害の課題
石川県輪島市の建物が倒壊した現場を捜索する消防隊員=3日午後2時49分
阪神大震災以降の主な地震による直接死の数
寒冷期災害の課題


 キラーパルス
 95年以降、災害を直接の原因とする死者が最も多いのは2011年の東日本大震災で、死因は津波による溺死が大半だった。次が阪神大震災で、家屋倒壊による窒息や圧死が多かった。
 「倒壊した家屋での圧死が感覚として多い」。今回の能登半島地震で、犠牲者が出た石川県輪島市の坂口茂市長は3日、報道陣に説明した。
 中林一樹・東京都立大名誉教授(都市防災)も「直下型の激しい揺れで建物が倒壊、下敷きになったケースが多いと考えられる」と分析する。
 「今回のマグニチュード(M)は7・6で阪神大震災のM7・3を上回る。震源付近は強烈な揺れになった」
 防災関係者がさらに注目するのが、「キラーパルス」と呼ばれる地震波が観測されたことだ。揺れの周期が1~2秒で、木造家屋に大きな被害をもたらすことで知られ、阪神大震災でも記録された。今回も、この地震波が、木造家屋が多い地域の被害拡大につながったとみる研究者は多い。

 強い余震
 被害の把握に時間がかかっている状況について、防災システム研究所の山村武彦所長は「地震発生後すぐ夜になり、津波の情報が出ていたこともあって初動が難しい状況だった。被害は広範囲に及んでいる」と指摘する。被害はさらに増える可能性がある。
 中林名誉教授は「本震や強い余震が続き、これまで大丈夫だった家屋もかなり傷んでいる。余震への警戒が必要」と警鐘を鳴らす。
 直接死とは別に、今後懸念されるのが「災害関連死」だ。避難生活の過労や環境の激変によるストレスなどから体調が悪化してしまう。16年の熊本地震では、関連死が200人を上回り、直接死の4倍を超えた。
 真冬という時期も事態を深刻にしている。避難所でインフルエンザなどの広がりが懸念されるほか、寒さなどで体の中心部の温度が35度以下になる低体温症への対応も必要だ。

 助かった命
 「冬季の災害で健康被害を防ぐために」。避難所の改善に取り組んできた避難所・避難生活学会が地震発生直後、緊急の声明を発表した。
 「特に高齢者は体温を失いやすい」とし、①防寒着の着用②乾いた衣類の重ね着③上着の中に新聞紙を詰める④体を寄せ合う-といった工夫を挙げ、低体温症への注意を呼びかけた。
 余震への懸念や避難所の回避から「車中避難」をしている人に対し、エコノミークラス症候群などへの注意も促した。
 「暖が取れず、非常に寒いというのが避難所の現状」と輪島市の坂口市長。
 学会理事で日本赤十字北海道看護大の根本昌宏教授(寒冷地防災学)は「地震から助かった命が、寒さで失われることは絶対に避けたい」と強調した。

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