ストーンヘンジの巨石、どこから来たのか 謎が解明
英南部にある世界遺産ストーンヘンジの巨大なサーセン石は、どこから運ばれてきたのか。それがついに解明された。行方不明だった石の一部が60年を経て返還され、究明につながった。
長さ1メートルの筒形サンプルと、そびえ立つ巨石の地球化学的調査を照らし合わせた。
その結果、考古学者らは巨石の出どころを、ストーンヘンジから北に約25キロ離れたマールバラに近い場所だと特定した。
歴史的建造物を保護する英政府機関イングリッシュ・ヘリテッジのスーザン・グレイニー氏は、今回の解明について、「本当に興奮する」と述べた。
1958年に取った石のサンプル
ストーンヘンジの中心部に馬蹄型に配置された15個の石すべてと、外側に円を描くように立てられた石、石の上に渡してある石、少し離れたところに置かれた石は、高さ7メートル、重さ約20トンのサーセン石だ。
遺跡に使われているサーセン石より小さな石ブルーストーンは、ウェールズ地方のプレセリ丘陵から運ばれたことが分かっていた。しかし、サーセン石はこれまで、どこから来たのかはっきりしなかった。
ところが、1958年の発掘調査で石から取られた筒形標本が返還されたことで、考古学者らは化学組成を分析できるようになった。
この標本のありかは長年不明だった。しかし、発掘調査に関わったロバート・フィリップス氏(89)が昨年、一部の返還を決心した。
研究では最初、ストーンヘンジに残っているすべてのサーセン石の蛍光エックス線分析を実施。その結果、ほとんどが同じような化学的特徴をもっており、同一の場所にあったものだと分かった。
次に研究者らは、英東部ノーフォークから西部デヴォンに至るまでのサーセン石の露出部分を分析。それらの化学組成を、返還された筒形サンプルの化学的特徴を照らし合わせた。
イングリッシュ・ヘリテッジは、筒形サンプルに破壊試験をしたことで「決定的」な結果が得られたとした。破壊試験では、サンプルの化学組成がマールバラのすぐ南のウエストウッズにあるサーセン石の化学的特徴と一致したという。
今回の研究を率いたブライトン大学のデイヴィッド・ナッシュ教授は、「21世紀の科学を新石器時代のために利用し、考古学者が何世紀も議論してきた問題にやっと答えを出すのは、とても刺激的だった」と述べた。
頑丈な石
ナッシュ教授は、「露出した石はすべて、異なる地球化学的な特徴を備えていることがわかった。しかし、ストーンヘンジのサーセン石の出どころを突き止めることができたのは、返還された筒形サンプルを調べる機会に恵まれたからだった」と話した。
一方、グリーニー氏は、「ストーンヘンジを作った人たちが紀元前2500年ごろ、どこで素材を調達したのか、その場所を特定できるなんて本当に興奮する」と述べた。
「ストーンヘンジのサーセン石はマールバラ丘陵から運ばれたのではないかと推測していたが、確かなことはわからなかった。ウィルトシャーは一帯にサーセン石があるので、どこの石でもおかしくなかった」
「当時の人はできるだけ大きく、頑丈な石を探していた。そして、なるべく近い場所で手に入れるのが理にかなっている」
グリーニー氏は今回の証拠によって、「この段階のストーンヘンジ製作が、いかに注意深く検討され、熟慮されていたか」が分かるとした。
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