アメリカで連邦政府閉鎖の懸念、共和党強硬派が予算案に反対

Image shows Kevin McCarthy

画像提供, Getty Images

画像説明, 米連邦下院のケヴィン・マカーシー議長

アメリカで連邦政府閉鎖の懸念が高まっている。連邦下院では29日、野党・共和党の強硬派議員が予算案に反対票を投じ、この法案が否決された。

連邦議会では、予算案の成立期限が30日深夜に迫っている。これを過ぎると、数千人の連邦職員の給与が払えなくなり、政府機能が止まってしまう。

米議会では現在、上院では与党・民主党が、下院では共和党が多数党。上院は、短期的な「つなぎ予算」の合意計画を進めているが、下院で共和党の反対にあっている。

下院はこの日、232対198で、つなぎ予算案を否決した。共和党でも特に強硬派の議員十数人が、反対票を投じた。

ケヴィン・マカーシー下院議長(共和党)は採決終了後、下院ではなお、つなぎ予算を可決できる可能性があるとしたが、具体的な次の方針は示さなかった。

下院は29日夜、合意に達することなく閉会した。現地時間30日午前10時には議員らが戻り、あらためて採決が行われる予定。

予算案は予算執行を10月末まで延長するという内容だったが、大幅な歳出削減が含まれていたため、上院を占める民主党の賛成は得られるものではなかった。また、多くの民主党議員が反対する国境条項も含まれていた。

ジョー・バイデン大統領は29日、政府が閉鎖されれば軍部に大きな影響が出る可能性があると話した。

マーク・ミリー統合参謀本部議長の退任式に出席したバイデン氏は、「軍隊が難局に立たされている中で、政局をやっているわけにはいかない。それは絶対的な職務怠慢だ」と述べた。

共和党内に深い溝

下院と上院の予算案が対立し、政府閉鎖の可能性が高まる中、共和党内の深い溝が露呈している。一部の議員は、これまで予算合意を阻んできた保守強硬派にいら立ちを表明している。

上院は先に、超党派の支持を得たつなぎ予算案通過に向けた投票を、圧倒的多数で可決した。この法案は、11月17日までの政府閉鎖を回避し、議会が長期的な予算について合意に達する時間を与えるものだ。

この法案の成立には下院での可決が必要だが、僅差で過半数を占めている共和党のうち、少なくとも9人の強硬派議員がこの暫定措置の支持を拒否している。

この強硬派グループは、マカーシー議長が民主党の票を当てにし、自分たちの反対を回避してつなぎ予算を成立させるなら、議長の辞任を要求すると繰り返し警告している。

マカーシー議長反対派を率いる共和党のマット・ゲイツ議員(フロリダ州)は29日、つなぎ予算案は「強力な国境政策に対する共和党の立場を弱める」と述べ、反対票を投じると表明した。

マカーシー議長は、上院のつなぎ予算案を下院に提出するとは確約していない。しかし、民主党がこの法案で国境警備の問題についてより良い解決策を示せば、政府閉鎖は避けられるだろうと述べた。

「国境を守る気があるのか、それともバイデン大統領に同調して国境を開放し、政府機能を維持する法案に反対票を投じるのか。議員は全員、自分の立場を明示しなくてはならない」

Marjorie Taylor Greene and Matt Gaetz

画像提供, Getty Images

画像説明, (左から)共和党強硬派のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員とマット・ゲイツ下院議員

マカーシー議長はここ数カ月、共和党内の穏健派と右派で深まるイデオロギーの溝に直面している。

右派議員はごく少数だが、共和党の下院での優位はわずか9議席しかないだけに、議事を進める上でこの少数派が圧倒的な権力を握っている。

この強硬派は、ワシントンで慣例とされるあらゆるものに猛反対し、共和党にも歳出削減と、自分たちが保守の優先事項と呼ぶ事柄の実現を要求している。

そのためマカーシー氏は、つなぎ予算案を支持し、自分を救済してくれる相手方の党に目を向ける必要があるかもしれない。

だが民主党と協力することで、いわゆる「立ち退き動議」が出されることはほぼ確実だ。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、「これは解決不可能なパズルではない」と述べた。「マカーシー議長は、MAGA(アメリカを再び偉大にしよう)過激派に判断を委ねるのをやめるべきだ」。

エコノミストたちも、政府機関の閉鎖は米経済に打撃を与えかねないと警告している。ムーディーズはアメリカの信用格付けを下げ、「アメリカの制度とガバナンスの強さの弱さを浮き彫りにする」と指摘している。