トランプ前大統領の長男が法廷で証言、家族で初 一族企業の不正裁判

ドナルド・トランプ・ジュニア氏

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画像説明, ドナルド・トランプ・ジュニア氏

アメリカのドナルド・トランプ前大統領の一族の企業が不正に利益を得ていたとして訴えられた民事裁判で、前大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏(45)が1日、ニューヨークの裁判所に出廷し、企業の財務報告には関わっていなかったと述べた。

この裁判で前大統領の子どもが証言したのは、この日のジュニア氏が初めて。ジュニア氏はリラックスした様子でジョークを飛ばし、不正行為を否定した。

きょうだいのイヴァンカ氏とエリック氏も、近日中に証言する予定となっている。

アーサー・エンゴロン判事はすでに、一族の不動産企業「トランプ・オーガナイゼーション」が資産価値を水増しし、ビジネス記録を改ざんしたと認定している。

そのためこの裁判では、どのような罰を科すかを判断する。原告のレティシア・ジェイムズ・ニューヨーク州司法長官(民主党)は、2億5000万ドル(約376億円)の罰金と、前大統領に対する地元ニューヨーク州でのビジネス行為の禁止を求めている。

ジュニア氏は今週、裁判は「いかさま」などと保守系メディアで述べていた。

ジュニア氏とエリック氏は、前大統領とともに裁判の共同被告になっている。2人はトランプ・オーガナイゼーションの副社長を務めている。

イヴァンカ・トランプ氏(左)とエリック・トランプ氏

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ジュニア氏はこの日、1時間あまりにわたって証言した。翌2日も証言する予定。

冒頭、企業が財務記録を正確に管理するうえで使う、「一般に公正妥当と認められた会計原則」(GAAP)に焦点が当てられた。

ジュニア氏は、大学で学んだ記憶がある以外、よく知らないと説明。州検事から理解度を問われると、「まったく理解していない」と答え、法廷内に笑いが起こった。「会計士に任せている」とも述べた。

別の場面では、速記が追い付かないほど早口で証言したことについて、「すみません、判事、私はフロリダに引っ越したのですが、ニューヨークのペースでいました」とジョークを飛ばした。

ジュニア氏はまた、家業のためなら「何でもやった」と法廷で語った。ただ、同氏は会計士の資格は保有していない。

父親が2017年に大統領になった後は、会社における自分の役割が大きくなったと証言。「ビジネス上の決定を父に報告することを、私たちはやめた」と述べた。

ジュニア氏とエリック氏は、父親の大統領就任後、利益相反法を避けるため、ともに会社の評議員となった。

法廷で父親の「財務状況報告書」に署名したか尋ねられると、ジュニア氏は「思い出せる限りではしていない」と答えた。

検察側は、会社の財務報告書作成へのジュニア氏の関与について追及した。

ジュニア氏は、「会計士が作った。そのために報酬を支払っていた」と述べた。

「子どもたちを放っておけ」

トランプ前大統領は、ジュニア氏が証言台に立つ数時間前、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「子どもたちを放っておけ、エンゴロン(判事)。あなたは法曹界の恥だ!」と書き込んだ。

エンゴロン判事は先週、前大統領が裁判所書記官について発言し、攻撃的な発言の禁止令に2度違反したとして、計1万5000ドルの罰金を科している。

前大統領の娘イヴァンカ氏は、共同被告からは外れたが、8日に証言を求められている。

前大統領本人は6日に証言する見通し。

前大統領は、2020年大統領選挙での敗北を覆そうとしたとしてジョージア州と首都ワシントンで起訴されるなど、計4件の刑事裁判に直面している。