最年少17歳で「司法試験」合格、目標は宇宙進出!? “異次元”大学生の素顔

弁護士JP編集部

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最年少17歳で「司法試験」合格、目標は宇宙進出!? “異次元”大学生の素顔
4月から東京大学駒場キャンパスに通う仲西皓輝さん(19)(撮影:大槻志穂)

日本最難関の試験とも言われる“司法試験”。合格率30~40%程度とされているが、司法試験に挑むためには法科大学院を修了するか、事前に合格率3~4%の予備試験に合格する必要がある。

2022年(令和4年)、史上最年少の17歳11か月(受験時)で司法試験に合格した学生が、灘高校に在籍していた仲西皓輝(なかにし・こうき)さんだ。日本数学オリンピックへの出場経験もあるという“理系少年”が、なぜ司法試験を受験することになったのだろうか。現在、東京大学に通う仲西さんに話を聞いた。

“宇宙”が司法試験へのきっかけだった?

「小学生の頃の夢は医者でした。でも手先が不器用で、ちょっと向いていないかも…とも思っていました」。

照れくさそうに話す仲西さんは兵庫県出身。小学生の頃から算数と理科が好きな生粋の“理系”で、冒頭の言葉の通り医者を志していた。

父親の勧めで中学受験を決めたというが、「自分のできる範囲で上を目指したかった」と当時を振りかえる言葉からは持って生まれた向上心が伝わってくる。名門校の灘中学に入学すると、仲西さんの進路を変える一つ目の転機が訪れる。

原子力発電所への“社会科見学”だ。そこでエネルギー問題に関心を持った仲西さんは、宇宙で太陽光発電を行うプロジェクトがあることを知ったという。

宇宙空間に太陽光パネルを設置することで、地球上の昼夜や天気に左右されることなく発電が可能となり、全世界への安定的な電力供給が期待されているプロジェクトで、日本でも2050年の商用化を目標に実験や実証が行われている。しかし、技術だけがあっても商用化・実用化は難しい。舞台となる宇宙空間をはじめ、太陽光発電をとりまく電気・電波などの”法律“を整備する必要があるからだ。

仲西さんは、“宇宙の法律”を知った時「初めて法律に興味を持った」と話す。しかし中学時代は「数学研究部」に所属し数学オリンピックに挑戦するなど、まだ司法試験については何も考えていなかったという。

法律の勉強開始は“パンデミック”から

決定的な転機は高校1年生、新型コロナウィルス感染症のパンデミック(世界的大流行)だった。

「高校1年生になってすぐ緊急事態宣言で学校が休校になりました。今まで理系の勉強しかしてこなかったから、せっかくできた時間を使って法律を本格的に学んでみようと思いました。そうしたらすごく面白かったんです」。

数学にも共通する“論理的に解決できる”ところが好きだったといい、法律の勉強にのめり込んでいく。高校1年生の夏に“高校2年生での予備試験合格”を目標に定めた。

数学研究部は続け、最後は部長まで務めた。部活以外の放課後の時間は法律の勉強にあてた。学校の課題がある日は課題を優先させたため、法律の勉強時間は平均して1日に3~4時間。「写真記憶みたいにパッと覚えられる能力があるわけでもないですし、決まった勉強法もありません」。

単語などは書いて、文章として覚えたいものは声に出して、それぞれ何度も繰り返し勉強したという。空いている時間を使った勉強を重ね、仲西さんは高校2年生の時に予備試験に合格、そのまま高校3年生の時に司法試験も合格した。感情が高ぶる事はあまりないという仲西さんだが、「さすがに司法試験に受かったときはうれしかったですね」と笑顔をみせる。

「走るより歩いた方が早い」という特技の早歩きも披露してくれた(撮影:大槻志穂)

高校生で司法試験合格。秀才であることは間違いないが、素顔の仲西さんはどんな人物なのか。

幼少期に夢中になったのはもっぱら「読書」だったという。休日には書店や図書館に連れていってもらい、手当たり次第に読んだと振りかえる。「本は自分で情景が想像できて、その世界観に入れるのが好きでした」。上橋菜穗子さんの『鹿の王』を本屋大賞受賞前から家族に勧めていたことがちょっとした自慢だ。

そんな仲西さんには、実は“苦手なこと”も多い。「図工や調理実習の時間は目立たないように過ごしていました。絵を描くのも歌うのも、球技も苦手ですね」。

スポーツには面白い思い出もあった。小学生の時に通っていた水泳教室で、自分のフォームを両親に撮影してもらいフォームを研究してタイムを縮めた。しかし、仲西さんいわく「当時の運動能力の限界」を迎え、記録が伸びなくなってしまったという。その時の水泳教室内の進級テストが、人生で一番緊張したという。

試験で緊張しないワケ

一方で、司法試験も含め試験や人前に出て緊張することはほとんどなかったという。その理由は「十分な準備をするから」と自己分析する。

試験の前や人前に立つ際は、何パターンもシミュレーションするのだという。「どんなハプニングがあっても“シミュレーション済みだから大丈夫”と落ち着いて対処できるくらいまで準備しておくのが、緊張しないコツなのかもしれません」。

準備万端ぶりは、かばんの中身にも表れている。前日まで雨予報だった取材日は快晴だったが、かばんにはしっかりと折り畳み傘が準備されていた。そして、いざという時のためのウェットティッシュ、モバイルバッテリー…筆箱にも同じ種類のボールペンがずらりと並ぶ。

その中でひときわ“浮いている”のがお菓子のグミ2箱だ。気分転換に口に運ぶといい、「一番好きなのは“ピュレグミ”ですが、勉強中は手に粉がついてしまうから食べられないんですよ」とシミュレーション通りとはいかない一面もあるようだ。

仲西さんのかばんは荷物が隙間なく詰め込まれている(弁護士JP編集部)

日本企業の宇宙進出をサポートしたい

高校卒業後、大学に行かずに「司法修習」を選ぶ道もあった仲西さんだが、推薦入試によって東京大学に進学した。その決断の背景には、「司法試験に合格したことが法律勉強のゴールではないという意識があった」という。

「法律や法学の知識も、教養的にもまだまだ足りないものがあると思っていたので、もっと学びたいと思って進学しました。大学に入ってからたった2か月ですが、すでに自分が学んだことのない法律の解釈や、法学の考え方を学ぶことができています。また、入学後1か月間だけですが、五月祭の“AI裁判”に関われたのは貴重な体験でした」。

将来は、法律に興味をもったきっかけでもある“宇宙”に法律家として関わりたいと話す。

「宇宙の条約や法律を作ることにも興味はありますが、たとえば“企業法務弁護士”になって、日本の企業が宇宙進出する際に、代理人として世界と交渉できたらとも考えています」。

米モルガン・スタンレー社は、宇宙開発の世界市場規模が2040年には100兆円規模に達するとの予測をしている。日本企業の宇宙進出を仲西さんが導く日が、遠くない未来に訪れるかもしれない。

取材の前日に19歳の誕生日を迎えたばかり(撮影:大槻志穂)
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