太平洋ゴミベルトの調査中、オーシャン・クリーンアップが発見したプラスチックごみの一部。
The Ocean Cleanup
- 「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる160万平方キロメートルを超える北太平洋上の海域には、大きな潮の流れに乗ってプラスチックごみが集まってくる。
- オランダのNPO「オーシャン・クリーンアップ」の研究者たちは、飛行機を使って上空から観察したり、ボートを使ってこの海域を調査した。
- その結果、この海域に漂うプラスチックごみの量が急増し、これまで考えられていたよりも16倍多い可能性があることが分かった。
海に捨てられたり、川から海に流れ出た全てのプラスチックごみは、その場で沈むか潮に流される。こうしたプラスチックごみの大半は、最終的に「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる大きな海域へと運ばれる。
その大きさは、スペインの面積の3倍以上、トルコあるいはアメリカ・テキサス州の2倍以上だ(日本の面積の4倍以上)。
そして、科学誌『サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)』が掲載したオーシャン・クリーンアップと協力する研究者の調査によると、太平洋ゴミベルトは急速に拡大、より多くのプラスチックごみが集まってきているという。
これまで考えられていたよりも16倍以上多い可能性がある。
太平洋ゴミベルトは上空から一見すると、ただの大海原のようだ。しかし実際には、世界中のごみが集まってきている。これらのごみは、海の生き物にからまったり、それを食べ続けることで、生き物の命を奪ったり、わたしたちの食料供給に影響を及ぼすほど体内に蓄積されている。
プラスチックは毎年、3億2000万トン以上生産されている —— 相当量が最終的に海に行き着き、その大半は太平洋ゴミベルトのような海域にたまっているのだ。
オーシャン・クリーンアップの太平洋ゴミベルトに関するデータの多くは、18の船舶が参加した2015年の調査活動で得られたものだ。
The Ocean Cleanup
若き起業家ボイヤン・スラット(Boyan Slat)氏が立ち上げたオランダのNPO「オーシャン・クリーンアップ(Ocean Cleanup)」は、一部で異論も出ている手法によって、太平洋ゴミベルトのごみを回収しようとしている。また、ゴミベルトの問題の規模についても研究を進めている。
できるだけ多くのプラスチックごみを回収するため、調査船はマンタを捕まえるのに使われるメッシュ地のトロール網を使って、海中を調べた。
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彼らが注目したのは、世界に5つある巨大な旋回(環流)の中でも、最も大量のプラスチックごみが潮の流れによって世界中から運ばれてくる海域だ。
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その大きさは、160万平方キロメートルを超える。
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2016年、オーシャン・クリーンアップはC-130ハーキュリーズを使った上空からの調査を実施。データを精査し、より大きなプラスチックごみ(50センチ以上)の量を数えた。
The Ocean Cleanup
研究者らは113万6145個、668キログラムのごみを回収したが、その99.9%はプラスチックだった。
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この結果から、太平洋ゴミベルトには少なくとも1兆8000億個、7万9000トンのプラスチックごみがあると推計した —— プラスチックごみは日々、この瞬間にも増えている。
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その上で、彼らはこのうち1兆7000億個は、0.05〜0.5センチメートルほどのマイクロプラスチックだと見ている。ただ、プラスチックごみの総重量の92%は、より大きなごみが占めているという。
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また、衝撃的なことに、プラスチックごみの総重量の46%は「ゴースト・ネット」と呼ばれる、廃棄された漁業用の網が占めているようだ。これらの網は海を漂いながら、生き物にからみついたり、プラスチックごみをより小さな破片にしている。
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研究チームはさらに、2011年の東日本大震災で東北地方を襲った津波が、プラスチックごみの重量ベースでの増加に大きく貢献したと考えている。
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しかし、これらの推計も、この海域のプラスチックごみの量を実際より大幅に少なく見積もっている可能性がある。なぜなら、調査は北太平洋旋廻の全体ではなく、その「一画」でのみ実施された。また、多くの研究者たちは、はるかに大量のマイクロプラスチックのごみが、海中のより深いところにあると考えている。
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オーシャン・クリーンアップは、この「一画」にあるプラスチックごみを回収する計画を進めたいと考えている。だが、多くの研究者は、そもそも海にプラスチックごみを捨てるのを止め、海を汚さないことが最善策だと考えている。
Thomson Reuters
(翻訳:本田直子、編集:山口佳美)