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- アメリカ国勢調査局の新しいデータによると、アメリカの製造業者による建設支出が2022年の2倍以上に増加していることが明らかになった。
- アメリカ政府は、電気自動車、半導体、ソーラーパネル産業に対し、数十億ドルの補助金を提供している。
- アメリカは、中国などに対抗するため、過去2年間に製造業で約80万人の雇用を増やした。
2022年、アメリカの工場では生産が増加し、さらに工場自体も増加した。
2023年6月1日に発表されたアメリカ国勢調査局(USCB)のデータによると、アメリカの製造業による建設支出は、過去1年間で2倍以上に増加している。2022年6月の900億ドル(約12兆5000億円)に対し、2023年4月は年間1900億ドル(約26兆4000億円)近くに達し、政府以外による建設の約13%が製造業によるものだった。
アメリカ政府は、中国などに対抗し、クリーンエネルギーなどの分野でアメリカのリーダーシップを強化するため、電気自動車やソーラーパネルの生産に数十億ドル(数千億円)の補助金を出している。世界銀行によると、中国は世界の製造業の付加価値の約30%を占めており、アメリカの約2倍だ。ここ数十年の間に、世界の工場生産に占めるアジアの割合が非常に大きくなってきている。
アメリカは、砂漠からリゾート地まで、あらゆる場所に工場を建設し、低コストの国から輸入していた商品の製造を復活させようとしている。バッテリーや電気自動車の工場はラストベルト(Rust Belt:アメリカ中西部から北東部に位置する、鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が衰退した工業地帯)に多く、ソーラーパネルや再生可能エネルギーの工場は南部や南東部に多く存在するようになった。
アメリカでは、過去2年間に製造業の雇用が約80万人増加し、2023年5月のアメリカ労働省労働統計局(BLS)の雇用統計によると約1300万人の労働者を雇用しているという。しかし、全米製造業者協会(National Association of Manufacturers)によると、労働市場が高度な技術と手作業の専門知識を持つ労働者を見つけるのに苦労していることが原因で生じる製造業のスキルギャップによって、2030年までに210万人の雇用が埋まらない可能性があるという。
アメリカの製造業の建設支出。
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しかし、製造業はこの1年で他国からアメリカへの回帰を加速させている。
経営コンサルティング会社A.T.カーニー(A.T. Kearney)の2022年のリショアリング・インデックス(Reshoring Index)によると、アメリカ企業の96%が生産拠点を国内に移しているか、生産拠点を国内に戻す動きを評価しており、2021年の78%から急増している。
工場建設の急激な増加は、半導体の製造を促進するために2800億ドル(約39兆円)の資金を提供した2022年7月の通称CHIPS法と、2022年8月のインフレ削減法(IRA)の成立に対応している。IRAは、製造業、建設業、再生可能エネルギーの分野で新たな雇用を創出しようとしており、2030年までに最大150万人の雇用を創出するとされている。
これに対し、オフィス、医療、教育など、アメリカ経済のほとんどの分野で建設支出は減少している。住宅建設の分野も、パンデミック中の住宅市場ブームから大きく冷え込み、支出は減少している。
国勢調査局のデータによると、製造業の建設支出は、2020年1月から2023年4月まで、ニューイングランド地方と中部大西洋岸を除くすべての地域で拡大している。
これは将来の製造業ブームにつながる可能性があるが、実際にはまず新しい工場を建設する必要がある。この支出の多くは、連邦政府が関与するプロジェクトに環境影響評価の実施を義務付ける「国家環境政策法(National Environmental Policy Act)」による抑制や延期に向かう可能性がある。
一部の中国企業は最近、2018年の中国との貿易戦争後の一部の欧米諸国にならい、サプライチェーンを国外に移している。アメリカとの緊張関係やコストの上昇によって、一部の中国企業はインドやタイ、ベトナムでの製造に目を向けるようになった。