株主総会における議案の上程・審議方式の種類と特徴について

コーポレート・M&A

 株主総会の議案の上程・審議の方式には、個別上程・審議方式と一括上程・審議方式があると聞きました。具体的にどのような違いがあるのか、教えてください。

 株主総会の審議方式には、大きく分けて、株主総会の報告事項及び議案を一つずつ個別に審議・質疑応答を経て採決していく方式(個別上程・審議方式)と、報告事項及び複数ないし全部の議案をまとめて一括して審議・質疑応答をして採決する方式(一括上程・審議方式)があります。どちらも適法な審議方式ですが、上場会社においては、一括上程・審議方式を採用する会社の数が増加傾向にあります。

解説

目次

  1. 個別上程・審議方式と一括上程・審議方式
  2. それぞれの審理方式の特徴

個別上程・審議方式と一括上程・審議方式

 株主総会の議案の審議方法には、報告事項及び議案を一つずつ上程して審議・質疑応答を行う方式(個別上程・審議方式)と、報告事項及び複数ないし全部の議案をまとめて一括して審議・質疑応答を行う方式(一括上程・審議方式)があります。

個別上程・審議方式:報告事項及び議案を一つずつ上程して審議・質疑応答を行う

個別上程・審議方式


一括上程・審議方式:報告事項及び複数ないし全部の議案をまとめて一括して審議・質疑応答を行う

一括上程・審議方式

 一括上程・審議方式のなかでも、会社提案議案株主提案議案については別々に上程・審議する方式などいくつかのバリエーションが考えられます。一般に株主総会の議長は合理的な審議方法を採用する裁量権を有しており、どちらの上程・審議方式も適法であると考えられています(名古屋地裁平成5年9月30日判決参照)。

 一括上程・審議方式を採用する多くの上場会社では、議事進行の冒頭で議長からそのような審議方式を採ることについて説明をしたり議場の了解を得たりしていることが一般的です。

 なお、一括上程・審理方式であっても、採決は議案毎に個別に行います。  

それぞれの審理方式の特徴

 個別上程・審議方式は、報告事項及び個別の議案毎に質疑応答を経て議案についての採決を行いますので、報告事項・議案と質問との対応関係がわかりやすくなります。
 したがって、当該質問が当該報告事項・議案の説明義務の範囲内か否かの会社側の判断も比較的容易になります。

 しかし、実際の株主総会においては、一般の株主から、特定の議案には必ずしも関連しない質問がなされたり、ある議案に関する質疑応答の場において報告事項に関する質問がなされたりすることも少なくありません。このような場合に、「当該議案には関連しない質問です。」として回答を拒否する判断を行うことが容易であることは個別上程・審議方式のメリットである一方で、わざわざ株主総会の会場に足を運んで会社の事業への興味から素朴な質問に及んだ株主の質問への回答を拒否することは、IRの観点からすると必ずしも適切でないこともあるように思います。

 一括上程・審議方式は、もともとは総会屋対策として考案されたという歴史的経緯がありますが、一般株主にとっても、自分の関心のある事項がどの報告事項・議案に関する質問なのかを特に意識することなく質問をすることができますので、開かれた株主総会の運営としてより適している場合が多いといえます。また、会社にとっても、議案毎に質疑を打ち切る必要がありませんので、時間配分の管理の面でも優れていますし、審議不足・説明義務違反による決議取消のリスクも相対的に低くなるといえると考えられます。

 このような理由があってか、上場会社においては、年々一括上程・審議方式を採用する会社の数が増加しており、規模の大きな会社(資本金規模の大きな会社)ほど一括上程・審議方式を採用している会社が多いようです。

それぞれの審理方式の特徴

個別上程・審議方式 ・報告事項・議案と質問との対応関係がわかりやすい
・当該質問が当該報告事項・議案の説明義務の範囲内か否かの会社側の判断も比較的容易になる
・関連のない質問等に対して、それを理由にして回答を拒絶することが容易
・ただし、そのような拒絶はIRの観点から望ましくない場合も
一括上程・審議方式 ・株主にとっては、自分の関心のある事項がどの報告事項・議案に関する質問なのかを特に意識することなく質問をすることができる
・会社にとっても、議案毎に質疑を打ち切る必要がなく、時間配分の管理がしやすい
・審議不足・説明義務違反による決議取消のリスクも相対的に低くなる

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