真空とは 空気の圧力低い空間
真空という言葉を知っていますか。
「真空パック」や「宇宙は真空だ」などと聞いたことはありませんか。真は「本当」、空は「何もない空間」という意味があります。真空とは「本当に何にもない空間」なのでしょうか。
実は、日常で使う真空とは「地上の空気の圧力に比べ、圧力の低い気体などで満たされた空間」のことです。したがって、台風のような低気圧や高い山の上は含みません。
空気は見えませんから、圧力といってもぴんとこないかもしれません。空気は主に窒素や酸素といった気体の集まりです。気体を細かく見ると、分子という小さな粒からできています。この粒がたくさん集まって及ぼす力が空気の圧力です。
では、どのくらい集まっているのでしょうか。1辺10センチの立方体の箱が地上にあるとします。温度が0度の場合、箱の中の空気の質量はおよそ1.2グラムです。粒を数えると、およそ10の22乗個。これは1千億個の1千億倍です。ものすごい数ですね。この時、箱の中の圧力はおよそ1気圧になります。
では、この箱から空気の粒を除いていきましょう。温度0度のまま粒の数を半分にすれば、圧力も半分になります。1気圧の半分ですから0.5気圧ですね。周りの空気の圧力に比べ低いので、この箱の中は真空といえます。
同様に、どんどん粒を少なくしてみましょう。粒の数が100分の1になれば0.01気圧、1万分の1になれば0.0001気圧となり、より真空になっているといえます。
このように、圧力を使って真空の度合いを表すことを、「真空度」と呼びます。圧力が低いほど真空度が高いことになります。また粒を取る装置を真空ポンプといいます。理想的には、粒を全部取ってしまえば言葉通りの真空になりますが、ポンプの力には限界があり、残念ながら完全に真空にすることはできません。
宇宙はどうでしょうか。宇宙に空気はありませんが、星間物質と呼ばれるものがあり、その粒の数は1辺10センチの立方体の箱の中に千個程度。気圧でいえば、およそ10のマイナス19乗気圧です。
ちなみに、スーパーに並ぶ食品などの真空パックは0.01気圧程度になるものもあります。宇宙と食品の真空パック、真空のレベルは大きく異なりますが、どちらも真空であるという点は同じなのです。
(5-Daysこども文化科学館主任学芸員・村上聡)
※2020年11月ちゅーピー子ども新聞掲載記事より