2022年度から、政治や社会への関わり方を学ぶ新科目「公共」が高校で必修となる。国や社会の課題を自分の問題としてとらえ、行動することを促す「主権者教育」を進める狙い。ただ、教育現場では中立性を重んじるあまり、これまで政治課題を取り上げることを敬遠する傾向が根強い。どうすれば、主権者教育が進むのだろう。

 ▽政治課題は敬遠傾向

 10月31日に投開票された衆院選は、2016年に選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられて4度目の大型国政選挙だった。

 だが、「実際の選挙を取り上げた授業はやっていない」。広島県内のある公立高の公民科の男性教諭は打ち明ける。別の男性教諭は「現実の政治の話題に踏み込み過ぎて、生徒を誘導してはいけないから」と明かす。政治や選挙の仕組みを学ぶ機会はあっても、各政党の政策を議論の対象にするのは避けているという。

 衆院選では、各政党が新型コロナウイルス対応や教育施策を巡って論戦を繰り広げた。ただ、10代の投票率は依然として低迷。全体の投票率が55・93%だったのに対し、10代は43・01%と10ポイント以上下回った。

 文部科学省は16年の18歳選挙権の導入を受けて、現実の政治も取り扱いつつ、生徒同士で議論を交わすなどより実践的な教育を求める。ただ、現場ではその中で示す「政治的中立性を確保」との指針を過度に意識する傾向が強い。

 同省が19年度に実施した実態調査では、高校3年生で主権者教育に取り組んだと回答した学校の割合は全体の95・6%。ただ、現実の政治についての話し合い活動に取り組んだのは34・4%。多くが選挙の仕組みなど知識の習得にとどまっている。

 ▽安保連法案テーマの模擬投票が問題化も