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国連の機能不全 安保理改革を粘り強く

2022年3月24日 05時00分 (3月24日 05時00分更新)
 ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、国連が機能不全に陥っている。安全保障理事会=写真、AP=常任理事国であるロシアが「拒否権」を行使する一方、根拠を欠く主張で混乱させているためだ。安保理改革の必要性を訴えてきた日本は他国と協力して改革への動きを加速したい。
 ロシアは安保理で、米国が関与する生物兵器開発計画がウクライナに存在すると主張し、「安保理を政治宣伝に利用している」と批判する米欧と厳しく対立した。
 国連も存在を否定するこの計画をロシアが執拗(しつよう)に主張するのは、侵攻の正当性をアピールし、自ら生物兵器を使用する口実にしているのではないか。国際的な平和と安全に責任を持つべき常任理事国としての役割の完全な放棄だ。
 ロシア非難決議案はロシアの拒否権行使で否決された。代わりに採択された国連総会緊急特別会合の決議に法的拘束力はなく、侵攻を止めるには至っていない。
 ロシアは独自に、ウクライナ市民の保護などを求める人道に関する決議案を安保理に提出したが、侵攻に関するロシアの責任やロシア軍の撤退などは盛り込まれておらず、批判を受けて撤回した。国際世論の批判の矛先を自国からそらし、安保理を混乱させる狙いと言わざるを得ない。
 国連憲章は二条で加盟国の「主権平等原則」を明記するが、「拒否権」を持つのは五常任理事国だけ。ロシアに限らず常任理事国の暴挙は止められない構造だ。
 国連憲章は、加盟国の三分の二の賛成で改正できるが、五常任理事国すべての賛成が条件であり、ロシアを常任理事国から外すなどの抜本的改革は困難だ。
 しかし、安保理に象徴される国連の機能不全が続けば、国連や傘下の国際機関に対する不信感がさらに高まるのは避けられない。
 岸田文雄首相は国会で、ロシアの国際法違反を指摘し、拒否権改革に取り組む姿勢を強調した。
 常任理事国のフランスも拒否権行使の抑制などの改革を提案している。難しい課題だが、国連が本来の役割を果たすため、粘り強く安保理改革への理解を広げたい。

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