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黄色い遊具ばかり虫が集まるのはなぜ? 調べて分かった「虫の目」の仕組み

2024年1月22日 05時10分 (1月22日 16時11分更新)

 よく利用する公園の黄色の滑り台に、小さな虫がたくさん張り付いています。虫は黄色に集まる習性があるのでしょうか。 愛知県春日井市の40代主婦

黄色の滑る部分に虫が集まってくることが確認できた滑り台=愛知県春日井市で

 交流サイト(SNS)でも、同じような質問を見かけました。虫が群がっていると大人でも少し嫌な気持ちになりますね。黄色が理由なのでしょうか。探ってみました。
 (唐崎綾香)

黄色に集まってきた虫=愛知県春日井市で

 投稿してくれた主婦は3人の子どもを育てている。昨年11月と12月、自宅近くの公園に遊びに行くと、黄色の滑り台に小さな虫が集まっているのを目にした。「子どもが遊ぶのに…。気持ちが悪い」。追い払っても数分後にはまた集まってくる。「自然なものなので仕方ないかな」と思いつつも、理由が気になった。
 春日井市によると、公園が開園したのは1969年。遊具が老朽化していたため、昨年11月上旬に一新した。新しい滑り台は「子どもが遊ぶのでカラフルなものがいい」(担当者)と、赤、青、黄、オレンジといった鮮やかな色が使われているタイプを採用したという。
 主婦が指摘していた公園を記者も昨年12月に訪ねた。同じ滑り台でも、滑る部分は黄色とオレンジ色の二つある。目を凝らすと、いずれの色にも虫が数匹集まっていたが、黄色の方が多かった。
 この滑り台だけ特別なのだろうか。確認するため、市内の別の公園に向かった。この公園の滑り台にも滑る部分は二つあり、それぞれ黄色と青色が採用されていた。虫は黄色の方に数匹いたのに、青色の方には1匹もいなかった。

人間と異なる視覚、植物と誤認?

 なぜ、こんな差が生じるのか。虫の視覚に詳しい石川県立大の弘中満太郎准教授(応用昆虫学)に、取材した滑り台の写真を見てもらった。
 黄色に集まってきた虫について、弘中准教授は休息場所や餌として植物を求める習性がある「ハエ目」や「カメムシ目」の可能性があると指摘。「これらの虫の目は、人間の目と異なり、赤色が黒色に、黄色が緑色に見えている。黄色の遊具を緑色の植物と誤認して集まってくるのではないか」と分析した。
 公園の遊具の虫対策については「誘引しにくい無彩色の色に変更することも選択肢の一つでしょう」と提案し、「多くの虫が公園に存在しているということは生物多様性が豊かであることを意味する。遊具で目にしても優しく払ってあげて」と呼びかけた。

習性利用した防虫グッズも

 黄色に集まる虫の習性を生かして開発された商品もある。
 粘着製品加工販売の大協技研工業(神奈川)が開発した粘着シート「ラスボスRタイプ」。黄色の台紙に緑色の葉を模した柄をちりばめ、虫を誘い出して捕獲する仕組みだ。屋内で野菜や果物、花を育てる際に防虫対策として活用されている。
 担当者は「虫の視覚の特性や光に誘引される習性を踏まえ、色や柄の数が異なるシートで5年をかけて実験を繰り返した」と説明する。実際、虫の捕獲力は高く、ハウス栽培などで野菜や果物の生育環境の向上に寄与しているという。

黄色に誘引される昆虫の習性を踏まえて開発された粘着テープ「ラスボスRタイプ」=大協技研工業提供

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