2024年米大統領選、共和党候補との対話集会でわかったこと

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左からトランプ氏、ヘイリー氏、クリスティー氏、デサンティス氏、ラマスワミ氏/Will Lanzoni, Laura Oliverio/CNN

左からトランプ氏、ヘイリー氏、クリスティー氏、デサンティス氏、ラマスワミ氏/Will Lanzoni, Laura Oliverio/CNN

(CNN) 2024年の米大統領選で共和党からの指名を目指している候補者がCNN主催の市民との対話集会に参加した。対話集会から垣間見えたのは、予備選が始まった当初からの支配的な争点や、最初の投票を数週間後に控えるなかで引き続き中心的なテーマだった。

CNNが今年主催した対話集会には共和党の候補者上位5人が参加した。5月にドナルド・トランプ前大統領、6月にニッキー・ヘイリー前サウスカロライナ州知事とクリス・クリスティー前ニュージャージー州知事、今月に入ってロン・デサンティス・フロリダ州知事と実業家のビベック・ラマスワミ氏がそれぞれ対話集会に参加した。

マイク・ペンス前副大統領も6月に対話集会に参加していたが、その後、指名候補争いから撤退した。

対話集会からわかったのは次の六つだ。

本選での人工妊娠中絶をめぐる危機感

候補者のそれぞれの立場は異なるが、人工妊娠中絶の制限について質問をされた場合、ほとんどの共和党候補者が慎重に発言している。このことから、候補者は全員、同じことを心配していることがわかる。つまり、来年の本選での共和党に対する潜在的な反発だ。

トランプ氏は5月の集会で、最高裁が昨年、中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆したことについて、「偉大な勝利」と呼び、自身が保守派の判事3人を任命したことで可能になったとアピールした。

しかし、トランプ氏は、妊娠何週目から人工妊娠中絶を違法とするのか、あるいは、連邦政府による妊娠中絶を禁止する法案に署名するのかといった質問について、返答を繰り返し避けた。トランプ氏は「我々は今、素晴らしい交渉能力を持っており、何かを成し遂げることができると思う」と述べた。

ヘイリー氏は6月、中絶の権利を制限する「連邦政府の役割」があると考えていると述べた。しかし、妊娠のどの時点で中絶を違法とするのかという質問には直接答えなかった。

ヘイリー氏はその代わり、法案採決を阻止できる「フィリバスター(議事妨害)」を止めるのに必要な上院での60議席という基準を突破できるような中絶に関する意見の一致を探ると述べた。ヘイリー氏は中絶の権利を支持する人々に「和解の申し出」を行った。

ヘイリー氏は「プロライフ(生命保護派)であるという理由で私を判断してほしいのと同じように、私はプロチョイス(選択権支持派)であるという理由で誰かを判断することはない」と述べた。

デサンティス氏は今月の集会で、約6週目以降の人工妊娠中絶をほとんど禁止するというフロリダ州の法律を売り込んだほか、人工妊娠中絶の問題をめぐりフロリダ州の措置が「極端」だと示唆したトランプ氏について、立場を急変させたと非難した。

デサンティス氏も、テキサス州の女性が中絶手術を受けるために裁判所の承認を求めた事例について質問を受けた際には慎重に受け答えした。この女性は胎児が危険な状態にあることがわかり、医師からは、中絶手術を受けなければ、将来の妊娠が困難になる危険性があると告げられていた。州の最高裁判所は今月11日に、中絶を認める地方裁判所の判断を覆したものの、女性は中絶の処理を受けるためすでに同州を離れていた。

デサンティス氏は「母親としてそのような状況に置かれた場合、対処しなければならないのは信じられないほど難しいことだ。我々は、思いやりを持ち、こうした問題に対処しなければならない。なぜなら、これらは非常に難しい問題だからだ」と述べた。

外交政策では深い溝

共和党候補者の予備選での最も大きな違いの一つは、ウクライナのロシアとの戦争における米国の役割だ。

ヘイリー氏とクリスティー氏は、ウクライナの支援に米国が関与し続けることを最もはっきりと主張し、ロシアの勝利はさらに致命的な世界的危機を引き起こすと主張している。

「これはウクライナよりも大きな問題だ。これは自由に関する戦争であり、我々が勝利しなければならないものだ」(ヘイリー氏)

クリスティー氏はウクライナでの戦争について、「中国との代理戦争」と呼び、中国政府がロシアの石油を購入し、イランにドローン(無人機)を供給している点を指摘した。クリスティー氏は、米国が戦争に関与することは不愉快だとしつつ、「そうしなければ、中国とロシア、イラン、北朝鮮という悪の4人組が引き継ぐことになる」と述べた。

トランプ氏とデサンティス氏は、より慎重な姿勢を見せた。デサンティス氏は欧州諸国に対して、ウクライナをもっと支援するよう求めた。

トランプ氏は、ウクライナがロシアとの戦争に勝利することを望んでいるかとの点について明言しなかった。トランプ氏は「私は勝ち負けという観点からは考えていない。私が考えているのは事態を解決するという観点からで、そうすれば、我々はすべての人々を殺害するのをやめさせることができる」と述べた。

トランプ氏は、ウクライナとロシアのどちらの側に勝利してほしいか質問されると、再び返答をためらった。トランプ氏は「私はみんなが死ぬのを止めたい」と述べた。トランプ氏は以前、「24時間」以内にウクライナでの戦争を終わらせると約束していた。

ラマスワミ氏は、ロシアとウクライナの戦争に対する米国の関与について、共和党内で最も激しく批判してきた。ラマスワミ氏は他の候補者よりも踏み込み、戦争終結と引き換えにロシアに対して領土を譲歩するよう求めた。ラマスワミ氏は、ロシアのプーチン大統領が中国との軍事同盟から抜けるなら、北大西洋条約機構(NATO)はウクライナの加盟を認めないという「厳しいコミットメント」を提示すべきだと述べた。

「外交が解決策だ。私の外交政策は、第3次世界大戦を回避し、中国からの独立を宣言し、母国の安全確保に集中するというものだ」(ラマスワミ氏)

トランプ氏は変わらず

トランプ氏は集会で、21年1月6日に起きた連邦議会議事堂襲撃事件で果たした役割について、後悔する様子は見せなかった。トランプ氏の行動が議事堂にいたペンス副大統領(当時)の家族を危険にさらしたというペンス氏の主張について質問を受けると、トランプ氏は、ペンス氏に謝罪する義務はないと答えた。トランプ氏は、ペンス氏が「何か間違ったことした」と主張し、なぜなら、ペンス氏がその日に行われた投票で儀礼的な役割を果たしていた際、各州の選挙人の投票を拒否しようとしなかったからだと指摘した。

トランプ氏は、議事堂襲撃に関与したとして有罪判決を受けた親トランプ派の暴徒の多くについて、「恩赦したいと思う」と述べた。

トランプ氏は、一人残らず恩赦することはできないものの、大部分は恩赦できるだろうと述べた。

トランプ氏は対話集会でも、選挙集会やインタビューと同じように、20年の選挙が終わって以降に米国人が目撃してきたのと同じ姿を見せた。バイデン大統領に敗北したことへの不満や、敵に対する政治的な報復の約束、自身は何も悪いことはしていないという主張を繰り返した。しかし、トランプ氏は、連邦や州からの起訴に直面している。

トランプ氏は大統領退任後、事実上すべての訪問先で発言したように、20年の大統領選では不正が蔓延(まんえん)していたとのうそを繰り返した。

トランプ氏は24年の大統領選の結果を受け入れるかどうかは約束せず、「正直な選挙だと思う場合」にのみ、結果を受け入れるとした。

一方でトランプ氏のライバルの反応は

トランプ氏を最も強く批判してきたのはクリスティー氏だった。クリスティー氏は集会で、トランプ氏が再選を果たせば、その4年間は政敵への「恨みを晴らす」ことに集中するだろうと警告した。

「トランプ氏は、特に大統領退任後、完全に自己中心的で、完全に自分に夢中で、米国の人々など気にも留めていないことを示した」(クリスティー氏)

他の候補者たちは選挙戦の間、1月6日のトランプ氏の行動や起訴、トランプ氏が退任して以降に報道で取り上げられたそのほかの論争について、直接の衝突をほとんど避けていた。

その代わり、候補者らは主に右派の立場からトランプ氏を批判し、政策的な問題に焦点を当てている。

来年1月15日にアイオワ州での予備選を控えるなか、デサンティス氏はトランプ氏を攻撃する明確な計画とともに対話集会に参加し、トランプ氏を攻撃した。

デサンティス氏は「トランプ氏がプロンプター(原稿映写機)から降りると、何を言い出すのかわからない。15年や16年とは違うトランプ氏だ。あのころのトランプ氏は生き生きしていて、しかし、政策に関して本当に米国第一主義だった。今では、多くの内容が自身に関することだ」と述べた。

ヘイリー氏はトランプ氏が議事堂襲撃について擁護するのは間違っていると指摘した。

「トランプ氏はあれを美しい日だと思っている。私はひどい日だったと思っている。私は常にこの立場を支持する」(ヘイリー氏)

給付金制度に対する違い

ヘイリー氏は、社会保障やメディケア(高齢者向け保険)の将来をめぐる議論に火をつけ、デサンティス氏とトランプ氏を「米国民に対して誠実でない」と非難した。

ヘイリー氏とクリスティー氏はいずれも、将来の受給者の年齢引き上げや、米国の富裕層が給付金を受け取らないよう資産の調査を行うことを提案している。

「対応を先延ばしにし続けることはできない。トランプ氏もデサンティス氏も給付金制度の改革に取り組む気がないと言っているのは知っている。あなたたちがしているのは、次の大統領にそのことをゆだねるということであり、それは多くの米国人を窮地に陥れることになる」(ヘイリー氏)

クリスティー氏は、数年前にアイオワ州の主権者が「どれだけ稼いだとしても」制度に支払ったお金は返してほしいと語ったことに言及し、国は優先順位を付ける必要があると述べた。

「食べられなくなる人を犠牲にし、住居費を払えない人を犠牲にして、あなたはお金を返してほしいのか」(クリスティー氏)

デサンティス氏は自身の対話集会で、社会保障制度改革に関するヘイリー氏の立場を批判したものの、どのように社会保障制度を長期的に維持するかについては具体的な言及はほとんどなく、選挙戦序盤で悩まされた争点からは距離を置いた。デサンティス氏はヘイリー氏が社会保障を受け取るための退職年齢を引き上げることを望んでいると非難した。こうした方向性について、デサンティス氏は議会で賛成していた。

文化戦争と陰謀論

ラマスワミ氏は対話集会で、共和党からの指名を目指す候補者による第4回討論会で強調したテーマを取り上げ、連邦政府が米国人に対して「組織的にうそをついた」と述べた。これは、ラマスワミ氏が、トランプ氏支持者で陰謀論を重視する層にアピールするための取り組みを示した瞬間だった。

ラマスワミ氏は、連邦政府の法執行機関が議事堂襲撃の暴動をあおったと示唆する情報の断片をつまみ食いし、議事堂襲撃を「わな」だと指摘した。米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は今年、こうした指摘は「ばかげている」と述べていた。

対照的なのはデサンティス氏だ。デサンティス氏は、批判派が「ドント・セイ・ゲイ(ゲイと言うな)」法と呼ぶフロリダの州法をめぐり、この州法に反対するディズニーと対立するなかで、選挙戦を開始した。デサンティス氏はまた、自身の選挙戦を文化的な問題に対する発信を行う場として長年利用してきた。デサンティス氏の演説には「ウォーク(目覚めた)」政策や批判的人種理論、トランスジェンダーの権利などに対する批判が数多く盛り込まれている。

デサンティス氏が1時間にわたった対話集会で、事実上、そうした用語を使用しなかったことは注目に値する。デサンティス氏はそうすることで、長い間苦労している一般の人々に対するアピールを広げようとしている可能性がある。

ヘイリー氏は数カ月前、ディズニーと対立しているデサンティス氏を批判していた。

ヘイリー氏は「ディズニーがデサンティス氏を非難したため、デサンティス氏は今、訴訟で税金を使おうとしている」と述べ、トランプ氏にも向けられたかもしれない口撃を繰り出した。

「政治的攻撃ばかりだ。我々はその道を進むことはできない」(ヘイリー氏)

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