2023.08.25

小田穂乃実の実になる話②「トモが緩い」ってな～に？

　こんにちは、小田穂乃実です。最近本当に足腰の筋肉痛がひどいです。運動をサボっているせいで、器械体操選手時代に培った筋肉もどこかへ行ってしまいました…。筋肉って一朝一夕につけられるものじゃないですよね。第２回目は筋肉が関係している「トモが緩い」というフレーズについて取り上げていきたいと思います！

　「トモ」…パドック解説などでよく耳にする表現ですが、具体的にはどういう状態なのでしょうか。栗東・西村厩舎で馬の調教を行っている、梛木助手にお話を伺ってきました。

　「まず“トモ”は馬の体の、ちょうど腰からお尻、後ろ脚にかけての部分のこと。馬が走る時、主に前に進んでいく力になるのが、そのトモの蹴りによるものです」。非常に重要な部分なんですね…。「その部分のアスリートとして求められている筋肉が、きっちり仕上がっていない状態を“トモが緩い”といいます」。

　なるほど。ではなぜ、トモが緩くなってしまうのでしょうか？「主に２つの原因が考えられます。１つ目は、走り方のバランスが悪いこと。走る時に体の前側に重心をかけ過ぎていると、トモの筋肉がしっかり発達できていないことがあります。２つ目は、単純な乗り込み不足が考えられます」。

　では、緩さを改善する方法とは？「バランスが悪くなってしまっている時は、重心をバックして走るように促します」。ふむふむ、あえて負担をかけて、しっかり筋肉を使うようにするのですね。

　「でも…」と続けた梛木さん。「馬のバランスを改善しようと思ったら、乗っている人間の体幹がしっかりしていないと駄目です。ブレずに乗ることができないと、馬を正しく成長させられません。そして、『なぜトモが緩いのか』ということはそれぞれの馬で理由が異なるので、しっかり馬と向き合う必要があります」。

　そういえば、７月の中京記念の取材の際、栗東・安田隆厩舎の安田助手がダノンスコーピオンの調整について、「もともと右トモが緩くてレース中にも踏ん張りが利かないことがあったので、針治療を行い、筋肉に刺激を与えるようにした」ということをおっしゃっていました。それぞれに合った調整法を見つけることが大切なのですね。

　ただ、“筋肉を付ければ付けるだけいい”というわけではないようで、「筋肉をつけ過ぎると、可動域が狭くなって動きが硬くなることが。逆にどれだけ走り込んでも、トモが緩いタイプの馬もいて、走る時だけ力が入る子もいます。そういう子は、可動域が広く、伸び伸びとした走りができることもあります」（梛木助手）。

　トモが緩い馬は見て分かるのでしょうか？「乗って判断するので、なかなか見分けることはできません。ただ、緩い馬は地面を蹴る時に力強さに欠ける、踏み込みが甘い、トモをカクンと落とすという特徴があります。実際に乗っている人が、トモが緩いと判断した馬と、筋肉がしっかり仕上がっている馬を見比べると分かりやすいと思います」。

　見た目での判別は一朝一夕にはいきませんが、パドックで歩いている馬を一頭一頭、じっくり観察することで、少しずつ分かるようになるかもしれません。