《コラム》オホーツク海高気圧

 オホーツク海高気圧とは、オホーツク海や千島近海に中心を持つ、冷涼湿潤な高気圧のことで、そのほとんどが春の後半から夏にかけて現れます。
 オホーツク海高気圧が現れると、北海道には冷たく湿った空気が流れ込みやすい状況となるため、平年より気温が下がりますし、 海からの風が直接吹き込むオホーツク海側などでは、低い雲が広がって弱い雨の降りやすい天気となります。
 また、ひとたび現れると数日から1週間程度、長い時には2週間ほど居座るため、オホーツク海高気圧が多く出現する年の北海道では、顕著な低温や日照不足の天候となって、大冷害が発生するなど大きな影響を受けるのです。
 2003年夏は7月と8月にオホーツク海高気圧が何度か発生したことから、北海道の夏の平均気温平年差は-1.6℃と顕著な冷夏となり、この年の水稲は作況指数が73と不良となりました。
図1 2003(平成15)年7月の紋別(オホーツク海側)における日平均気温と日照時間
図2 2003(平成15)年7月21日の地上天気図
図3 2003(平成15)年7月21日の日平均気温の平年差
冷たく湿った気流が直接流れ込んだオホーツク海側や太平洋側では、平年より4度以上低くなっています。

オホーツク海高気圧の発生要因

 オホーツク海高気圧は、初夏まで海氷が残る冷たいオホーツク海と、北側と西側を陸地に囲まれた独特の地形が発生の要因のひとつとなっています。
 夏のシベリアは、太陽の日射しで地面が暖められ気温が高くなるため、地面付近は周囲より気圧が低くなります。 逆にオホーツク海は冷たいうえに、暖まりにくい海水で満たされているため、海面付近では周囲より気圧が高くなります。 このとき、上空を流れる偏西風が弱かったり大きく蛇行していると、オホーツク海高気圧が発生・持続しやすくなるのです。 夏に発生するオホーツク海高気圧の特徴です。
  一方、シベリアもまだまだ寒い5月頃にも、オホーツク海高気圧が現れることがあります。 偏西風が大きく蛇行し、オホーツク海やカムチャツカ半島付近の上空で、気圧の尾根がほとんど動かなくなると、その真下の海面付近にオホーツク海高気圧が発生し長く居座る場合があるのです。
図4 オホーツク海高気圧の発生要因と構造の特徴
(左:夏に現れやすいオホーツク海高気圧 右:春の終わり頃に現れやすいオホーツク海高気圧)

参考文献:気象学会2004年度春季大会シンポジウム報告「オホーツク海高気圧の成因と予測への鍵」中村尚、深町知宏