全話配信終了後もNetflix視聴ランキング上位に入り続けている『その年、私たちは』。主演のチェ・ウシクがこのドラマで演じているふわふわこじらせ男子があまりにハマり役すぎて、癒されに視聴する人が続出! しかし、ウシクの魅力はこの草食系男子だけにあらず。あらゆる役を多彩に演じ分けてきたウシクの出演作からおすすめ5作品を渥美志保さんがセレクト!
じわじわ人気継続中の『その年、私たちは』
高校時代になぜかテレビのドキュメンタリー番組で密着されることになった、成績が学年1番のヨンス(キム・ダミ)と、学年でビリのウン(チェ・ウシク)。まったく相容れないと思いきや、なぜか付き合い始め、そしてなぜか別れてしまった二人の、20代の再会を描いた『その年、私たちは』。ドラマティックな事件が起こるわけでもなく、三角関係がこじれるわけでもなく、なのにそれぞれがそれぞれの葛藤の中で「あと一歩」が越えられず、でも終わった後は胸がポッとあったまり、誰もが「よかったね!」と祝福したい気持ちになるドラマ『その年、私たちは』。
これまでそりゃもうたくさんの韓国ドラマを見てきましたが、主人公のカップルが二人そろって一重瞼ってのも初めてじゃないかと思うんですが(知らんけど)、なんていうんですか、二重瞼の「いや決してそんなつもりはないんですけどガン!」みたいなビジュアルのナチュラルな押し出しの強さがないからでしょうか(※個人の見解です)、なんとなくふわっと可愛い二人組キム・ダミとチェ・ウシク。ダミたんの可愛さ上手さ関しては『梨泰院クラス』から生粋のダミ派の私なんで別に驚きはしませんでしたが、今回の最大の発見は、チェ・ウシクの可愛さだったんじゃないでしょうか!問いかけときながら断言!
ラブシーンも照れずに見ていられる安定感
飲食店を何店舗も経営する両親から、これ以上ないってくらい愛されて育ったお坊ちゃまウシクは、必死に生きるのが嫌で成績は常に学年最下位、夢は家族のそばでのんびり暮らすことという、おおよそドラマの主人公になりえないタイプなんですけど、唯一絵の才能があり、でも「画は趣味」と言い切り、金にも名誉にも上を目指すことにも興味ないので覆面画家として活動中。アイドルスターのNJに好かれるっていう展開も、着信に気づかないわ、既読にならないわ、返信しないわの無関心ぶりで、相手に怒られていちいち「……あ」ってなるところとか、主役のくせして寝てる場面が異様に多いところとか、ダミの手を取って「すごく辛いんだ」とか言いながら涙ポロリの場面とか、もう可愛すぎ~~!!
ヘタレだけど優しく穏やか、でもまっすぐで繊細に傷つき、ダミに「別れてからも普通に元気にしてた」と聞いたときの顔とか、もう素晴らしい名演技です!後半のめちゃめちゃラブラブな感じも、個人的には「恥ずかしくて見てられん!」と思うことが多いんですが、ウシクは全然平気でした!ほどほどの塩梅ってんでしょうか!
なにせオスカー監督、ポン・ジュノ作品の常連
最近じゃオスカー獲得の巨匠ポン・ジュノ監督の映画に常に出てるウシク。ポン監督は「普通の顔」した俳優を使うのがうまく、も少しお兄さん世代の常連俳優にパク・ヘイル(『殺人の追憶』)って人がいるんですが、このポジションを継ぐのは、絶対にウシクだと思います!英語しゃべれるし、もはや世界は目の前!
つうことで、今回はチェ・ウシクの過去作をフィーチャー。ヘタレでヨシ、エリートでヨシ、クソ野郎でヨシ、コメディでヨシ、シリアスでヨシのウシクをお楽しみください!
>>次のページからはウシクの名演技が光る出演作をドラマ&映画から5本厳選!
1.パラサイト 半地下の家族(2019)
韓国映画として初めてアカデミー賞作品賞を受賞した作品。家族全員が職が無く半地下の家に住む一家は、長男ウシクが家庭教師の職を得たのをきっかけに、就職先の裕福な家庭の雇われ人とて、じわじわと入り込んでゆく。
ウシク演じるのは4回の大学受験経験を持ちながら一度も合格してない浪人生。そもそもその家で家庭教師をしていた金持ちボンボンの友人が留学することになり、その紹介で後を引き継いで娘の家庭教師に。その友人が、実生活でも仲良しのパク・ソジュンってのが笑えるんですけども!さらに可笑しいのは、ソジュンからは「大学卒業したらあの娘と結婚するつもりだから、留学中の家庭教師が手を出したら困る。お前なら安心!」と頼まれたくせして、さっさと娘とデキてしまうというユルさ!(っていうか、この娘は惚れっぽいだけで、そもそもソジュンにも本気じゃないと思うんだけども!)そしてゆくゆくは結婚してこの家の婿になることさえ妄想している能天気かつ極楽トンボぶり!
ここまででも十分に「お見事!」という存在感なんですが、中盤で物語のエンジンがかかってジェットコースター化し、ものすごい事件が起こったそのあとのウシクの消沈ぶり、囚人服着て立ってる裁判の1カットなんてまっすぐ立ってられないひょろ感とか、最後の最後で物語のすべてを引き取って漂わせる余韻とか、ほんと素晴らしい!!
映画のほうは、切り干し大根臭のソン・ガンホ(『タクシードライバー』)、嫌味なご主人イ・ソンギュン(『マイ・ディア・ミスター 私のおじさん』)、怪しい家政婦イ・ジョンウン(『椿の花咲く頃』)、ハンマー投げの剛腕母ちゃんチャン・ヘジン(『愛の不時着』)、リスペクトおじさんチョン・ミョンフン(『愛の不時着』)など、これ面白くないわけないでしょ!っていう大人な俳優たちに、パク・ソダム(『青春の記録』)、卒倒おぼっちゃまチョン・ヒョンジュン(『MINE マイン』)とか、気になるキャスト目白押し。
物語は見てる人には文章で説明するのアホらしいし、見てない人には説明したらアカンやつというタイプの作品なんで、まあ見てくださいとしか言えないんですけど、韓国の社会的ヒエラルキーって、この作品でいえばイ・ソンギュン(『マイ・ディア・ミスター 私のおじさん』)のいる天上界、その下は半地下と地下で地上なし、でもって半地下と地下の人間たちが「自分は最底辺じゃない!」みたいな感じで相手を貶めてるんだな……いや実はこれ韓国だけじゃないんじゃないの?みたいな話です!
ちなみに韓国イチのイケボ俳優イ・ソンギュンのこの作品での演技が、『ヴィンチェンツォ』での声マネに一番似とります!
2.The Witch 魔女(2018)
地方の農場で暮らす女子高生のキム・ダミは、経営悪化と病気の母の治療費に苦しむ父のため、賞金狙いでオーディション番組に参加。そこである特技を披露した彼女は、何者かにつけ狙われるようになり……。アイドルオーディションから始まり、こんな展開になっちまうのか!という作品なんだけども、これには前段がありまして、ダミは幼いころに、なんやしらんあやしげな研究所から逃げ出して、大けがして血まみれで森の中で倒れているところを、今の両親に発見され娘として育てられた少女なわけです。ダミが消えたその研究所は、ダミ騒動で血まみれの大惨事になってまして、「魔女(←ダミのこと)を絶対に探し出して殺せ!」みたいなことになってるわけですね。
その怪しげな研究所は人間兵器を作ってて、ダミはそこの最高傑作で逃がしちゃなんねえってことで追いかけたのが、幼き日のウシク。彼もまた研究所で育った人間兵器なんだけども、ダミとはレベルが違うんで返り討ちにあい、顔に傷跡のこっちゃったという因縁の関係。てなわけでオーディション番組をきっかけに、ダミvsウシクのチェイスが始まるわけです!てなわけで作品はバトルシーン満載なわけですが、ダミもウシクもサイキックでもあり、そのアクションは「壁殴ると穴ドカーン!」みたいなタイプのデフォルメ系で、激しいけど「拳に力こもる!汗飛び散る!」みたいな暑苦しさ皆無で、彼らと戦う生身の人たちは痛そうだけど、彼らはぜんぜん痛そうじゃないので、激しく血まみれだけど全然見れちゃう系。
『その年』ファンに何が楽しいって、殴りあう前の二人の舌戦で「だいぶ強くなったわね」「トロいわね相変わらず」とダミに上から言われまくり、バシバシバシバシと2往復ビンタ食らうウシクとか、そのうち「ウン」になっちゃって「僕は一人じゃ何もできないんだよ!」とか言い出すんじゃないかという楽しさ(間違った楽しみ方)。
『その年』ではあんなにダメな子でしたが、こちらではアメリカ帰りの組織の新世代エリートのリーダー。よくいますね、「君のこと産んでてもおかしくない世代ですけど」な初対面の相手に、帰国子女で「英語に敬語はないんで」的な感じでタメ口で、こっちがポカーンとしてると、英語の独り言で馬鹿にしたりするタイプ、あれですあれ。すれ違って肩が当たっただけのおっさんを瞬殺するシーンとか、全世界をバカにしてるとそのうち痛い目見るよと思ってるうちに、本当に痛め見るというキャラクターです!黒づくめの細身のスーツ姿はイケメンです!
3.サム、マイウェイ ~恋の一発逆転!~(2017)
幼馴染みで20年以上も近所に住む親友のアラサー男女の、友達以上恋人未満の関係を描く。高校時代はテコンドーの国家代表だったパク・ソジュン(『梨泰院クラス』)は、イカサマ試合をしたことで競技から追放。幼馴染のキム・ジウォン(『アスダル年代記』)はアナウンサーになる夢を持ちながら、今は司法試験を目指す恋人に貢がされるだけの毎日。顔を合わせるたびに喧嘩したりじゃれあったりの二人は、端から見ればお互いに好きどうしなのは明確なんだけども、あまりに付き合いが長いせいでなかなか男女になれない……ってところに登場するのが、ソジュンの高校の同級生のウシク。
頭は悪いが国家代表=ソジュンに好きだった女の子が奪われるという経験を持つ頭のいい非モテ=ウシクは、大病院に勤めるエリート医師として現れ、結婚式で見染めたジウォンに猛アタック。恋愛方面に徹底して疎い、それゆえ自分がジウォンを好きだってことに全然気づいていないソジュンが、突如現れたウシクにジェラシー掻き立てられて己の気持ちに気づいていくわけですが、デート帰りに何の気なしに「ラーメン食べてく?」とウシクを誘ったジウォンにソジュンがいきり立ち、二人がジウォンの腕を子供っぽく引っ張り合い、挙句の果てに3人横並びで超不自然にラーメンを食うという場面は、このドラマの1、2を争う爆笑名場面!
『魔女』のいけすかない傲慢エリートぶり、『その年』のぽやーんとした可愛さとはまったく別の、「地味な非モテがエリートになると、そりゃ権力に執着するよね……」って感じの、コンプレックスとかイヤったらしさ満点なウシクをそうぞお楽しみください。
ドラマはソジュン主演作の中で私が最も好きな作品で、不器用でまっすぐしか進めない純情バカ男子ソジュンがめちゃくちゃかわいい。ドラマ後半で格闘家になってゆくこともあり、盛り上がった大胸筋やら、キレイに割れたシックスパックとか、鍛え上げた上裸は出し惜しみ全くなし!なのだが、個人的にはノースリのしゃつから覗く太い二の腕がジウォンを抱きしめてるみたいな場面のほうがポワーンとなりますんで、その辺もお楽しみください。
4.狩りの時間(2020)
近未来のディストピア化した韓国を舞台に、最強の殺し屋に追われる3人の若者の逃亡を描くサスペンス・スリラー。
宝石店強盗の罪を一人で被り服役、刑期を終えてシャバに出てきたイ・ジェフン(『ムーブ・トゥ・ヘブン 私は遺品整理人です』)は、3年ぶりにその時の仲間に再会。だが出所後にと隠しておいた金は服役中の経済危機で紙切れ同然に。どん詰まりな状況を打破しようと、ジェフンに借金があるパク・ジョンミン(『地獄が呼んでいる』)を仲間に引き入れ、ジョンミンが務める違法地下カジノの金庫を襲い大金を手にするが、組織のスーパー怖い最強殺し屋パク・ヘス(『刑務所のルールブック』)が彼らの行方を追いはじめる……。