小4の国語で習う「改」という漢字。
恥ずかしながら、左側の最後の画はずっと「はねる」と思い込んでいたのだが、小学校では「とめる」と教えていることを知り、衝撃を受けた。

ずっと勘違いしていたなんて恥ずかしい……。

しかし、街中など一般によく見かける字は、はねているものばかり。実はこの「改」という漢字、明朝体やゴシック体などの活字書体では、「はねる」のがふつうなのだが、小学校の教科書などで使われる「教科書体」では、この部分をとめることになっているらしい。辞書でも「どちらでも良い」となっている。

そもそもなぜそんなことに? 文部科学省・小学校学習指導要領担当者に聞いた。

「『改』という漢字は小学校では、止めるカタチで習います。
小学校学習指導要領の『学年別指導配当表』には1006字あるのですが、その字形を標準字形として小学校では教えています。学習指導要領には『教科書体』でのっているので、それが標準字形になっているのです」
ただし、学習指導要領で「教科書体」が使われるようになったのは、昭和52年から。
「その前は明朝体だったこともあり、以前は多少教科書ごとに『はねる・はねない』の違いがあったかもしれませんし、中学や高校などの年配の先生などは、『教科書体』を知らない人もいて、『はねる』と教えているかもしれません」

社会一般の目安としては、「常用漢字表」(昨年改訂)がモトになるが、「常用漢字表」の「(付)字体に関する解説」でも「はねてもはねなくても良い」とある。
つまり、正しい字として、「改」の左側は「はねても、はねなくてもどちらでも良い」ということだ。とはいえ、「テストで『改』の字の左側をはねて書いたら、×になった」なんて話もよく聞く。
「実は『改』という漢字に関しては、親御さんから問い合わせの電話をもらうことも多いんです。
学校では『学習指導要領の標準の字体で教えなさい』ということになっているので『とめる』で習うけど、社会では『はねる』が一般的ですよね。『常用漢字表も評価しなさい』となっているので、はねても、はねなくても良いのですが、この認識がまだあまり通じていないことがあり、先生みんなが国語の専門家ではないので、『ゆるがない基準がほしい』という人もいるのが現実です。また、『指導と評価』の問題もあって、『評価』は『教えたことがいかにできるか』という観点があるため、教えた通りでないと×にする先生もいるのです」
ちなみに、中学受験などの場合、×になることをできるだけ避け、「基準」となるものを教えるため、「改の左側は、はねない」と強調する塾も多いらしい。

書体によって変わる「はねる・とめる」の問題は、このほかにも、「保」など多数の漢字がある。また、「女」という漢字も、字体によって「一」と「ノ」の部分がついていたり、つきぬけていたり、届かなかったりするが、いずれも正しいとされる。

社会に出ると、様々な書体があるため、「書体によって変わる」漢字がいくつもあるのだが、子どもにそれを説明するのは、至難の業だ。

(田幸和歌子)