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温度調節器(デジタル調節計) 概要


温度調節器とは、センサ信号と目標値を比較し、その偏差に応じて演算を行いヒータなどを制御する装置です。センサ信号に温度以外の湿度・圧力・流量などを扱うことができる装置は調節計と呼び、電子式のものを特にデジタル調節計と呼びます。ここでは、温度調節器(デジタル調節計)の概要を解説します。

関連情報


温度調節器とは

温度調節器とは、センサ信号と目標値を比較し、その偏差に応じて演算を行いヒータなどを制御する装置です。センサ信号に温度以外の湿度・圧力・流量などを扱うことができる装置は調節計と呼び、電子式のものを特にデジタル調節計と呼びます。

温度制御とは

温度調節器は現在値と目標値が一致するように制御しますが、制御対象の特性や温度調節器の制御の仕方により応答が異なります。図(2)のように一般的にはオーバーシュートさせずにできるだけ速く目標値に到達させることが求められます。図(1)のようにオーバーシュートさせてもよいから速く昇温したい場合や、図(3)のようにゆっくり昇温させたい場合もあります。

(1)オーバーシュートとアンダーシュートを繰り返しながら目標値に落ち着く応答

(2)適切な応答

(3)なかなか目標値に到達しない応答

温度制御の構成例

温度制御を行うための基本的な構成を示します。接続できるセンサ、操作器は温度調節器の機種により異なります。

温度調節器の原理

温度制御のためのフィードバック制御系の例を下図に示します。
温度調節器はフィードバック制御系の主要な部分が組み込まれています。温度調節器、制御対象に合わせた操作器、温度センサを組み合わせることによりフィードバック制御系を構築することができ温度制御を行うことができます。

フィードバック制御系の構成

制御対象の特性

温度制御で適切な制御を行うためには、温度調節器や温度センサを選ぶ前に、制御対象が熱的にどのような特性を持っているか、十分知っておく必要があります。

制御方法

[ON/OFF動作]

図のように、現在値が目標値より低いときは出力をONしヒータに通電。目標値より高いときは出力をOFFしてヒータを切る。というように、目標値を境にしてON、OFFを繰り返し、温度を一定に保つ制御方式をON/OFF動作といいます。また、操作量が目標値を境にして0%と100%の2つの値で動作することから、2位置動作とも呼ばれます。

[P動作(比例動作)]

現在値と目標値の偏差を小さくするため、偏差に比例した操作量(制御出力量)を出力する制御動作です。目標値を中心に比例帯を設定し、以下のルールで出力を決定します。
・現在値が比例帯の中にあるときは偏差に比例した操作量を出力
・現在値が低い方で比例帯から外れると100%の操作量を出力
・現在値が高い方で比例帯から外れると0%の操作量を出力
目標値付近では偏差に応じて出力を徐々に変化させるためON/OFF動作に比べて滑らかな制御ができます。ただし、比例動作単独で制御すると目標値からずれた(オフセットした)温度で安定します。

(例)温度レンジ0~400℃の温調器で比例帯を5%とすると、その幅は、温度換算で20℃となります。この場合、目標値を100℃とすると90℃までは出力は完全ONで90℃を超えるとOFFの期間が生じ、100℃でONとOFFの時間が同じ(50%)となります。

[I 動作(積分動作)]

偏差の大きさと継続時間に応じて操作量を増加(または減少)させる制御動作です。比例動作だけでは目標値とずれた(オフセットした)温度で安定しますが、比例動作に積分動作を組み合わせて使用すると、時間の経過に従い偏差が小さくなり現在値と目標値が一致するようになります。

[D動作(微分動作)]

外乱等による現在値の急変に対し、早くもとの制御状態にもどるように操作量を与える制御動作です。比例動作や積分動作は制御結果に対する訂正動作のため急変に対しては応答が遅くなります。微分動作はその欠点を補うもので、急激な外乱に対して大きな操作量を与えます。

[PID制御]

PID制御は比例動作、積分動作、微分動作を組み合わせたものです。比例動作でハンチングのない滑らかな制御を行い、積分動作でオフセットを自動的に修正し、微分動作で外乱に対する応答を早くすることができます。

[2自由度PID制御]

これまでのPID制御方式では、同一の調節部によって目標値に対する応答と外乱に対する応答を制御していました。そのため、調節部のPIDパラメータの設定において①外乱応答を重視する(一般的にはP、Iは小さく、Dは大きく設定する)と目標値応答が振動的になり(オーバーシュートが出る)、逆に②目標値応答を重視する(一般的にはPは大きく、Iも大きく設定する)と外乱応答が遅くなってしまい、両方の応答性を同時に満足することができないという欠点がありました。
2自由度PID制御は目標値応答と外乱応答時の異なる応答に対し、それぞれに良好な応答ができるようにした制御方式です。

●PID制御

外乱応答を良くすると目標値応答が悪くなる

目標値応答を良くすると外乱応答は悪くなる

●2自由度PID制御

目標値応答、外乱応答の制御性能を両立できる動作


最終更新日:2024年04月22日