植物は、いまこんな時代だからこそ、より求められているのかもしれません。観葉植物は、ときに私たちが気づかないうちに心身の健康を向上させてくれます。
自然に満ちた部屋の中で、呼吸が楽になった、集中力が上がった、幸せな気持ちになった、と思ったことはありませんか?これらの植物からの恩恵は、最近発見されたものではなく、古くから人間のそばにあったものです。そこで、園芸の専門家たちが解説してくれた、観葉植物による環境改善や治療効果などをご紹介します。
Photos: Getty Images Translation: Ai ono From Prevention
1. 植物は空気をキレイにしてくれる
観葉植物は、一般的な毒素やホルムアルデヒドやベンゼンのような室内汚染物質を空気中から除去するのに役立つことが、研究で明らかになっています。実際に行われたある研究では、アナナスが12時間で(研究対象8種の内)6種の揮発性有機化合物を80%除去し、ドラセナはアセトン(ネイルリムーバーに使われる刺激性化合物)を94%除去したそうです。
「植物の空気清浄能力は、植物の大きさ、室内空間の広さ、空気中の毒素の量などにもよりますが、大きな部屋であれば中〜大の植物を6〜8本ほど置けば十分に空気の質の違いを感じることができるでしょう」と話してくれたのは、ラトガース大学の園芸療法プログラムでアソシエイト・ディレクターを務めるゲイリー・L・アルトマン氏。
「植物の効果を最大限引き出すためには、葉を清潔に保血、埃がつかないようにしてください。また、定期的に屋外に出し、自然の日光で”充電”させてあげましょう」。
2. 植物はどんな部屋も心地よくしてくれる
観葉植物は空間に彩りや活気をもたらしてくれるだけでなく、物理的にも心地よい環境に変えてくれます。「植物は、室内の相対湿度を上げ、騒音を減らし、目隠しの役割を果たし、日当たりのいい窓の側に置いて日除けにすれば温度の調整もしてくれます」とアルトマン氏。
空間を家具や雑貨で埋めてしまう前に、その部屋でどう感じたいか、その雰囲気を実現させるために植物をどのように役立たせることができるのか、少し時間をかけて考えてみるのも良いかもしれません。
3. 植物は精神的な幸福感を高めてくれる
観葉植物は、メンタルヘルスにも良いもの。例えば、ノルウェーにある心臓や肺の疾患のリハビリセンターでは、共有エリアに新たに28個の植物を置いたところ、そのエリアを使った患者は(機会のなかった患者と比較して)、4週間後には幸福度が大幅に向上したことが研究で報告されています。
「私たちは、地球上の木々や植物に囲まれた草原の中で進化してきました」と話すのは、ニューヨーク植物園の園芸療法インストラクターやウィローウッド樹木園の園芸監督を務めるジョン・バーン氏。「植物で心を落ち着かせることができるのは、不思議なことではありません。古くから、植物は私たちの心身を満たしてくれていたのです」。
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4. 植物は達成感を感じさせてくれる
別の研究では、介護施設の居住者に植物を植えてもらい、自宅での世話の仕方を学んでもらったところ、生活の質が向上したことがわかりました。これは、達成感や植物に思い入れができたためではないかと研究者は説明しています(中には、植物に話しかけたり、歌を歌ったひともいるそうです)。
「自分で何かをして所有権を持つようになると、それを成し遂げることで自信をみなぎらせることができます」とニューヨーク大学のラスク・リハビリテーション医学研究所の園芸療法マネージャーのグウェン・フリード氏。
「私の経験では、自分で何かを植えれば、より丁寧に世話をして育てるようになります。育てるということは、人間の経験の一部であり、喜びをもたらしてくれるのです」。大声で思いきり歌いながら水やりをすることはいいリラックスになるかもしれません。
5. 植物はストレスを忘れさせてくれる
「植物を植えて、積極的にお手入れをすることは、生活のなかで起こる厄介でストレスフルなことを忘れ、今この瞬間に集中する機会を作ってくれます」とアルトマン氏。「これは、私たちと、私たちの精神的な健康に役立つことです。植物だって大切にされたら喜んでより良く成長しますし、そこから身体的な健康にもメリットが生まれます」。
ガーデニングの初心者は、日当たりの良い部屋なら多肉植物から、一般的な明るさの部屋ならフィロデンドロンから始めることをアルトマン氏は勧めている。「最初は上手くいかずに死なせてしまったとしても、問題ありません。また挑戦して見てください」とアルトマン氏。「最高の庭師や園芸家たちも過ちから学び、教訓を得てきたのです」。
6. 植物は生産性を向上させてくれるかも
エクセター大学の研究によると、何もないオフィスに植物を置いたところ、従業員の生産性が15%も向上したのだといいます。「植物はかつて(そして現在も)人間の生存に不可欠でした」とアルトマン氏。「今日、植物との生来の繋がりは、ストレスの軽減と、安心感と幸福感の向上で感じることができ、それが今度は個々の創造とタスクへの集中力に影響してくるのです」。
さらに、『Journal of Environmental Psychology』に掲載された研究によれば、緑の多いオフィスで難しい認知作業を行った大学生は、植物のないオフィスにいた学生よりも注意力が長続きしたとのことです。
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7. 植物は回復を促してくれる
「植物との親密な関係は、病気や怪我からの回復を早めることにも役立ちます」とアルトマン氏は説明しています。「植物に囲まれることで、私たちは自然で生き生きとした場所を作ることができ、安心だと感じることができるのです」。
実際、カンザス州立大学の研究者たちによれば、部屋に植物がある患者とない患者を比較すると、前者は鎮痛剤の量が少なくて済み、血圧や心拍数は低く、手術後の不安や疲労も少なかったことがわかっています。また、植物の中には物理的な治癒効果を持つものもあります。例えば、アロエベラは日焼けなどの皮膚の炎症の治療に使うことができます。
8. 植物は治療にも役立つ
同じように、植物を育て世話をすることは、園芸療法の回復過程でも成果を上げています。「園芸療法は、植物を活かしながら回復の過程を整理し、健康治療計画に取り組んでいきます。専門家は、治療を受ける人が達成でき、測定可能な目標を設定します」とバーン氏。「ここで立てた目標は、治療チームが特定してくれる問題や障害を克服することに役立ちます」。
アメリカ園芸療法協会によれば、園芸療法は心理的問題(PTSDなど)、身体的問題(失ったスキルの回復など)、仕事での努力(問題解決など)に役立たせることができるとのことです。植物の水やりに不満を言いたくなったときは、植物が与えてくれるすべてのことを思い出してみてはいかがでしょうか。