半幅帯はおしゃれの選択肢のひとつ
着物スタイリストである私の立場は、「着物はおしゃれ着」。美しい着姿の発信を本分としており、日常着や作業着として着物を捉えることはありません。
個人的にも、着物はお出掛け用で、そのなかで半幅帯を選ぶのは、少し個性を出したいときや、締め付けを感じず長時間楽しみたいとき。
つまり、半幅帯も普段着というより、おしゃれの選択肢のひとつと考えています。
多様な結び方で個性を出せる半幅帯
半幅帯のコーディネートは、引き算の難しさがあると感じます。また、楽であることは着くずれやすさと表裏一体。
気軽な印象と裏腹に、着つけや所作に気を配らなければ使いこなせません。けれど一筋縄でいかないところが、かえって魅力的でもありますよね。
そんな玄人好みするアイテムの、一番の見どころは後ろ姿です。半幅帯の帯結びほど、その人を表すものはないと私は思います。
文庫結びを好むのはふんわり可愛い印象の方が多く、一方、粋でクールな好みの方は貝の口や矢の字を選びます。
その中間の方、テイストをはっきり出したくない方には割り角出しが人気ですね。はい、私はもちろん貝の口派です(笑)。
なごや帯のお太鼓結びが規定演技だとしたら、多様に結んで個性を出せる半幅帯には、自由演技の面白さがあります。
今後も自分らしく美しい着姿を目指します。
おおたけ・えりこ◉2006年、株式会社くるりに入社し、広告などビジュアル全般を担当。’13年に独立し、スタイリストおよび着つけ師として広告、雑誌、書籍、CMなどで活躍中。女優からの信頼も厚く、『半幅帯の本』(河出書房新社)など著書も多数。
撮影=森山雅智 ヘア&メイク=金田恵理子
「美しいキモノ」2020年秋号より