2023年06月26日 更新
品質管理の定義とは?業務内容や手法など基本知識を解説します
製造業をはじめとした分野で、品質管理は業績向上につながる重要な役割を担っています。では、品質管理で思ったような成果が出ない場合、どのような改善策を講じることができるのでしょうか。この記事では「品質管理」の定義を含めて、業務内容や手法などを解説します。品質管理に課題を抱えている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
品質管理とは
そもそも、品質管理とは何なのでしょうか。ここでは、品質管理の定義や品質保証との違いを解説します。
品質管理の定義
品質管理とは、製品を製造する工程で、製品の品質を管理する取り組みのことです。英語ではQuality Controlを略し、「QC」とも呼ぶこともあります。安定した製品をつくるために、品質管理は必須の工程です。不良品や不適合品の発生などを未然に防止し、安定した品質を維持するために品質管理が行われます。
品質保証との違い
「品質管理」と類似する言葉に「品質保証」がありますが、両者の意味は異なります。品質管理は、製品の品質を一定以上に保つために、生産から販売まで一連の製造工程を売り手側が管理することを指します。
一方で品質保証とは、完成した製品が規定の品質を保っていることを、買い手に対して保証するものです。品質の保証にフォーカスしている点が特徴的です。
品質管理における3つの管理
品質管理では「工程管理」「品質保証」「品質改善」の3つの管理を行います。それぞれの内容について解説します。
1. 工程管理
工程管理とは、確かな手順や生産計画を決めて納期までに効率よく製品が生産されるよう、各工程の進捗や実績などを管理することです。具体的には、以下の4つの業務を工程管理で行います。
- 作業手順の標準化
- 品質管理と作業訓練
- 設備の維持管理
- 工程を正常に保つ管理
工場での生産・日程計画、実行時の問題を調整する役割が工程管理にあります。
2. 品質検証
品質検証とは、製品の原材料や部品などの材料、生産工程などを検査し、製品の品質が確かなものであることを検査することです。具体的に以下の2つの業務を品質検証で行います。
- 製品品質の検査
- 工程能力や管理状態の監視
顧客が満足する品質を満たしているか、品質を保った製品を生産するための工程が適切かなどを検証・監視します。
3. 品質改善
品質改善とは、発生した不具合の原因を突き止めて再発防止策を立てることです。将来、発生する可能性のある不適合を、未然に防ぐための改善も品質改善に含みます。具体的には以下の2つの業務を行います。
- 不適合の再発防止
- 不適合の未然防止
問題解決の際には、品質管理のストーリーに沿って問題点を明らかにします。製品や製造プロセスのリスクを未然に防ぐことも重要です。
品質管理の業務内容
品質管理は具体的にどのように行われるのでしょうか。品質管理の業務内容を詳しく解説します。
品質管理の業務は多岐にわたる
品質管理の業務内容は、以下のように多岐に渡ります。
- 製品の検査
- 検査機器の調整
- 異常が発生した場合の原因究明・対策
- 原材料や製品の検査 など
品質管理の業務内容は、製品の製造工程における品質管理だけではありません。製造部での品質教育の実施も業務内容に含まれます。
QC工程表・標準書の作成
QC工程表とは、製品作りの全工程のフローを記載した表のことです。別名「QC工程図」とも呼ばれています。QC工程表は、標準書作成時の基準として使用されるほか、作業工程内の問題点を把握する役割があります。
ここでいう「標準書」とは、誰が作業しても同じ製品ができるよう、作業手順を定めた文書のことです。QC工程表・標準書の作成や維持管理なども品質管理の業務に含まれます。
ISO(国際標準化機構)関連事務
ISO(国際標準化機構)とは、国際規格を策定している機関です。この機関では、世界共通の規格として基準を定めており、ISO関連事務では品質管理も行なっています。
「JIS(日本工業規格)」は、外国語で作成されているISO規格を、日本語に訳したものです。基本的にJISはISOに整合するよう、作成されています。しかし、JISの製品の一部はISOと規格が異なる場合があります。
品質管理の手法
品質管理を円滑にするためにも、主な手法を確認しておきましょう。
PDCAサイクルを回す
品質管理は、一度改善したからといって終わりにはなりません。何度も繰り返しPDCAサイクルを回すことで、品質の維持や向上が可能です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取ったものです。PDCAサイクルを回すことで、品質管理を継続的に改善できます。
QC7つ道具を活用する
QC7つ道具とは、数値データを集計・分析・改善するために用いられる7つの品質管理ツール群のことです。具体的には、以下がQC7つ道具と呼ばれています。
- グラフ:数値の変化や比較を可視化
- チェックシート:データ記入用のシート
- パレート図:不具合の原因を可視化
- ヒストグラム:データの分布を量的に可視化
- 特性要因図:課題や問題の要因を分析
- 散布図:2データの関連性を分析
- 管理図:バラツキを判断し、工程を管理
大量のデータを分析し、製造現場の具体的な課題を洗い出すうえでQC7つ道具は有用です。
SQC(Statistical Quality Control)を用いる
SQC(Statistical Quality Control)とは、「統計的品質管理」を意味する言葉です。SQCは、従業員や材料、機械装置が品質に与える影響を管理・改善することを目的としています。 目的を達成するために、統計的なデータを収集して解析を行い、品質基準を決定して品質管理を行います。
適切な品質管理に向けた重要な要素
適切な品質管理を行うには、いくつかの要素を押さえる必要があります。ここでは、品質管理で特に重要な要素として、以下の5つを解説します。
- IE(インダストリアルエンジニアリング)
- 品質管理の5S
- 品質管理の4M
- TQC(Total Quality Control)
- TQM(Total Quality Management)
IE(インダストリアルエンジニアリング)
IE(インダストリアルエンジニアリング)とは、「生産工学」あるいは「産業工学」を意味する言葉です。品質管理において、製品の質・量の両方を向上させるために、IEは重要な要素と考えられています。具体的には、以下の工程を工学的な手法に基づいて推進します。
- 予算や原価の管理
- 生産技術や設備
- 資源の開発
- 改善 など
品質管理の5S
品質管理の5Sとは、現場環境を適切に維持管理するための考え方を端的に示した概念です。具体的には、以下の内容で品質管理の5Sが構成されます。
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- しつけ
この5Sを徹底することは、作業のミスやムダの削減、業務の効率化などにつながります。5Sは、結果的に品質の向上にも役立つ重要な要素です。
品質管理の4M
品質管理の4Mとは、品質管理におけるリスク要因を4つの分類で行う方法です。具体的には、以下の4つの要素を指します。
- 人(Man)
- 機械(Machine)
- 材料(Material)
- 方法(Method)
4つの要素のうち、いずれかが欠けると適切な品質管理はできません。どの4Mも一様に活用することで、問題点の発見や品質管理のポイントがわかります。
TQC(Total Quality Control)
TQC(Total Quality Control)とは「全社的な品質管理」のことです。TQCの推進により、ノウハウを習得できたり、顧客目線での商品・サービスを提供できたりする組織体制の構築が可能になります。
品質管理は、一部の従業員だけで意識的に取り組んでも、高い効果は得られません。品質管理で成果をあげるには、社内が一丸となって取り組む必要があります。
TQM(Total Quality Management)
TQM(Total Quality Management)とは、前述のTQCで提唱された品質管理に関する取り組みを経営戦略へ適用したものを指します。TQCでは、現場の従業員が主体となって品質管理を実施する点が特徴的でした。一方で、TQMは経営から現場へ品質管理をトップダウンで実施します。
品質管理のポイント
品質管理を適切に行うためには要点を押さえておく必要があります。品質管理のポイントを2つ解説します。
品質管理をIT化する
近年、製造業のさまざまな部分でIT化が進められています。品質管理においてもIT化の推進が顕著です。品質管理をIT化するメリットは数多くあります。特に、部門間でデータの共有がしやすくなり、社内連携に役立つ点が注目されている状況です。製造現場の見える化が進めば、品質の最適化にもつながると期待されています。
品質管理におけるデータ活用
製造現場のデータを蓄積できれば、集めたデータを品質管理にも活用できます。たとえば、集めたデータを元に、作業工程で発生しているムダや欠陥を発見できれば、生産性の効率化や精度の向上につなげることが可能です。今まで従業員の勘や経験に頼っていた部分をデータ化できれば、属人的な作業の均一化や効果的な品質管理に役立つでしょう。
まとめ
品質管理とは、製品の製造工程で品質を管理する取り組みのことです。品質管理の業務内容は多岐に渡りますが、安定した製品をつくるためには全社をあげた取り組みが欠かせません。
富士通Japan株式会社では、品質管理をはじめ、さまざまな経緯課題を抱える企業のサポートに取り組んでいます。これまでに培った業種・業務ノウハウや、ICT業界の最前線で培ったテクノロジーに関して、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて品質管理の課題解決に取り組みます。品質管理に関して課題を抱えている企業の方は、ぜひご相談ください。
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著者プロフィール
富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
沖津 里枝
【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。
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