世界人口が2022年11月に80億人に達し、これに基づいてUNFPA(国連人口基金)が「世界人口白書2023」を4月に発表。7月、日本語抜粋版も発表される。
80億人を超えたのは史上最多。日本は少子化が問題視されているのに、世界規模で見ればこれまでに経験のない人口を抱えている。なにより、忘れてはならないのは、人口は単なる数ではなく、「いのち」を生む「女性」ひとりひとりの尊厳と深く結びついているということだ。
「世界人口白書2023」を元に、数字だけでは見えてこない、「いのち」と「女性」の現実にフォーカスしたい。
監修/UNFPA(国連人口基金)駐日事務所
1.世界の人口が80億人に達した!これは史上最多
「世界人口白書2023」によれば、2023年の世界人口は80億4500万人となり、前年に比べて約7000万人増加。
UNFPA事務局長ナタリア・カネムは声明文で、「問題は、人口が多すぎるか、少なすぎるかではありません。望む数の子どもを希望する間隔で生めるという基本的人権を、すべての人が行使できているかどうかです」と述べた。
2.では、日本の状況は…
日本は1億2330万人で世界第12位(2022年は1億2560万人で世界第11位)となり、2022年に比べ230万人減少。
低い出生率(合計特殊出生率 は 1.26)が、少子高齢化や経済不安の要因のようにときに語られ、そのたびに「いのち」や「女性」が社会経済の道具のように感じてしまう人も多いのではないだろうか。
そうしたもやもやした気持ちに対して、ナタリア・カネムは次のような視点を示した。
「少子高齢化が進行している国々では、労働市場におけるジェンダー平等を達成し、子育て支援を拡大し、労働力不足を補うために移民を受け入れることで、より生産性を高めることができます」
3.世界の女性や少女の24%は性行為を拒めず、11%は避妊に関する決定権を持っていない、その事実が語ること
「世界人口白書2023」の調査によると、世界全体では、すべての妊娠のうちほぼ半数が意図しないものだという。望まない妊娠が半数という点にさえ愕然とするけれど、さらには、年間50万件もの出産が10歳から14歳の少女たちだという。
「妊娠できるということ自体を本人たちが理解していないかもしれないほど若い年齢です。性行為に同意するには彼女たちはあまりにも若すぎるため、意思とは関係なく結婚させられたか、性暴力の被害に遭ったか、もしくはその両方の場合もあります」(ナタリア・カネム)
「一方で、もっと多くの子どもを望んでいるのに、実現できていない女性たちも多数います。希望する数の子どもを実際に持つことができている女性の割合は、低・中所得国の多くで4分の1ほどと、低い水準にとどまっています」(ナタリア・カネム)
4.紛争や災害などで人道危機下にある地域に対して、「いのち」と「女性」を守るために日本が支援していること
日本政府は2022年度の補正予算でUNFPAに2,000万ドル以上の資金提供を決定。この支援は、ウクライナ、スーダン、アフガニスタン、エチオピアなどの18カ国で、人道危機下でよりもろい女性と少女に、質の高いヘルスケア・サービスを提供するために活用されることになる。
ウクライナへは、戦争によって産科病院を含む医療施設が軍事攻撃を受けているめ、 産科医療に必要な物資・サービスの安定供給を、内戦の起きたスーダンの青ナイル州などを支えるために、リプロダクティブ・ヘルスと乳幼児ケアを専門とする助産師を新たに育成するなど、これまでも日本政府はUNFPAを支援してきた。
5.2050年までに予測される人口増加の半分はアフリカ・アジアの8カ国によるものとなると推定
「世界人口白書2023」では、世界人口の3分の2が少子化社会で暮らす一方、2050年までに予測される人口増加の半分はアフリカ・アジアの8カ国によるものとなり、国別人口ランキングが大きく入れ替わると推定。
2023年最新の世界人口ランキングでは1位インド、2位中国、3位アメリカ。
6.80億人中の55億人は、1日約10ドルで生活。世界の人口分布と気候変動との関連性
世界人口の約70パーセントは、(気候変動に大きな影響を及ぼしている)二酸化炭素排出に影響を与えるにはあまりにも低い所得で暮らしている。つまり、人口の増加が気候変動の主要な原因ではないということ。
「世界人口白書2023」によると、合計出生率が最も高い国はニジェールで6.7。次いで、チャド、コンゴ民主共和、ソマリア、中央アフリカ、マリ、アンゴラ、ナイジェリアと続く。
出生率が高い国々はアフリカに集中。そのアフリカは二酸化炭素の排出量は世界全体の約4パーセントに過ぎないにもかかわらず、洪水や干ばつなど気候変動の影響を最も被っているのだ。
ここで、もう一度、冒頭のナタリア・カネムの言葉を思い出したい。
世界人口デーは、人口の増減を通して、世界の女性たちが自分の望むかたち、つまり、個人の権利と選択の保障が果たせているのかに思いを巡らせよう。すべての女性たちに対してそれが実現できたとき、SDGsの目標が達成でき、そして地球環境を守ることにつながるのではないだろうか。