過去最高の7兆7千億円に膨らんだ2024年度防衛予算の概算要求では、イージス・システム搭載艦や新型護衛艦の建造など当初計画より経費が大幅に増える例が相次いだ。防衛省は円安や世界的な物価高、機能強化などを理由に挙げるが、省内からも見積もりや査定の甘さを指摘する声が上がる。前例のない政府の増額方針を受け「規模ありき」で予算編成が進めば、さらなる防衛費膨張につながる可能性もある。
政府は昨年末、23~27年度の防衛費を総額43兆円程度とする防衛力整備計画を発表。岸田文雄首相は国会審議で「防衛強化のため必要な経費を積み上げた結果」と何度も強調していた。
計画では防空能力の柱として、新イージス搭載艦2隻の建造費などに計4千億円を充てた。だが23年度当初予算ですでに2208億円を計上しており、今回の要求額の3797億円を加えると、計6千億円を超える。防衛省は計画から8カ月あまりで1・5倍に膨らんだ理由として、円安や資材・労務費の高騰のほか、装備の機能強化を挙げる。
新型護衛艦の建造費も、敵基地攻撃能力(反撃能力)に使う長射程ミサイルの搭載など設計を変更したとして、整備計画時点から1隻あたり約200億円増加。だがそもそも護衛艦への長射程ミサイル搭載は計画で明記されていたことだ。
輸送ヘリ「CH47」17機の取得費も1機あたり約200億円に上り、関係者によると、防衛費の上振れに伴い当初予定から取得数を減らした結果、1機あたり約50億円高くなったという。予算編成の経験がある防衛省幹部は「最新鋭のステルス戦闘機でも1機150億円ほど。防衛予算の膨張を受けた、企業の便乗値上げではないのか」と査定の甘さを指摘する。
自民内では「43兆円」に収まるのかとの声が早くも漏れる。党政調幹部は「物価高は簡単には収束せず、このままだと(43兆円の)2割は確実に上回る」と断言。同省は装備品のまとめ買いなどで削減を図る方針だが、国防族からは「足りなければ、社会保障費を削るなど政府全体で財源を出せばいい」(中堅議員)などとさらなる増額要求も出始めている。(鈴木誠)
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