自己発見取引とは?メリット・デメリット、媒介契約ごとの取引可否

自己発見取引とは メリット・デメリット

売却したい不動産があり、自分で買主を見つけて「自己発見取引」をするか、不動産会社に仲介を依頼するか、迷っている方もいるかもしれません。自己発見取引には仲介手数料がかからないという利点があります。

本記事では、自己発見取引の概要やメリット・デメリット、媒介契約ごとの可否、基本の流れなどについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • 自己発見取引の概要とメリット・デメリット
  • 媒介契約の種類と自己発見取引の可否
  • 自己発見取引の基本的な流れ
「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
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1.自己発見取引とは?

家と人の模型

不動産売買の「自己発見取引」とは、売主が自分で買主を見つけ、個人間で直接取引することです。買主を見つける具体的な方法には、「親族や友人に相談する」「インターネット上で探す」などが挙げられます。

一般的な不動産売買では、売主が不動産会社に依頼し、買主を見つけてもらったり、各種手続きをしてもらったりします。一方、自己発見取引では、不動産会社を介しません。

ただし、不動産会社に販売活動を依頼したものの、あとで親族などから「不動産を購入したい」と相談されるパターンも想定されます。

このような場合、不動産会社と契約を結んでいても、契約の種類によっては自己発見取引が可能です。詳しくは、「4.自己発見取引は可能?媒介契約の種類別に解説」をご覧ください。

2.自己発見取引のメリット

本章では、自己発見取引をする場合の以下のメリットについて紹介します。

2-1.仲介手数料が不要

自己発見取引の代表的なメリットは、不動産会社に「仲介手数料」を支払う必要がないことです。

仲介手数料とは、不動産の売買契約が成立したときに支払うもので、不動産会社の販売活動に対する成功報酬や、各種手続きの代行費用が含まれます。

仲介手数料は、宅地建物取引業法に基づき、以下のとおり上限が定められています。

売買価格 法定上限額(税込)
売買価格が400万超の部分 売買価格×3.3%
売買価格が200万円超~400万円以下の部分 売買価格×4.4%
売買価格が200万円以下の部分 売買価格×5.5%

参考:“宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額”. 国土交通省. (参照2024-03-26)をもとに、HOME4Uが独自に作成

なお、上記の計算式では、3つに分けられた各部分の仲介手数料の上限を計算して、それらを足す必要があるため、算出にやや手間がかかります。

そこで、不動産の売買価格が400万円(税抜)を超える場合には、以下の速算式を用いて仲介手数料の上限額を求めるのが便利です。

仲介手数料の上限金額=売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税

仮に3,000万円(税抜)の不動産を売却した場合、不動産会社に最大「3,000万円×3%+6万円+消費税(10%)=105万6,000円」の仲介手数料を支払わなければなりません。

自己発見取引なら、上記のようなまとまった額の支出を削減できます。

参考:
“宅地建物取引業法第四十六条”. e-Gov法令検索
“宅地建物取引業者が宅地または建物の売買等に関して受けることができる報酬の額”. 国土交通省

仲介手数料については、「不動産売却の「仲介」とは?買取との違いや手数料の相場を解説」も併せてご覧ください。

2-2.取引相手を自分で選べる

自己発見取引なら、誰に不動産を売却するのかを自分で決められます。

素性が明らかな方や、コミュニケーションを円滑にとれる方を取引相手に選べば、取引内容を直接交渉できたり、トラブルが起こったときに協力して解決できたりするでしょう。

一方で、不動産会社に販売活動を依頼した場合は、不動産会社が取引相手を選びます。面識のない相手と取引することになるため、「取引物件についてクレームを入れられるのではないか」と心配になる方もいるかもしれません。

3.自己発見取引のデメリット

契約

金銭面などでメリットがある自己発見取引ですが、以下の点に注意が必要です。

  • トラブルが起こりやすい
  • 手続きの手間が増える
  • 買主が住宅ローンを利用する場合は、取引できない可能性も

ここでは、自己発見取引の3つのデメリットを詳しく紹介します。

3-1.トラブルが起こりやすい

不動産売買は、そう頻繁に経験するものではありません。したがって、売主も買主も、不動産取引に慣れていないケースが大半でしょう。

自己発見取引には、売主と買主が直接交渉できるメリットがありますが、取引に慣れない者同士だとトラブルに発展しやすい点がデメリットです。

また、家族や友人などの知り合いを取引相手とする場合、意見を言いやすい関係だからこそ、無理な要求をされる可能性があります。

よくあるトラブル事例は、以下のとおりです。

  • 取引内容の認識が異なり、トラブルになった
  • 極端な値引きを要求され、トラブルになった
  • 契約書の内容に不備があり、トラブルになった

その他のトラブル事例については、「【土地の個人売買】リスクやトラブルを回避し安全に取引するには?」でも解説しているので、併せてご覧ください。

3-2.手続きの手間が増える

自己発見取引は、不動産会社に仲介手数料を支払わなくて良い分、取引相手とのやりとりをはじめとする手続きの手間が増えます。

なかでも、契約書の作成や必要書類の準備は、負担が大きいかもしれません。契約書には、以下のような項目を正確に記載する必要があります。

  • 売買物件の情報
  • 売買金額
  • 支払期限
  • 支払方法
  • 売買物件を引き渡すタイミング
  • 登記に関する取り決め

契約書に記載のない傷や欠陥、アスベスト(石綿)などの瑕疵(かし)が発見された場合は、損害賠償請求などのトラブルに発展する可能性があるため、契約書の作成には細心の注意が必要です。

なお、「自己発見取引をしたいが契約書を作成するのは難しい」という方は、報酬を支払って司法書士や行政書士に依頼する方法もあります。

物件の瑕疵については、「契約不適合責任(瑕疵担保責任)とは?2020年の法改正による変更点やトラブル回避のポイントを解説」「「隠れた瑕疵」のリスク回避のため売主が知っておくべき3つの対策」も併せてご覧ください。

3-3.買主が住宅ローンを利用する場合は、取引できない可能性も

住宅ローンを利用する際には、金融機関から「重要事項説明書」の提出を求められます。重要事項説明書とは、取引物件や取引条件に関する内容を記載した書面です。

宅地建物取引業法により、重要事項の説明や重要事項説明書の作成は、宅地建物取引士(宅建士)の役割と定められています。

そのため、自分で買主を見つけても、その買主が住宅ローンを利用することになれば、宅地建物取引士(宅建士)に重要事項説明書の作成を依頼しなければなりません。

自己発見取引の買主が宅地建物取引士(宅建士)なら、特に問題はありませんが、多くのケースでは、重要事項説明書を入手するために、宅地建物取引士(宅建士)がいる不動産会社に仲介を依頼することになります。

参考:“宅地建物取引業法第三十五条”. e-Gov法令検索

4.自己発見取引は可能?媒介契約の種類別に解説

家と虫眼鏡

不動産取引において、仲介に入ってもらう不動産会社と取り交わす契約を「媒介契約」といいます。媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、自己発見取引の可否が異なります。

媒介契約名 自己発見取引の可否
一般媒介契約
専任媒介契約
専属専任媒介契約 ×

本章では、媒介契約の種類別に、特徴や向いている方を紹介します。

  • 一般媒介契約の場合
  • 専任媒介契約の場合
  • 専属専任媒介契約の場合

4-1.一般媒介契約の場合

一般媒介契約では、自己発見取引が可能です。複数の不動産会社と媒介契約を結べたり、契約期間の制限がなかったりと、売主の自由度が最も高い契約方法です。

一方、不動産会社から見ると、最終的に自己発見取引になる、または他社に流れることで自社が利益を得られない、といった可能性があり、積極的な販売活動をしにくい面もあります。

また、「明示型」と「非明示型」という2種類の契約方法があり、両者の違いは以下のとおりです。

明示型 不動産会社に対し、ほかに媒介契約をしている不動産会社の名称・所在地を知らせる義務が「ある」
非明示型 不動産会社に対し、ほかに媒介契約をしている不動産会社の名称・所在地を知らせる義務が「ない」

4-1-1.一般媒介契約が向いている方

一般媒介契約が向いているのは、以下のような方です。

  • 自分で買主を見つけられる可能性がある方
  • 売却する物件は需要が高いと思う方
  • 複数の不動産会社を比較したい方
  • 複数の不動産会社とのやりとりを管理できる方

一般媒介契約では、不動産会社から売主への活動状況報告が義務付けられていません。したがって、売主が自ら不動産会社に進捗状況を照会する必要があります。

複数の不動産会社と一般媒介契約を締結した場合には、やりとりの負担が大きくなる可能性があるでしょう。

4-2.専任媒介契約の場合

専任媒介契約も、自己発見取引ができます。

一般媒介契約との違いは、不動産会社との契約が1社のみに限られる点です。売主は、不動産会社とのやりとりの負担を抑えられます。

専任媒介契約の契約期間は最長3ヵ月であり、期間が経過した場合は再契約をするか、ほかの不動産会社と契約するかを選択可能です。

ただし、専任媒介契約の場合、不動産会社選びに失敗すると、成約までに時間がかかるかもしれません。自己発見取引での成約の見込みが少ない方は、注意が必要です。

なお、専任媒介契約を結んでいたものの、自己発見取引で成約した場合には、仲介手数料は発生しませんが、営業経費の支払いを求められることがあります。

4-2-1.専任媒介契約が向いている方

  • 自分で買主を見つけられる可能性がある方
  • どの媒介契約を選べば良いか迷っている方
  • 信頼できる不動産会社がある方
  • こまめに活動状況報告をしてほしい方
  • 早めに成約させたい方

成約すれば、不動産会社が確実に仲介手数料を得られる専任媒介契約では、販売活動に力を入れてもらいやすいため、早期に買主が見つかる可能性も高いでしょう。

4-3.専属専任媒介契約の場合

3つの媒介契約のなかで最も拘束力が強い専属専任媒介契約では、自己発見取引はできません。

仮に自分で買主を見つけても、不動産会社を通す必要があり、仲介手数料が発生します。売主と買主の間で勝手に取引してしまうと、違約金が発生する可能性もあるため、注意が必要です。

専属専任媒介契約は、専任媒介契約と同様に、契約できる不動産会社は1社のみで、契約期間は最長3ヵ月です。ただし、活動状況報告は、専任媒介契約が2週間に1回以上であるのに対し、専属専任媒介契約は1週間に1回以上と義務付けられています。

4-3-1.専属専任媒介契約が向いている方

専属専任媒介契約が向いているのは、以下のような方です。

  • 自分で買主を見つけられる可能性がない方
  • 売却活動の手間を極力減らしたい方
  • 信頼できる不動産会社がある方
  • こまめに活動状況報告をしてほしい方
  • 早めに成約させたい方

自己発見取引の可能性がない方は、専属専任媒介契約を選ぶとよいでしょう。

はじめに専属専任媒介契約で依頼し、3ヵ月経過後に一般媒介契約や専任媒介契約へ移行するという選択肢もあります。

5.自己発見取引の基本の流れ

最後に、自己発見取引をする場合の基本的な流れを、以下の4ステップに分けて紹介します。

  1. 売買価格を設定する
  2. 買主と取引条件を交渉する
  3. 売買契約書を作成し取り交わす
  4. 物件を引き渡す

5-1.売買価格を設定する

自己発見取引では、自分で不動産の売買価格を決められます。

ただし、高すぎる価格では買主が見つからず、低すぎる価格では売主が損をしてしまいます。そのため、相場を目安に設定するのが一般的です。

売買価格を設定するうえで役立つ情報は、「不動産の売り出し価格の決め方は?売却価格で失敗しないための手順と3つの注意点」で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

5-2.買主と取引条件を交渉する

親族や友人に相談する、またはインターネット上で探すなどして買主を見つけたら、取引条件を交渉します。

注意が必要なのは、買主からの値下げ交渉です。どこまでなら値下げできるのか、あらかじめボーダーラインを決めておくとよいでしょう。

5-3.売買契約書を作成し取り交わす

お互いが納得した取引条件のもと、売買契約書を作成します。不明な点は、インターネットなどで情報収集をしながら進めましょう。

そして、売買契約書を作成したら、売主と買主が契約書の内容を確認し、捺印をして契約締結となります。

5-4.物件を引き渡す

契約を締結し、代金のやりとりを終えたら、売主から買主へ物件を引き渡します。

ただし、物件を引き渡したあとも、予期せぬトラブルが発生することがあります。しばらくの間は、物件に不便がないか、隠れた瑕疵がないかを確認するなど、適切な気遣いとフォローを心がけましょう。

なお、不動産の売却によって発生する税金については、「土地売却時の税金はいつ払う?納税スケジュールと節税方法を解説」をご覧ください。

まとめ

自己発見取引とは、不動産会社を介さずに、売主と買主が直接取引をすることです。自己発見取引なら、不動産会社に仲介手数料を支払う必要がなく、取引相手も自分で決められます。ただし、トラブルが生じやすい点や、手続きの手間が増える点には注意が必要です。

また、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約のうち、専属専任媒介契約では自己発見取引ができません。買主が住宅ローンを利用する場合も、自己発見取引ができない可能性があることを理解しておきましょう。

媒介契約の種類別の特徴や、自己発見取引のデメリットなどを踏まえ、不動産会社に仲介を依頼しようと考える方もいるかもしれません。その際には、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」の活用がおすすめです。

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