季刊うかたま
http://www.ukatama.net/
写真=高木あつ子 文=おおいまちこ
今回の耕す女子
- 東京都あきる野市東奏子さん(あずまかなこさん)
- 1979年生まれ。東京都大田区出身。東京農業大学卒。畑歴4年。夫と2人の子どもと4人家族。主婦業のかたわら、昔ながらの知恵を生かした暮らしぶりをブログで紹介。『布おむつで育ててみよう』(文芸社)、『捨てない贅沢』(けやき出版)を出版。
週末は家族4人で畑仕事
東京西部を走るJR五日市線の終点武蔵五日市駅。東奏子さんが、4年ほど前から家庭菜園用に借りている畑は、駅前ロータリーから歩いて2、3分の住宅地の一角にある。 60坪ほどの畑には、トウモロコシやキュウリ、トマトなど、何種類もの野菜がところ狭しと植えられている。奏子さんは、4歳になる希美ちゃんと1歳の翼作くんを傍らで遊ばせながら、夫の茂也さんとともに農作業に精を出す。週末は、もっぱらこんなふうに家族で一緒に畑で過ごすことが多いという。
「子どもを自転車で幼稚園に送り迎えするついでに畑に立ち寄ることもあるんですよ」
腐葉土をつくろうと、山間にある幼稚園の近くで、毎日、落葉をかき集め、自転車のかごに乗せて持ってきたりもしたが、「一生懸命集めたわりに、たいした量になりませんでしたね〜(笑)」。
「お腹がすいた〜」との希美ちゃんのリクエストに応え、畑のニラを使って「平焼き」をつくることに。ミニホットプレートで焼き始めると、次第に香ばしい香りが漂ってきた。よく野菜づくりを教わっている畑の地主の清水哲雄さんらも加わり、皆でひと休み。子どもたちが平焼きを頬張る姿が何ともかわいい!
一服した後は、雑草が生え始めた前作の畝(うね)をガスパワー耕うん機「ピアンタ」で耕して、次作の準備だ。
「家庭用ガスボンベでこれだけのパワー。安全だし扱いもラクでいい」と、奏子さん。
小回りがきくので、家庭菜園には心強い存在だ。奏子さんの影響で野菜づくりを始めた茂也さんも、今や奏子さん以上によく働き、農ある暮らしを楽しんでいる。
農家の暮らしに憧れて
東京とは思えないほど豊かな自然が残る東京・あきる野市。25歳で結婚。翌年、出産したのを機に、のんびりとした環境を求めてこの地に越してきた奏子さんだが、もともとは生まれも育ちも東京・大田区。生粋の下町っ子だ。
緑の少ない地域とはいえ、奏子さんの幼少の頃は、近隣には空き地が残り、虫捕りなどをして遊んでいたという。ところが、年々、開発が進み、わずかな空き地が次々に消えていった。そんな中、自然を守りたいという気持ちが芽生え、大学は、環境問題が学べる東京農業大学(森林総合科学科)に進んだ。
畑仕事の初体験は大学1年の夏休み。農業ボランティアで秋田県の農家に2週間滞在した。一粒の種から作物を育て、それを食する喜び。また、生活そのものを自らの手でつくり出す農家の暮らしに憧れ、その後も、春と夏の休みには全国各地の農家に滞在。農作業はもちろん、郷土料理やその土地の生活習慣などを教わった。
「野良着は動きやすくてシンプルなものが好き」だという。だから上着はいつもかっぽう着。日除けや汗対策のストールは、綿麻の生成りの生地を買ってきて、それを3等分して3枚つくったうちの1枚。「これは古くなってしまったお茶で染めました」。暑いときは熱中症対策で中に保冷剤を包んで使っている