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Ikegami TECH

2022.01.14

Ikegami TECH Vol.3 被写界深度と奥行き

被写界深度と奥行き

シリアスなドラマのワンシーン。手前の人物にフォーカスが合い、奥の人物はぼやけてよく見えない。
次のシーンでゆっくりと奥の人物にフォーカスが移動し、「犯人はこいつだったのか!」となる映像表現…よく目にしますよね。
ピントを合わせた被写体の前後で、ピントが合っているように見える範囲を”被写界深度”といいます。前述のシーンのように、ピントを合わせた被写体に対してピントが合っている範囲が狭い状態を「被写界深度が浅い」と表現します。
背景をぼかし主体となる被写体を浮き上がらせたい時などに、敢えて被写界深度の浅い状態を創るなど映像の奥行き表現によく使われています。

スポーツ中継でサッカーなどのボールが行き交う撮影ではどうでしょうか。もし「被写界深度が浅い」状態であれば、ボールを持つ選手が変わるたびに被写体を追いかけ、フォーカスを合わせる必要がありますし、他の選手はボケた映像になってしまいます。こうした場合は、全体的にフォーカスの合った「被写界深度が深い」映像が望まれます。
野球中継では、ピッチャーとキャッチャー(バッター)を1つの画面に収める、PC間ショットと呼ばれるショットがあります。
この場合、ピッチャーの投げる瞬間とバッターが打つ瞬間、両方にフォーカスのあった映像が必要ですので、一般的に被写界深度の深い状態で撮影します。

被写界深度の浅い写真(f1.4)
被写界深度の深い写真(f16)

では、この被写界深度の“浅い深い”はどの様に決まるのでしょうか。
1つは光が入ってくる入り口の口径の大きさが関係します。
ピンホールカメラをご存じでしょうか?
レンズの代わりに針穴の様な小さな穴を通して満遍なくピントが合った画を撮ることが出来る原始的な仕組みのカメラです。
光が通る穴が小さければ小さいほど被写界深度は深い、すなわちピントが合っている範囲が広くなります。
普段私たちが目にするカメラの多くは、「絞り」というカメラに取り込む光の入り口の大きさを変えて光の量を調節する仕組みを持っています。絞りのあるカメラでは、絞りを開ければ開けるほど被写界深度が浅い状態になります。
絞りはレンズで調節できるので、レンズの絞りを絞れば絞るほど被写界深度の深い、開ければ開けるほど浅い画となります。
絞りはf値として表現され、数字が大きいほど絞りは絞られる方向となります。(図1)

(図1)

深度と密接な関係にあるのが感度です。深度の深い画を撮ろうと絞りを絞り込むと、センサーに入り込む光の量が少なくなり映像が暗くなってしまいます。深度の深い映像を撮るには、少ない光でもしっかりと映像が表現できるように感度の良いセンサーが必要になってきます。
とても感度の良いセンサーを用いて、絞りによって変化する感度を同時にコントロールできれば、明るさを変えずに「深度」そのものをコントロールできるかもしれません。
また、被写界深度は絞り以外にも、焦点距離が短いほど深く、被写体との距離が遠いほど深くなるといった性質があります。
(詳細は割愛します)

映像の奥行感の表現という意味では、この深度だけでは無く、解像度も大きく影響しているようです。
最近出てきている8K映像は平面的な映像であるにもかかわらず立体映像の様に見えると言われています。これは、8K映像の持つ解像度によるものです。                
奥行き感をコントロールするには、深度・感度のほかにさらに複雑なパラメーターが必要そうです。
当社では、こういったカタログスペックに現れない様な「奥行き感」や感性的な表現も大切にしています。

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