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え、電車って全部が動いてるんじゃないの?非テツでも楽しめる、テツ好きが注目するチマタの話題

» 2020年04月01日 01時08分 公開
[作倉瑞歩ITmedia]

 この連載は編集の方と相談しながらネタを決めて進めているのですが、その方は非テツ(鉄道好きではない人)。このためテツには当たり前のことでも、世間にはあまり知られていないことが多いのだなあと思うことがあります。その中の1つに「電車は全部が動力車ではない」がありました。

中央線209系1000番台の車両(編集部注:レアらしいです)

連載:非テツでも楽しめる、テツ好きが注目するチマタの話題

ここでは鉄道に関するちょっとした豆知識をお伝えすることで、何となく知識が増えたなとか、みんなが知らないことが自慢できたりとか、まあそんなことを目指してお届けしていく、テツの与太話です(作倉瑞歩)


 電車は文字通り電気で動きますので、モーターを回して進みます。このため全ての車両にモーターが配置され、それの動力で走っていると考えがちですが、そうでないケースもあります。タイトルの問いに対しては「全部が動力車ではない」というのが1つの答えになるのですが、これも実は「正解でも不正解でもない」のです。

パワーを必要とする場合は全部動力車に

 電車の種類は以下の3つに分けられます。

  • 制御車:列車を操作する運転台があるもの
  • 動力車:列車を動かすためのモーターが搭載されているもの
  • 付随車:動力を持たないもの

 (注)動力が付いている制御車もある

 電車(鉄道車両)はこの3種類を組み合わせて1つの列車(編成)が作られています。

 運行する際にパワーを必要とする場合は、全部が動力車になります。例えば新幹線の0系(初代の丸っこいやつ)と200系(東北・上越新幹線で走っていた、0系と似た顔で緑ラインのやつ)、300系(鉄仮面)、500系(細長い銃弾みたいなやつ。エヴァンゲリオンカラーにもなった)はすべてが動力車でした。新幹線の場合は時速200キロを超える速度で運転されるので、パワーが必要なのはお分かりいただけるでしょう。

 ただし最近ではモーターの性能が向上し、最新の車両となるN700系では先頭車両はモーターを搭載しておらず、全部が動力車でもありません。地下鉄についても、例えば東京メトロ銀座線の1000系や日比谷線の13000系はすべてが動力車ですが、千代田線の16000系や半蔵門線の8000系、08系は途中に動力を持たない付随車が入っています。

 なんでこんなにややこしいことになっているかというと、動力車が多いと電気を食うから。効率良く運行できるように考えられているのですが、新幹線のように高速で運転される場合や、地下鉄など勾配がキツい路線を走る場合は、全部を動力車にせざるを得ない、というわけです。

 こうした車両は、編成の中のどこかが壊れても動けるように「ユニット」単位で構成される場合があります。例えば新幹線のN700系では4つの車両ごとにユニットが構成されており、制御車を「Tc」、動力車(パンタグラフあり)をM、動力車(パンタグラフなし)をM’とすると、

  • Tc+M+M’+M
  • M+M’+M+M

 が1つのユニットを構成しています。動力車については、操縦するための機器を1つの車両だけでは納めきれないので、パンタグラフがある動力車と持たない動力車を組み合わせ、2両分に機器を配置して使っています。これらのユニットを4つ組み合わせ、16両の新幹線を構成しています。

「サハ」とか「モハ」とか「クハ」とか何それ

 ところでJRの電車に乗ると、車両の外側や車両内部の端の方に「モハ」とか「サハ」などと書かれていることに気づいている方も多いでしょう。これは国鉄時代から続く、その車両が動力車なのか、付随車なのか、制御車なのかを表す記号です。先ほどの例に当てはめると、

  • ク:制御車
  • モ:動力車
  • サ:付随車

 といった感じです。動力が付いている制御車は「クモハ」となります。

 では「ハ」は何を意味するかというと、これは座席の等級を表します。等級が高い順に「イ」「ロ」「ハ」です。しかし現在のグリーン車は「ロ」、普通車は「ハ」です。「イ」はどこに行ってしまったのでしょう?

車両脇に表示されている記号
こちらは車両内部にある表示

 「イ」については1960年以降は使われなくなっていました。というのも、昔は1等車、2等車、3等車と区別があり、それぞれ「イ」「ロ」「ハ」を割り当てていたのですが、1960年にこの3等級をやめて2等級にした時、「ロ」を2等車から1等車(グリーン車)へ繰り上げ、「ハ」が2等車(普通車)となりました。「イ」という表示をやめてしまったのです。ただし、JR九州が2013年に運行を始めた豪華列車「ななつ星in九州」では、その車両に「イ」を付け、63年ぶりに復活しました。

まだまだある車両の種別

 「クハ」や「モハ」が分かったところで、そのほかの種別についても述べておきます。「北斗星」などのブルートレインが走っていたとき、その客車には「オハネ」「オロネ」という表示がありました。「オ」は車両の重さを表す記号で、32.5t(トン)以上37.5t未満の車両を指します。カシオペアの場合は車重がもう少し重く、37.5t以上42.5t未満の「ス」。「オ」と「ス」を含めた主な等級は以下のようになっています。

  • ナ:27.5t以上32.5t未満
  • オ:32.5t以上37.5t未満
  • ス:37.5t以上42.5t未満
  • マ:42.5t以上47.5t未満
  • カ:47.5t以上
「北斗星」として走っていたブルートレインの記号

 なお「ネ」は寝台車を意味します。これに加えて客車では「スハネフ」や「オハネフ」といった記号もありました。ここでの「フ」は「緩急車」といい、ブレーキをかけられる装置のある車両を指します。あ、客車と電車の違いですが、機関車に引っぱられるのが客車、自分で動力を持っているのが電車です。そこのテツ、「気動車もあるじゃん」とか言わない! それについてはまた別の機会に。

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