10月19日リリース「余所見」


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――“余所見”はどういったところからインスピレーションを得て作り始めた曲ですか?
ちょうどメロディを作っている時に、“you too”でモデルにしたお友達から過去の恋愛話を聞いて、それをもとに歌詞を作っていきました。相手に不安や違和感を抱きながらも一緒にいたい気持ちがあって、自分の感情をごまかしている主人公を描いています。

主人公は相手の行動に窮屈さを感じていてつらい思いをしているのですが、相手を悪者にはしたくなかったんです。相手に違和感を感じていることや、ずっと抱え込んでいたことが周囲にバレてしまうと、離れ離れにさせられてしまうかもしれない。一般的に精神が参っちゃっている時は自暴自棄になりやすいと思うんですけど、主人公もそんなふうになって自分のせいにしてしまうところもあったんですね。

サビの「癒えないように/それがバレないように」という歌詞で、一番つらかった時期は過ぎて、自分の状況をよく理解できていることを表しています。でも主人公は、自分の心が癒えたことも隠して、この状況をわかっていないふりをしたんです。自分自身に嘘をつき、世論や当たり前から逃げるために「本当を創り出した」。家族、友達、恋人とか、相手が大切な存在だからこそ違和感や自分の心から余所見をしてしまったり、見るべき方向以外に目をやって自分の見たいものを創り出してしまったりする。そういった想いを書いた曲です。



Photo:Takumi Gunji
――aoさん自身も、そういった混沌とした感情を抱いた経験があるのでしょうか。
お友達の話がベースですけど、自分の想像や実体験から作っているので、私自身の曲だなと思います。恋愛でそういう感情になったことはないものの、意外と友達とはあるなあって。特に高校に入ってまったく新しい友達に変わってから、ちゃんと言えなかったり言いづらかったりする場面があります。

しかも私は結構、人に希望や期待を抱く人間で。ネット上で知らない人から何か言われても「そういう人もいるんだな」と思ってスクロールするだけなんですけど、身近な人や大切な人からの何気ない一言にはものすごくダメージを受けるんです。友達に裏切られた時は、「なんでそう思うのかな」「どうにかして分かり合えないかな」と最後まで希望を持っちゃうタイプ。

相手と意見が違っても理解はし合えると私は思っているんですけど、そこまで話し合えることが少ないのかなと思います。しかも、そのお友達の話を聞いていると、相手が恋人となるとすごく難しいんだろうなと。それを言う勇気がなかったり、言葉が出る前に行動に出てしまったり。相手に心の宇宙を話してもらいたいけど、自分も言う勇気がないし、それをお互い思ってるよね、と。その話を聞いていてそう感じたので、この歌詞を書きました。

――aoさんの歌詞はどれも自分の考えやストーリーがしっかりと柱にあって、それを詩的な言葉で表現するからこそ、独創性に溢れていますよね。言葉の綴り方においては、どういったものから影響を受けていますか?
小さい時から読書が大好きでした。毎月2冊、おじいちゃんとおばあちゃんが好きな本を買ってくれて、いつもそれを楽しみにしてました。特に小説を読むのが好きで、一番面白いと思ったのは辻村深月さんの『かがみの孤城』。他には、小学校4年生の時にサンタさんからもらったR・J・パラシオさんの『ワンダー』。物語に出てくる先生の格言を集めた本とかまで買って読んでました。

あとは、日本の音楽を本当に聴いてこなかったので、洋楽の和訳から歌詞に触れてきたんですよね。英語の曲の和訳だと文のようになっていて、意味として受け取ることの方が多かったので、そこに引っ張られているのかなと思います。



Photo:Takumi Gunji

――“余所見”は歌とパーカッションが主体のミニマルなトラックで、さまざまなパーカッションが重ねられていますね。中学の時に吹奏楽部でパーカッションをやっていたことがこの曲にいきていると言えますか?
そうですね。マリンバのところにコンガとかが置いてあった、部室を思い出しながら作ってたと思います。3年生の最後にマリンバの曲をやったんですけど、もう一人の3年生の子と後輩が小さいクラッシュやカホンを合わせていて、そのイメージが強かったかもしれないです。あと、ハンバーグ師匠のヴィブラスラップを思い出してました(笑)。

曲を打ち込んでいく時に、マリンバの音を最初に入れて、次にリズムを入れていったんですけど、民族音楽っぽいリズムを入れてみたら歌詞ともぴったりだなと思ったので、民族音楽っぽい方向でいこうと思って仕上げていきました。

ちょうど友達が泊まりにきていて、周りで3人くらいスヤスヤ寝ていた夜中に、カタカタ打ち込んでましたね(笑)。私の部屋に球体のライトがあって、周りの電気を消すとちょっとプラネタリウムみたいになるんですけど、みんなが寝ているその雰囲気にちょっとワクワクして。それが曲に出ているかもしれません。

――曲全体の構成もそうですし、メロディ、言葉の乗せ方、日本語の50音の発声の仕方が、やはりaoさんはユニークだなと“余所見”を聴いて改めて感じました。
全体の構成は、考える暇も与えないイメージで作っていきました。お友達の話を聞いたときに、もう3、4年前のことだから今はすごく落ち着いているけど、当時は考える暇もない感情だったんだなということを想像したんです。曲として長ったらしくならないように、終わり方もシンプルにして、きれいに聴いてもらえるものになったんじゃないかなと思います。

メロディは、サビ前まではバッと作っていったんですけど、サビは何回も作り直しました。ラストに出てくるサビと1番、2番のサビがちょっと違うメロディになってますが、もともと最後のサビを1番、2番のサビとして作っていたんです。でもそれはラストとかCメロっぽいなと思ったので、もっとアマゾンみたいな雰囲気に合うメロディを作ろうと思いながら何回もやり直しました。
歌詞の乗せ方でいうと、いつもそうなんですけど、最初に「ここはこの母音でいきたい」というのがあって。いつも最初はエセ英語みたいな感じで浮かんでくるので、「ここはこういう伸ばし方をしたいな」とかを考えながら、そのイメージに合わせて日本語をはめていきます。今回の曲でいうと、たとえばBメロの「叫べ、とばせ、吐き出した」「ぶつけ、もがき、吐き出した」は特にそうですね。

――aoさんはいつも曲を作る時に映像が頭の中で浮かぶと話してくれますが、今回のミュージックビデオはaoさんの頭にあったものと近い仕上がりになりました?
本当は森とかに行って撮りたいくらいだったんですけど(笑)、アマゾンチックで、光の射し方も特徴的で、自分が思っていた通りになったと思います。神秘的にしたかったので、メイクもいつもとは違う感じでキラキラをつけてみたりして。カメラの向きやカット割もかっこよくて、とってもきれいな映像になりました。
――aoさんは楽曲をリリースするたびに、異なる「色」に仕上げることを大事にされていますよね。“余所見”は何色のイメージですか?
深緑、ジャングルカラーですね! 聴いてくれた人に「いつも同じような曲だなあ」と思われるのは嫌だなという想いがあって。それぞれの曲にちゃんとした意味や色を持たせて、1曲1曲を確立させたいと思っています。

“余所見”は、最初は恋愛の曲を書こうと思って書き始めたんですけど、まったくもって言葉が出なくて(笑)。結局、いろんな人がそれぞれのシチュエーションに重ねて聴ける曲になったと思います。そこが魅力で、「心の中で思ってるけど言えないよね」ということを歌詞にできたかなと思うので、共感してくれればなと思います。