現場改善のヒント

「在庫管理」を徹底・効率化する方法

在庫を販売することでモノがお金に変わり、利益を得ることができます。そこで、製造業はもちろん、物流業や小売・卸売業などモノを扱う現場において必要となるのが「在庫管理」です。
製造業をはじめ、さまざまな産業のグローバル化に伴い、予測外の需要変動によるリスクも増加しました。そんな中、在庫管理が煩雑であった場合、迅速かつ正確に在庫が把握できず、変化への対策・対応で遅れを取ることがあります。

「在庫管理」を徹底・効率化する方法

在庫管理の徹底や効率化は、いつ始めても遅すぎることはありません。ここでは、いまだからこそ知っておきたい、在庫管理の基礎知識や課題、効率化のヒント、端末の選定のコツなどについて解説します。

この記事でわかること

在庫管理とは

皆さんは、「在庫」と聞いてどのようなモノを想像されますか。原材料や部品、半製品や仕掛品、倉庫にある未出荷の製品などが思い浮かぶかもしれません。在庫の正体をひと言で表すとすれば、「現金化されることを待っているモノ」すべてです。
では、「在庫管理」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。JISでは下記のように定義されています。

  1. ・必要な資材を、必要なときに、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、各種品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動。(JIS Z 8141 生産管理用語)
  2. ・工場内の原材料、部品、仕掛品、製品などの在庫量を適正にかつ、経済的に維持する管理活動。(JIS B 3000 FA-用語)
  3. ・完成品・仕掛品・部品・原材料など棚卸資産の量を適正に管理する活動。市場の需要動向に即応して品切れまたは余剰在庫の発生を防止し、キャッシュフローと棚卸資産回転率とを同時に向上させて、顧客満足と経営効率とを追及するロジスティクスの中心的活動である。また、そのために在庫拠点での在庫差異を防止したり保管効率を向上させる活動を、現物管理として在庫管理という場合もある。(JIS Z 0111 物流用語)

これらを極端に要約すると、
「現金に変わることを待っているモノを管理する」こと。
そして、
「モノを適正な量に維持する」こと。
これらに係る一連の活動が在庫管理といえます。

在庫管理の方式と注意点

「モノを適正な量に維持する」にはどのような方法があるのでしょうか。「在庫=入庫(需要予測)―出庫(実需用)」です。たとえば、入庫する材料や部品の発注方式として、下記2つの方式があり、JISにも記載されています。
ただし、いずれも品目によって発注点や発注量の見直しが必要となります。

・定量発注方式
発注の間隔を固定せず、在庫量があらかじめ定められた水準(発注点)まで下がったとき、一定量を発注する在庫管理方式です。品目が多くても対応しやすく、比較的安価で需要変動の少ない標準品や汎用製品などに向いているといわれています。
【注意点】在庫量の管理と把握が重要となります。また、調達サイクルは短いほうがよく、発注点の見直しを行うことも重要です。
・定期発注方式
発注の量を固定せず、発注する間隔を一定の期間(たとえば、週に1回や月に1回など)に定めておきます。発注の都度、現在の在庫量や需要量に応じて発注量を計算して発注する在庫管理方式です。高価であっても需要が予測しやすい品目に向いた手法であるといわれています。
【注意点】需要予測の精度向上、品目ごとの管理による発注量の見積もりが重要となります。

つまり、需要を予測して生産量・製品在庫を決め、それに応じた材料や部品の調達量または時期を決めるといった管理を行うということです。とはいっても、予測にはリスクが伴います。いつどんなときでも適正な在庫を維持できるとは限りません。
特に製造現場においては、生産管理と在庫管理が密接に関係しています。在庫管理においても生産管理と同様にPDCA(Plan=計画、 Do=実行、Check=評価、 Act=改善策の実行)のサイクルを回すことが重要となります。

このような在庫管理のPDCAサイクルを実現するには、正確な入庫・出庫の記録や、在庫状況をすぐに把握できるデータ管理が大前提となります。

在庫管理の第一歩!データ管理に必要なものとは?

在庫管理の課題と経営への影響

さまざまな要因による需要変動に対し、PDCAサイクルを回して可能な限りリスク対策・対応するための第一歩が、在庫管理の徹底・効率化です。まずは、在庫管理における課題やリスク、影響を洗い出してみましょう。

在庫管理方法の課題

在庫管理が煩雑化する理由として、現品と伝票など紙ベースでの管理、現品の伝票と台帳を目視でチェックしている。また、入庫・出庫の情報をパソコン(Excel)や紙ベースの在庫台帳に手作業での記録や、紙とデータでの重複管理などが挙げられます。

煩雑な在庫管理でのリスク

先に挙げたような管理方法では、情報の複雑化や人による入力ミス、目視確認ミスなどによるポカミス発生のリスクが伴います。紙とデータでの重複管理の場合、在庫の状況把握に時間を要します。また、人による入庫・出庫の記録漏れ・記録ミスにより、実在庫とデータに差異が生じやすく、データ重複や上書きミスの危険性もあります。さらに、拠点が複数ある場合、在庫情報がリアルタイムに反映・共有できないため、連携ミスによりムダな発注が生じる恐れがあります。

利益・経営への影響

在庫管理がうまくいっていない企業では、在庫を正確に把握できていないことにより、利益圧迫のリスクが生じます。たとえば、欠品による販売機会損失で売上げが減少。作りすぎ・仕入れすぎによる余剰在庫の発生。ほかにも、長期保管で劣化し、不良在庫(付加価値の低下または喪失により、本来の価格で販売できない在庫)が発生しやすくなります。こうした過剰在庫による資金回収の滞りや倉庫スペースの圧迫・在庫保管コストの増加は、経営圧迫の原因となります。

このように在庫管理が煩雑であることによって、キャッシュフロー(お金の流れ)が悪化し、経営に悪影響をおよぼすことがあります。

在庫管理の徹底・効率化に必要なものとは?

在庫管理を効率化する方法とメリット

在庫管理における問題をまとめると、主に「情報が一元化できていない」「人為的ミスが発生しやすい」「モノの動きとデータの差異が出やすい」ということです。

これらの問題の解消に役立つのが、
バーコードや2次元コードを使った在庫管理です。

バーコードや2次元コードを利用した際のメリットを以下に挙げます。

現場でのメリット
・情報の一元管理により、在庫をすぐ把握できる
・目視確認や記入・手入力で生じるポカミスを解消できる
・作業のムリやムダを省き、作業者の負担軽減・工数と残業の削減
経営上のメリット
・ロケーション管理を実現
データを一元化することで、品目ごとにロケーションを管理しやすくなり、所在不明を防止します。
・欠品や余剰在庫の減少
在庫の量と所在を正確に把握することで、ムダな仕入れや売り逃しを防ぎます。
・格納スペースの確保
本当に必要な在庫のためのスペースを確保できます。
・不良在庫の発生防止
保管期間を把握・管理することで、長期保管による在庫の劣化(価値の低下)を防止します。
・管理コストの削減
入庫・出庫時の作業工数(人件費)、保管スペース、減価償却費などのコストを削減することができます。

バーコードや2次元コードで入庫・出庫の作業を大幅に効率化すると同時に、正確なデータを容易に集約することができます。

もちろん、在庫管理を徹底するには、文字通りすべての作業をルール通り行うことが大切です。しかし、入庫・出庫などの作業をピッキングロボットなどの一斉導入で完全自動化・無人化することは、すべての現場において現実的とは限りません。
そこで、人による作業において重要となるのが、ロケーション(在庫の置き場所)管理など「基本的なルールの徹底」です。在庫管理を効率化することにより、煩わしい作業を省略し、人は基本的なルールを守って作業することに集中することができます。同時に、急な変更への柔軟な対応や、課題や改善点への気づきなど、人が作業する本来のメリットを得ることができます。

在庫管理にバーコードや2次元コードを利用するなら知っておきたい

現場に合った在庫管理ツールの選定ポイント

バーコードや2次元コードを活用した在庫管理では、使用するシステムやサービス、印字機器や読み取り・通信する端末などで、それぞれ多種多様な選択肢があります。さらに、システム提供者のPRや業界トレンドなどの情報が溢れているため、何が自社に合っているのか、わかりにくいのが正直なところです。
また、近年ではバーコードや2次元コードだけでなく、品番の文字を活用した在庫管理の仕組みを導入される事例が増えています。自社の業務形態や使用する現場、品目に合ったツールの導入が大切です。

在庫管理のシステム・サービス

システム面では、SaaSなどクラウドサービス、オンプレミス向けパッケージソフトウェア、在庫管理機能を持つERPなど多種多様です。導入費の安価さ、多機能さなど特徴もさまざまですが、カスタマイズやデータ移管のコストを考慮する必要があります。また、対象となる業種業界・規模・提供形態・長期的なコストも念頭に入れる必要があります。導入費用の安さだけで飛びつかず、要件や懸念点を洗い出し、細かく確認することが大切です。
また、後に解説する端末の検討にも関係します。スマホなど汎用端末用にアプリケーションの開発、またはカスタマイズが必要となった場合、高額な費用がかかることがあります。ハンディターミナルのような業務用端末の場合、専用の開発・運用ツールで目的に合った組み込みアプリケーションを簡単に作成・利用できるものがあります。

読み取り・入力端末

作業効率に直接影響するのが、在庫管理の際、作業者がバーコードや2次元コードの読み取りやリアルタイムな入庫・出庫のデータ転送・状態把握などに使用する「端末」です。
業務用の専用端末であるハンディターミナルのほか、汎用端末としてPDAや高性能かつ安価になったスマートフォン・タブレットなどさまざまな選択肢があります。汎用と業務用では、それぞれ端末の特徴や性能、入手性、堅牢性などに大きな違いがあります。使用目的や環境、ハード・ソフト面から現場に合うものを選定する必要があります。

・汎用端末:スマートフォン・タブレットなどの民生機
【端末の特徴】
スマホ・タブレットなどの汎用端末は、高性能かつ安価になり、初期導入コストを抑えた手軽な端末として注目されています。内蔵カメラを使用するためコードを至近距離で読み取る必要があります。また、暗がりでは読み取りが困難な場合があるため、使用環境・運用方法が限定されます。倉庫や作業場の規模(読み取り対象と作業者の距離など)や、作業者が手袋をしている場合の操作性・作業効率にも留意しましょう。
【入手性・互換性】
製品サイクルが非常に速いことが特徴です。一般に数年から5年で、同一機種の入手が困難になることがほとんどです。また、新しいOSへの対応や、ハードおよびソフトのサポートの長期継続は期待できません。コンディションの良い同一機種の中古品が必要量入手できる保証もないため、短い周期での端末入れ替えのコストが発生する可能性も視野に入れる必要があります。
【システム対応】
端末が安価であっても、自社に合ったシステムやアプリケーションの開発費、カスタマイズ費が高額になるケースもあるため、注意が必要です。 短期間でOSがサポート外となることもあり、古いシステムを使い続けた場合、セキュリティ面でのリスクが増大するため、最新OSへの対応費用も考慮する必要があります。
【堅牢性】
使用する現場に端末が耐えうるかどうか検討することも重要です。製造や物流の現場や倉庫、また、卸・小売業でも扱う商品によっては、汎用端末にとっては過酷な使用環境となります。また汎用端末は、落下など強い衝撃が想定されていないことが多いため、破損や故障のリスクは高くなります。
スマートフォンの堅牢性
・業務用端末:ハンディターミナル
【端末の特徴】
業務用途を前提に設計・製造された端末です。たとえば、近距離・遠距離、双方のコードをレーザーライトで高速かつ高精度に読み取ることができるものや、手袋をしたままでも操作しやすいよう考え抜かれたデザインやユーザーインターフェース、それらをすべて備えたものもあります。まさに現場での利便性・信頼性を追求したプロフェッショナル仕様の端末であるといえます。
【入手性・互換性】
業務用であるため、汎用端末に比べると高価です。ただし、汎用端末とは異なり、新機種が発売されても過去の機種と互換性を持たせていることが多いです。そのため、新規導入はもちろん、導入済みの現場に新しい端末を追加しやすいことがほとんどです。
【システム対応】
業務用途でよく使われている主要なOSに対応した端末はもちろん、組み込みアプリケーションを使用できるものもあります。プログラム不要で開発・運用できる専用ツールに対応したハンディターミナルであれば、目的に合った業務アプリケーションを簡単に作成可能です。それにより、スマホなどの汎用端末で必要となるアプリケーション開発費なしに導入でき、長期使用や規模拡大時の端末追加も簡単です。
また、汎用端末(民生機)との大きな違いとして、メーカーから専門的なサポートを受けることができます。こうしたことから「小規模だから、手軽なスマホ端末でいい」とは、一概に言えないことがわかります。
【堅牢性】
業務用ならではの堅牢性を備えたものもあります。特に製造業界や物流業界のようなハードな現場での使用であれば、それを前提に衝撃や落下、水濡れに強くタフにつくられたハンディターミナルを選択することをおすすめします。
ハンディターミナルの堅牢性

どのハンディターミナルが向いているのか迷ったらこちら

印字機器

英数字・記号の文字列やバーコード、2次元コードなどを印字し、モノを管理します。印字機器は、ラベラーや打刻機、産業用インクジェットプリンター、レーザーマーカーなど印字対象や条件によってさまざまです。
梱包後であればインクジェットプリンターやラベラーなどが向いています。しかし、製造工程で部品1つ1つに直接印字するDPM(ダイレクトパーツマーキング)を実施する場合、印字対象の素材に対応できるか確認が必要です。
また、インラインで印字する場合には、タクトタイムに対応しながら正確な印字ができるか検討する必要があります。インラインで受け入れ部品などのコードを読み取る場合には、固定式コードリーダーを併用することで、部品管理の自動化・効率化が可能です。

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