触媒とはなに?触媒についてまとめて解説

触媒
  • 触媒とは、「特定の化学反応の反応速度を変化させる物質」と高校化学の教科書に記載されています。しかし、日常生活において具体的に利活用されているイメージを持たれている方は多くないかと思われます。触媒はさまざまな製品の開発で利用されており、私たちの生活になくてはならない存在です。今回は、そもそも触媒とはどういうものなのか、その概要を説明させていただくとともに、触媒性能の3要素や触媒の作用など、基礎知識を解説します。

  • "触媒"とは?

    触媒とは「特定の化学反応の反応速度を変化させる物質」です。「反応速度の変化」とは以下のように説明されます。
    ある物質が化学反応を起こすためには、反応物を活性化した状態とする必要があります。活性化するために必要なエネルギーを「活性化エネルギー」と呼び、この活性化エネルギーの必要量を下げて反応を進行しやすくする働きを有する物質が「触媒」です。つまり触媒は、化学反応の速度を促進させる機能を持つ物質のことなのです。次の図は化学反応における物質のエネルギーの状態と触媒反応を示しています。

    「触媒」解説画像

    私達の身近なところでも触媒反応が起こっています。例えば、デンプンを分解する唾液の酵素「アミラーゼ」やタンパク質を分解する胃液の酵素「ペプシン」などの体内の酵素も触媒反応です。その他、フロンガスによるオゾン層の破壊も、紫外線で生じた塩素原子を触媒とした反応です。

    具体的に触媒と反応物質の関係性を見ていきましょう。触媒と反応物質は、「活性サイト」と呼ばれる反応が起こる場所に衝突すると、互いに弱い結合で吸着し、場合によっては一時的に別の物質に変化します。この物質を「反応中間体」と呼びます。反応中間体は、エネルギーの低い状態で進行することから活性化エネルギーが低下し、化学反応の反応速度が高まります。

    例えるならば、素早く動くボール (分子) に向けて別のボールを投げて当てるためには、体力や時間が必要で、とても苦労しますが、触媒と吸着し、動きが止まったボールならば、簡単に別のボールをぶつけられるイメージだと考えると少し想像しやすいかもしれません。

  • 触媒に必要な3つの要素

    化学反応において、さまざまな物質が触媒として使用されていますが、高触媒活性/高選択性/高耐久性という3つの要素が求められます。

    ①活性化エネルギーをできるだけ低くできる「高触媒活性」
    活性は、触媒を選択する上で最も基本的な要素であり、反応の有無に関わってきます。特に化学分野においては、高い活性能力が求められます。
    なぜなら活性の能力が高ければ高いほど、触媒必要量を抑えられ、低温で反応させることもでき、反応の制御もより簡単となるからです。
    ②目的とする反応のみを起こさせる「高選択性」
    選択性とは、複数の反応の中から希望する反応を進め、所定の物質だけを生成することを指します。選択性は触媒の種類によって異なるため、適切な触媒を選ぶことによって、効率の良い反応が可能となり、結果的に資源の消費を抑えることが可能となります。
    ③物理的、化学的な劣化を抑制することができる「高耐久性」
    耐久性とは、寿命とも言い換えることができ、いかに長く触媒としての機能を保つことができるかを指します。たとえ、どれだけ高活性、高選択性な触媒だったとしても寿命が短ければ結局コストが高くなります。また、触媒として活用する物質は比較的高価であることが多く、耐久性が直接費用対効果に結びつく場合もあります。

    触媒のイメージ画像

  • カーボンニュートラルにおける触媒反応の課題

    温室効果ガスの排出量を抑える「カーボンニュートラル」において、さまざまな触媒を利用したプロセスが用いられています。

    水素構造
    水を分解して、水素と酸素を生産する。
    燃料電池
    水素と酸素を反応させて発電する。
    アンモニア製造
    窒素と水素を反応させてアンモニアを生産する(ハーバー・ボッシュ法等)
    メタン製造
    (メタネーション)
    水素と二酸化炭素を反応させてメタンを生産する。

    これらはカーボンニュートラルの取り組みで用いられている反応のごく一部であり、他にも非常に多くの反応プロセスで触媒が活用されています。

    触媒の活性種として貴金属が用いられる場合が多く、その場合、コストが高いという難点があります。今後、カーボンニュートラルをより推進するためには、触媒の低コスト化が課題と言えるでしょう。
    しかしながら、複雑な素反応過程を経て生成物に到達する反応は、素反応自体がよく分からないものもあり、さらに、素反応の反応速度が不明であることから、反応を再現できないこともあります。今日ではコンピュータや計算科学技術の進歩によって化学反応の解明が進んでいるものの、未だに原理を解明できていない反応がたくさんあります。

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