共感することは他人の靴を履くことと似ています。サイズもデザインも素材も自分にぴったり合うときもありますが、大抵は、全然合わないものです。人もこれと同じです。時には、自分と同じ性格や経歴や経験を持つ人もいますが、大抵は、多くの点で自分とは違っていて、そうした違いが相手に共感するのを困難にしています。

それでも、共感することは必要です。他人と本物の健全で永く続く関係を築くためだけでなく、自分の精神や感情や心理の健康を保つためにも必要なのです。最新の科学的根拠に基づき、他人に対する共感力を高める方法をご紹介します。

文学的小説を読む

人がどのように考えるかを知りたければ、文学基本概要を手に取り、その中のどれでもいいので選びましょう。David Comer Kidd氏とEmanuele Castano氏が18歳から75歳の人たちで構成されたグループに対して行った5つの実験結果によりたどりついた結論は、一言でいえば、これです。

実験を通して、被験者達は文学的小説、大衆小説、そしてノンフィクションを2、3分読まされました。ときには、何も読まないようにと言われました。そのあとで、他者の心理を行動から想像や理解する能力を測る心理理論(ToM: Theory of Mind)テストを受けました。

結果として、ドン・デリーロウェンデル・ベリーを読んだ人たちがそのテストで最も高い点数を取りました。文学的小説が嫌いな被験者でさえも、良い結果を出したのです。これにより、個人的な好みは無関係だとわかります。

Seton Hill大学のAlbert Wendland氏は、これについて極めてわかりやすい説明をしています。「文学的小説では文字通り他人の立場に自分を置くことになります。そこでは、人生はより困難で、より複雑で、大衆文学で馴染んでいること以上のものであり得ます。それが他人の人生に対する共感と理解につながると考えてもおかしくはありません」

瞑想する

明らかに、瞑想はもはやマインドフルネスを高める訓練以上のものです。Emory大学の研究者によると、瞑想は人間に同情心を植え付ける役目もしており、そこから派生して、共感力も植え付けています。

その研究者が開発した、認知に基づく共感トレーニング(CBCT:Cognitively-Based Compassion Training)と呼ばれるプログラムでは、13人の被験者に8週間にわたり瞑想をしてもらいました。さらに対照群として、健康について討論するクラスを受講してもらうだけの8人のグループを別途作りました。

CBCTの前後に、被験者全員が「目を見て相手の心を読むテスト(RMETs:Reading the Mind in the Eyes tests)」を受けながら脳をMRIスキャンしました。被験者の中に以前瞑想の経験がある人は誰もいません。CBCTを受けた13人のうち、の8人が平均4.6%点数が高くなりました。それに対して、対照群の点数は変わらないか低くなりました。

このような結果に基づいて考えると、マインドフルネスと同情は結びついているように見えます。以下は「Psychology Today」からChristopher Bergland氏の言葉の引用です。「愛と思いやりに満ちた瞑想という仕組みは、自分とあなた、われわれと彼ら、仲間と敵、という厳密な識別を神経レベルでなくすことにより、自己と他者の間にある境界線をぼやけさせるのかもしれない」

音楽グループに参加する

音楽が人の気分に影響を与えることは恐らくご存じでしょう。音楽は自分が他人とどう接するかにも影響を及ぼしていることが、ケンブリッジ大学の研究者による研究結果から判明しています。

研究者は8歳から11歳の52人の子どもを2つのグループに分けました。最初のグループは特別に作られた音楽プログラムを割り当てられ、他人と接することがベースになっている活動に参加しました。第2のグループは、同じプログラムで音楽なしのものを割り当てられました。

そのプログラムの前後に、子供たちは感情的共感力レベルのテストを受けました。結果は予想通り、音楽を聴いた子供達の方が、プログラム終了後のテストで良い結果を出しました。研究者はここから性急に最終的な結論を引き出そうとはしていません。そうはいっても、これで、あなたも手近なバンドやコーラスや音楽クラブに参加したくなったのではないでしょうか。

共感することを習慣にする

ここまでは、短い間に共感力を上げる方法について論じてきました。

精神病質者ナルシストを含むすべての人は、訓練すれば共感力を高めることができるという点で専門家達は、程度の差こそあれ、同意しています。共感力が足りない人でも共感力のある人間になろうとして意識的に着実に自己鍛錬すれば、他人の感情がもっとわかるようになれるのです。

共感の働きに関してはまだまだ学ぶべきことが多いです。それは「誰かの目を通して世の中を見る」ことよりもっとずっと複雑なのです。それでもなお、共感力は学ぶ価値のあるスキルであり、他人のためだけでなく自分自身のためでもあります。

4 Unexpected (and Science-Backed) Ways to Develop Empathy|Pick the Brain

Jerissa Mirandilla(訳:春野ユリ)

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